
ラウドネス効果を得られるCONTOUR
スピーチで重宝するマイクEQ
PA Oneは300人規模の会場を想定したシステムとしてデザインされており、補正やクロスオーバー・ネットワークをDSPで制御しています。設置の仕方はディスタント・ロッドを使用するのではなく、コラム・スピーカーを直接サブウーファーに結合する形。フォーン端子による接続となるので別途スピーカー・ケーブルを用意する必要がなく、簡単にセッティングできます。
コラム・スピーカーは2.75インチのミッドレンジ・ユニット12基と1インチのシルク・ドーム・ツィーターを2基備えています。そしてサブウーファーには8インチ・ユニットを2基内蔵。2基にすることでユニットの大きさを抑え、再生周波数帯域を広く取っているのでしょう。
サブウーファー部には4chのミキサーを実装し、コントロール部には各チャンネルに対応したボリューム・ツマミと各種ツマミを用意。LINEにはCONTOURツマミを装備し、これを回すことで5kHz以上と100Hzを最大15dBブーストしてラウドネス・コントロールのような効果が得られます。MIC1にはリバーブを搭載。少しタイムが長めで、オン/オフの切り替えはできません。MIC2にはEQがあり、これをMAXにすると中心周波数2kHzを4dBブーストし、なおかつ100Hzを少しカットしてくれるという機能があります。これはスピーチなどで効果を発揮してくれそうです。またAUXにもLINEと同じCONTOURツマミが用意されています。ミキサー・コントロール部にはそのほか、サブウーファーのレベルを変化させるボリュームまで付いています。
フラットでナチュラルなサウンド
タイトで扱いやすくも量感のある低音
早速サウンドをチェックしてみましょう。今回は弊社の倉庫にて本機を鳴らしてみました。まずCD音源を再生してみると、フラットな特性でナチュラルなサウンドが聴こえてきます。CLASSIC PRO製品は少し高域がギラギラしている印象があったのですが、本機は品の良いサウンドにまとめられていました。最近の多くのシステムはDSPで高域の補正を行うので、あまりツィーターの必要性を感じていなかったのですが、本機はコラム・スピーカーのツィーターをCONTOURでコントロールでき、スピーカーで補正をするという点で好感が持てます。ミッド帯域を担っているコラム部分はユニットが連なる構造上、合成された低域が大きくなるのでDSPで補正をしますが、補正具合をもう少し控えめにすればサブウーファーとのつながりが良くなるのではないかと思いました。サブウーファーによる低域は8インチ・ダブルとは思えない量感を再現しています。非常にタイトで扱いやすい低音を感じることができました。
また、スピーカーの水平方向の指向性は90°と広過ぎず狭過ぎずで、使いやすいのではないでしょうか。普通のポール・マウント・タイプのスピーカーだと60°くらいが多いと思いますが、本機1本だけをセンターに置いても広いエリアをカバーできます。2本ペアで配置すれば基本的なエリア・カバーは問題ないでしょう。
次に音量を上げていってリミッターが作動するところまで鳴らしてみたところ、ひずみ感が多くなってきますが、問題なく大音量を出せました。全体をDSPでコントロールしている良さが出ているのだと思います。
続いてダイナミック・マイクのSHURE SM58をつなぎ、ミキサー操作を含めてその音色を確認してみます。比較的オンマイクで普段のチェックと同じように声を出してみると、低域を含めてフラットな良い音です。インプット・ゲインの設定が上手にできているのでしょう。ミキサーにつないだだけで誰でも扱える良さがあります。また、マイクをコラム・スピーカー正面に持っていき、試しに10cmくらいまで近づけてみましたがハウリングしないので驚きました。ゲイン設定の良さが感じられます。
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本機は店頭販売などでのPA用に、カラオケ・ライブを行う際の簡易システムとして、また、弾き語りライブにもそのまま単体で対応できるスピーカー・システムだと思いました。ハウリングしにくいのでゲイン設定やEQによる補正の必要が無く、セッティングも簡単に行えます。CLASSIC PROシリーズの中では少し高価ではありますが、スペックの良さで納得できるシステムとして評価されるでしょう。


(サウンド&レコーディング・マガジン 2015年12月号より)