「ESI Unik 05+」製品レビュー:鳴りのキャラクターを変えられる2ウェイ仕様のパワード・モニター

ESIUnik 05+
ドイツの音響機材メーカーESIから、スタジオ用パワード・モニター・スピーカーUnik 05+が発売されました。本機は低価格ながらも優れた高域再生能力を持つリボン・ツィーターを搭載し話題となったUnik 05の後継機種。今回は僕の普段の制作環境を加味しつつ、エンジニア/トラック・メイカー目線のレビューとして進めさせていただければと思っています。

中域にガッツのあるキャラクター
ベース・ミュージックが気持ち良く鳴る

早速本体を箱から出してみましたが、思っていたほどの重さは感じず扱いやすいです。出力は低域/高域ともに40W、周波数特性は49Hz〜25kHzと自宅で鳴らすには十分。低域は5インチのケブラー素材製ウーファーで、高域は静磁気リボン・ツィーターに変更されており、より優れた高域再生能力を得ているとのことです。

次にリア・パネルを見て行きましょう。入力端子はXLR/フォーン・コンボで上部にバスレフ・ポートがあり、壁からの距離で低音の響きを調節できます。ほかにはゲインやHIGH/LOWの調整つまみ、グラウンドが原因のハム・ノイズが発生した場合にノイズを除去するGND LIFTボタンや、スイッチがオンのままでしばらくオーディオ信号の入力が無い場合、自動的に節電モードとなるSTANDBYボタンも用意されています。本機で特徴的なのは、音楽ジャンルや部屋の特性に合わせたサウンド・キャラクターが得られるというCHARACTERつまみ。どのような音色変化をするのか、興味津々です。

電源を入れるとフロント・パネルの“ESI”の文字がオレンジに光ります。つや消しの黒とオレンジを基調にしたデザインは個性的でクール。スピーカー1本に対して4個のゴム製インシュレーターが付属しており、不要な振動を抑えて低域を奇麗に出したり、リスニング・ポイントを決める上での角度調整にも重宝しそうです。

早速、打ち込み系/歌もの/生楽器などさまざまなジャンルの音源を試聴してみました。中でも打ち込み系の音楽と相性が良く、押出し感の強いサウンドでサブベースもしっかり鳴ってくれます。またROLAND TR-808のキックもひずむことなく、輪郭を崩さずに鳴りました。中高域は音の立ち上がりが速く、ボーカルは声質によってやや芯が引っ込む印象ですが、丸みと太さがあり、嫌な感じはありません。パーカッションはアタック感がありつつ、ふくよかな低域を感じられました。

上下の立体感や奥行きはやや浅めで、定位はエネルギーがややセンターに寄る印象です。中域にガッツのある出音なので、ヒップホップやベース・ミュージックを気持ちよくミックスできるのではないでしょうか。キャラクターとしてはKRKなどのEDM系アーティストに好まれるスピーカーに近いイメージ。ボリュームを絞っても音像の形が変わらないので、ミックス・バランスのチェックにも適していると感じました。

BRIGHT方向に振るときらびやかに
SMOOTH方向では太いサウンドに変化

リボン・ツィーターと言えば、ADAMの製品が優れた高域再生力で知られています。その点Unik 05+は、以前友人宅で試聴したADAMほどきらびやかさが無いというか、高域がおとなしく感じました。そこでリア・パネルにあるCHARACTERノブを調整してみました。このノブは先述した通り、左に回すとSMOOTH(おとなしめ)、右に回すとBRIGHT(派手め)といった具合に出音のキャラクターを変えられます。まずBRIGHT方向に回し切って聴いてみました。すると自分が感じていた音の曇り感が無くなり、グッときらびやかなサウンドに変化しました。マニュアルによれば50Hz辺りを始点に、高域に行くほどブーストされるようです。

次にSMOOTH方向で全開にしてみました。こちらは高域のきらびやかさは減衰しますが、温かみと太さが強調され、ビンテージ感のあるサウンドになります。また、HIGHコントロールは10kHzから1dB刻み、LOWは100Hzを始点に1dB刻みと、さらに細かな音色調整が可能になっています。結果として、つまみをBRIGHT方向の2時辺りに持っていくと、自分が普段聴いているモニターに近いキャラクターが作れました。本機の調整法としては、初めにCHARACTERつまみでざっくりと好みの鳴りを作り、HIGH/LOWでより細かな調整を施すことで、理想的なモニター環境に近付けられると思います。スタイルに合わせてグリグリしてみてください。

自分も10年ほど同じモニター・スピーカーを愛用してきましたが、最近になって限界を感じ、新調したクチです。今回のUnik 05+をはじめ、昨今のモニター・スピーカーは、以前の価格による音質イメージを覆すほど高品質になっています。ヘッドフォンに頼ったミックスは定位やレンジが狭くなりがちで、奥行きが感じられない仕上がりになってしまうことがままあります。爆音でスピーカーで鳴らすのはなかなか難しいですから、ボリュームを絞ってもきっちり鳴ってくれる本機は、持っていて損は無いのではないでしょうか。素性の良いUnik 05+でミキシングしているといろいろな発見もあるでしょうし、スキル・アップの近道だと思います。ヘタり切ったツィーターのような曇り(悩み)が晴れるかもしれません。

▲リア・パネルには入力端子(XLR/フォーン・コンボ)のほか、GAINつまみ、音色調整用のCHARACTER/LOW/HIGHの各つまみ、GND LIFTスイッチなどを備える ▲リア・パネルには入力端子(XLR/フォーン・コンボ)のほか、GAINつまみ、音色調整用のCHARACTER/LOW/HIGHの各つまみ、GND LIFTスイッチなどを備える

製品サイト:http://www.esi-audio.com/products/unik05+/

サウンド&レコーディング・マガジン 2015年12月号より) 

ESI
Unik 05+
72,000円/ペア
▪構成:ウーファー(5インチ)+ツィーター(49×26mm) ▪アンプ:低域40W+高域40W ▪周波数特性:49Hz〜25kHz ▪最大音圧レベル:101dB ▪クロスオーバー:3.2kHz ▪外形寸法:190(W)×265(H)×210(D)mm ▪重量:4.4kg(1本)