
アコギを通した瞬間
とてもクリーン!!と感じた
本体デザインは、ホワイトのパネルにブラックのロータリー・エンコーダー・タイプのノブが配されたもの。ノブは上から順にインプット・ゲイン/アウトプット・ゲイン/アタック・タイム/リリース・タイムとなっている。スレッショルドは固定で、1176と同様にインプット・ゲインを上げるとコンプレッションが深く、下げると浅くなる仕様だ。各ノブの周りには白色LEDが配置され、ノブを回すと明るく発光。そのほか緑に光るレベル・メーター(イン/アウト用のVUメーターもしくはゲイン・リダクション・メーターをプラグインから切り替え可)、4つ押しモードもあるレシオ・スイッチ、トゥルー・バイパス・スイッチ、リンク・スイッチ、サイド・チェイン・ハイパス・フィルターのスイッチ(60/90/150Hz)、2種類の設定を比較するためのA/Bスイッチ、コンピューターとつなぐためのMini USB端子などを装備。アナログ回路はCARNHILLのトランスを使ったフル・バランス入出力構成である。
今回は、アコースティック・ギターやボーカルの録音に使ってみた。まずはアコギ。音を通した瞬間“とてもクリーン!!”と感じた。インサートによる音の変化は全くと言っていいほど感じない。演奏してもらった曲についてはA〜Bメロ前半で優しいアルペジオ、Bメロの後半からサビにかけてはピックで激しくストロークするという、コンプの設定が一番やっかいなタイプ。A〜Bメロではインプットを上げてアルペジオが均等に聴こえるようセットし、Bメロ後半からは手動で徐々にインプットを下げ、ストロークのピークを抑えた。このとき本体とコンピューターをUSB接続しオートメーションを書き込みモードにしておくと、一連の操作がDAWに記録される(画面①)。2回目の録音からは自動で同じ動きとなるため、ほかのパートとのバランスやモニターに集中できるわけだ。

レシオの4つ押しモードは
“激しくも冷静”といったサウンド
ボーカルに使ったときも同様に、とてもクリーンでストレートな印象だ。今回の男性ボーカリストの声は低域に押し出し感があり、下からしゃくり上げるタイプ。こうした声は低域の音量でオーバー・コンプレッションになりがちだが、150Hzのサイド・チェイン・ハイパス・フィルターを使ったことで、とても奇麗に処理できた。また声が小さくなる部分を上げたい場合、録音中にアウトプット・ノブを回してオートメーションを描けば、ギターのときと同様に以降のテイクを同じレベルで録れる。
今回は、メイン・ボーカルを録った後ですぐにハモりをダビング、そしてまたメインに戻る……という、行ったり来たりのプロセスであった。メインに対してハモりはやや深くコンプレッションしたいので、どうしても設定のリコールが必要になるのだが、本機ではA/Bのセットアップ・メモリーが可能なのでスムーズにセットアップできた。
インプットやアタック、リリースがとても正確に動作する本機。アコギのスチール弦などはやや硬質になる印象もあったが、それが音色と音場の透明感につながっている。レシオ4つ押しモードについては、ハードにコンプレッションされるものの1176のような熱い温度感は無く、“激しくも冷静”という印象であった。
そのほか今回は、電源が別筐体になっている10スロット・ユニットWESAUDIO Supercarrierを使ったのだが、その後筆者所有のAPI 500-6Bにセットしたところ、前者の方がSN比が良いと感じた。電源が別筐体である恩恵は大きいのかもしれない。
総合的には無駄のない正確な音で、響きが肥大することもない、極めてナチュラルなコンプであると思う。またついにハードのエフェクターもオートメーション、しかもイージー・オペレーションの時代になったか……と感じさせられる_Mimasであった。

製品サイト:http://umbrella-company.jp
(サウンド&レコーディング・マガジン 2015年11月号より)