「FOCAL Trio6 Be」製品レビュー:2ウェイ/3ウェイを切り替えて使える8インチ・パワード・モニター

FOCALTrio6 Be
自分は普段リファレンス・モニターとしてFOCAL Twin6 Be+CMS Subを使用しているので、SM9などの上位モデルにはとても興味があります。今回はTrio6Beのレビューということで、楽しみに聴いてみました。

クロスオーバーが自然で
パッシブのラージ・モニターのような鳴り方

本体はTwin6 Beより一回り大きく、Twin6 Beと同じベリリウム素材のツィーター+5インチのウーファー+8インチのサブウーファーという3ウェイ構成ですが、サブウーファーを除いた2ウェイでも使えるとのことです。

Twin6 Beは下に伸びている低域の鳴りが物足りなく感じることがあります。EQはもちろん、アウトボードのアッテネイターで音量調整する際も、抵抗の違いによって低域/高域のニュアンスが変わっていくように感じるのですが、低域が足りないため判断しにくいのです。またコンプのリリース・タイムの調整も分かりにくかったので、サブウーファーを足して作業しています。Twin6 Beの周波数特性が40Hz〜40kHzであるのに対して、Trio6 Beは35Hz〜40kHz(3ウェイ)となっており、特に低域回りに期待が持てます。リア・パネルには入力レベルの切り替え(+4/−10dB)、ルーム・アコースティック用にLF(1kHzから低域に向かってシェルビング)、HF(1kHzから高域に向かってシェルビング)、LMF(160Hzのピーク)のEQが付いているほか、2ウェイ/3ウェイを切り替えるためのフット・スイッチ用端子があります。

まずは普段と同じ縦置きでセッティングし、3ウェイ・モードに設定。MERGING Pyramixから、自分でマスタリングした聴き慣れている音源をいつものレベルで再生してみました。出音でまず感じたのは、クロスオーバーがとても自然で、Twin6 Beと比べるとフル・レンジ・スピーカーのような鳴り方をしていること。低域はアタックがはっきり聴こえ、余韻も自然に下の方まで伸びています。ウーファーを駆動するアンプも、Twin6 BeはクラスABであるのに対してTrio6 BeはクラスGという違いもあるためか、ニアフィールドのアクティブ・スピーカーというより、パッシブのラージ・モニターのような余裕のある鳴り方。特に低域にはそうした印象を持ちました。

中域から上の帯域は、Twin6 Beの方がマルチウェイらしい空間に隙間のある音であるのに対し、Trio6 Beはフル・レンジ的な密度感があり、音楽を聴く分には楽しいのですが、モニターとしてはやや慣れない感じもありました。ただTwin6 Beに感じる中高域の違和感はありません。マスタリングをしていて“この歌の高域は痛いのか、ぎりぎり大丈夫か”という微妙な個所は、別途ヘッドフォンやECLIPSE 508PAWHで確認していたのですが、Trio6 Beはそうした部分が分かりやすいと感じました。

ノイズ・チェックに最適な2ウェイ・モードに
フット・スイッチで切り替え可能

Trio6 Beは部屋の音響特性に合わせて5インチ・ウーファーとツィーターの位置を回転させられるので、試してみました。まず通常一番上に位置しているツィーターがTwin6 Beと同じく中央に位置するように180度回転させた状態で鳴らしてみました。すると、最初に感じたフルレンジ的な中高域の密度が減って見通しが良くなり、リバーブや楽器の縦の位置が目で見えるような、聴き慣れた感じの音になりました。パッシブのラージ的な解放感は薄れるものの、帯域のつながりの良さは残っており、結構良いセッティングだと感じました。

次に90度左に回転させてツィーターが外側に、5インチ・ウーファーが内側に来る配置にしてみましたが、高域は音がスピーカーの外に向かっていくようになり、ハイハットの辺りにピークを感じました。逆にツィーターが内向きになる位置も試してみましたが、歌がやたら大きく聴こえるバランスになってしまいました。ただ、上記のような鳴り方はあくまで自分のスタジオでの話であり、ルーム・アコースティックなどによって音の印象は随分変わると思います。調整の幅は広く、効果も分かりやすいので、いろいろなパターンを試してみると良いでしょう。

最後に2ウェイ・モードを試してみました。これはラップトップ・コンピューターやテレビなど低域が再生されにくい環境のシミュレーションということらしいのですが、音はサブウーファーが無い分、より同軸っぽい雰囲気となり、定位が分かりやすくなります。ただ高域がすごく伸びて聴こえるので、まとまって聴こえない感じもありました。先述した508PAWHは普段この2ウェイ・モードと同じ役割で使っていますが、音にまとまりがあり、楽器のピークに気付きやすいのです。ただノイズに関しては、Trio6 Beは非常によく見えました。低域でマスキングされていたリップ・ノイズやひずみがハッキリ聴こえるようになるので、ノイズのチェックには最適。フット・スイッチで2ウェイ/3ウェイを切り替えられるのも便利でした。

総合的に見て、Trio6 Beは多機能かつ音楽的な鳴り方をします。モニタリングのやりやすい、素晴らしいスピーカーだと感じました。

▲リア・パネル。左よりアナログ入力(XLR)、入力レベル切り替えスイッチ、LF SHELVING/LMF EQ/HF SHELVINGつまみ、2ウェイ/3ウェイを切り替えるフット・スイッチ用端子(フォーン) ▲リア・パネル。左よりアナログ入力(XLR)、入力レベル切り替えスイッチ、LF SHELVING/LMF EQ/HF SHELVINGつまみ、2ウェイ/3ウェイを切り替えるフット・スイッチ用端子(フォーン)

製品サイト:http://www.minet.jp/brand/focal/trio6-be/

サウンド&レコーディング・マガジン 2015年12月号より)

FOCAL
Trio6 Be
275,926円/1本
▪構成:サブウーファー(8インチ)+ウーファー(5インチ)+ツィーター(1インチ) ▪アンプ:超低域200W(クラスG)/低域150W(クラスG)/高域100W(クラスAB) ▪周波数特性:35Hz〜40kHz(3ウェイ・モード)、90Hz〜20kHz(2ウェイ・モード) ▪最大音圧レベル:115dB(3ウェイ・モード)、105dB(2ウェイ・モード) ▪外形寸法:278(W)×520(H)×360(D)mm ▪重量:20kg(1本)