「WESAUDIO _Mimas」製品レビュー:専用プラグインと連携するAPI 500互換のコンプ・モジュール

WESAUDIO_Mimas
WESAUDIOはポーランドのメーカー。代表的な製品として、UREI 1176をモデリングしつつ多くのモディファイを加えたBeta76が挙げられる。そして今回発売されたのはAPI 500互換のコンプレッサー・モジュール_Mimas。1176スタイルのコンプだが、Mac/WindowsとUSB接続し、本体パネルそっくりの専用プラグイン(VST/AAX)からパラメーターを調整できる。本体側の操作がプラグインに記録されるのも特徴だ。

アコギを通した瞬間
とてもクリーン!!と感じた

本体デザインは、ホワイトのパネルにブラックのロータリー・エンコーダー・タイプのノブが配されたもの。ノブは上から順にインプット・ゲイン/アウトプット・ゲイン/アタック・タイム/リリース・タイムとなっている。スレッショルドは固定で、1176と同様にインプット・ゲインを上げるとコンプレッションが深く、下げると浅くなる仕様だ。各ノブの周りには白色LEDが配置され、ノブを回すと明るく発光。そのほか緑に光るレベル・メーター(イン/アウト用のVUメーターもしくはゲイン・リダクション・メーターをプラグインから切り替え可)、4つ押しモードもあるレシオ・スイッチ、トゥルー・バイパス・スイッチ、リンク・スイッチ、サイド・チェイン・ハイパス・フィルターのスイッチ(60/90/150Hz)、2種類の設定を比較するためのA/Bスイッチ、コンピューターとつなぐためのMini USB端子などを装備。アナログ回路はCARNHILLのトランスを使ったフル・バランス入出力構成である。

今回は、アコースティック・ギターやボーカルの録音に使ってみた。まずはアコギ。音を通した瞬間“とてもクリーン!!”と感じた。インサートによる音の変化は全くと言っていいほど感じない。演奏してもらった曲についてはA〜Bメロ前半で優しいアルペジオ、Bメロの後半からサビにかけてはピックで激しくストロークするという、コンプの設定が一番やっかいなタイプ。A〜Bメロではインプットを上げてアルペジオが均等に聴こえるようセットし、Bメロ後半からは手動で徐々にインプットを下げ、ストロークのピークを抑えた。このとき本体とコンピューターをUSB接続しオートメーションを書き込みモードにしておくと、一連の操作がDAWに記録される(画面①)。2回目の録音からは自動で同じ動きとなるため、ほかのパートとのバランスやモニターに集中できるわけだ。

▲画面① Mac/Windows環境でVST/AAXフォーマットにて使用できる_Mimasの専用プラグイン。本体と連動しており、どちらかの操作子を動かすともう一方の対応する操作子も同じように動く。DAWのオートメーションで動作するのも特徴だ ▲画面① Mac/Windows環境でVST/AAXフォーマットにて使用できる_Mimasの専用プラグイン。本体と連動しており、どちらかの操作子を動かすともう一方の対応する操作子も同じように動く。DAWのオートメーションで動作するのも特徴だ

レシオの4つ押しモードは
“激しくも冷静”といったサウンド

ボーカルに使ったときも同様に、とてもクリーンでストレートな印象だ。今回の男性ボーカリストの声は低域に押し出し感があり、下からしゃくり上げるタイプ。こうした声は低域の音量でオーバー・コンプレッションになりがちだが、150Hzのサイド・チェイン・ハイパス・フィルターを使ったことで、とても奇麗に処理できた。また声が小さくなる部分を上げたい場合、録音中にアウトプット・ノブを回してオートメーションを描けば、ギターのときと同様に以降のテイクを同じレベルで録れる。

今回は、メイン・ボーカルを録った後ですぐにハモりをダビング、そしてまたメインに戻る……という、行ったり来たりのプロセスであった。メインに対してハモりはやや深くコンプレッションしたいので、どうしても設定のリコールが必要になるのだが、本機ではA/Bのセットアップ・メモリーが可能なのでスムーズにセットアップできた。

インプットやアタック、リリースがとても正確に動作する本機。アコギのスチール弦などはやや硬質になる印象もあったが、それが音色と音場の透明感につながっている。レシオ4つ押しモードについては、ハードにコンプレッションされるものの1176のような熱い温度感は無く、“激しくも冷静”という印象であった。

そのほか今回は、電源が別筐体になっている10スロット・ユニットWESAUDIO Supercarrierを使ったのだが、その後筆者所有のAPI 500-6Bにセットしたところ、前者の方がSN比が良いと感じた。電源が別筐体である恩恵は大きいのかもしれない。

総合的には無駄のない正確な音で、響きが肥大することもない、極めてナチュラルなコンプであると思う。またついにハードのエフェクターもオートメーション、しかもイージー・オペレーションの時代になったか……と感じさせられる_Mimasであった。

▲_Mimasのサウンドを特徴付ける要因の一つとして、CARNHILLのトランスが挙げられる。写真は筐体を横からとらえたもので、右上の方にベージュのCARNHILLトランスを確認することができる。音声回路は完全にアナログで、プラグインからフル・デジタル・コントロールが行える仕様 ▲_Mimasのサウンドを特徴付ける要因の一つとして、CARNHILLのトランスが挙げられる。写真は筐体を横からとらえたもので、右上の方にベージュのCARNHILLトランスを確認することができる。音声回路は完全にアナログで、プラグインからフル・デジタル・コントロールが行える仕様

製品サイト:http://umbrella-company.jp

サウンド&レコーディング・マガジン 2015年11月号より)

WESAUDIO
_Mimas
150,000円
SPECIFICATIONS ▪入力インピーダンス:2.4kΩ ▪出力インピーダンス:600Ω ▪周波数特性:20Hz〜20kHz(±1dB) ▪SN比:83dB以上 ▪アタック・タイム:20〜800μs ▪リリース・タイム:50〜1,100ms ▪レシオ:4/8/12/20:1、オール・ボタン・モード(ボタン4つ押し) ▪サイド・チェイン・ハイパス・フィルター:60/90/150Hz ▪消費電力:3W ▪外形寸法:38(W)×133(H)×158(D)mm ▪重量:約2kg REQUIREMENTS ▪Mac:OS X 10.9以降のINTEL Mac(32/64ビット)、INTELのデュアル・コア・プロセッサー ▪Windows:Windows 7/8(32/64ビット)かそれ以降、AMDかINTELのデュアル・コア・プロセッサー ▪共通項目:4GBのRAM、VST3/AAX(対応ホスト・アプリケーション)