
新設計のVITAプリアンプを搭載
バイアス電流の最適化で低ノイズ化を実現
ProFX8 V2を箱から取り出してみると、丈夫なボディと視認性の良いパネル・レイアウトを確認できます。両サイドのプラスチック・カバーも品良くデザインされており、ライブ・ミキシングや音楽制作に必要な機能がコンパクトにまとまっている印象です。
まずはミキサーの心臓部とも言えるヘッド・アンプについてですが、本機は新設計の“VITAプリアンプ”を採用。動作が速いクラスAフロントエンド・デザインとバイアス電流の最適化により、真の低ノイズ化を実現しています。入力は、ch1とch2がマイク・イン(XLR)とライン・イン(TRSフォーン)、ch3/4と5/6はモノラル仕様のマイク・イン(XLR)とライン・インL/R(TRSフォーン)、ch7/8はライン・インL/R(TRSフォーン)のみとなります。出力はメイン・アウト×2系統(XLR、TRSフォーン)のほか、モニター/外部エフェクト用センド(TRSフォーン)をそれぞれ装備。また、テープ・イン/アウト(RCAピン)×1系統や外部エフェクト用リターン(TRSフォーン)×1系統も用意されています。16種類のエフェクトを搭載したエフェクト・エンジンREADY FXは、最新の高品位オーディオ技術を投入したDSP処理を施しているそうです。
さらに音響調整に欠かせない7バンド・グラフィックEQや、パソコンへのデジタル・レコーディングや音源再生に対応した2イン/2アウトのUSBオーディオI/O機能を搭載しています。
高域の伸びたクリーン・サウンド
タイトになり過ぎないファットな低域
今回は20人規模のパーティ・ライブに本機を持ち込み、試聴しました。演奏はアコースティック・ギターの弾き語りライブとDJセットという内容です。
ProFX8 V2を通った音は、ヘッド・アンプのダイナミック・レンジが広くて明るい印象だった従来のMACKIE.サウンドに、さらにスムーズさが加わって使いやすい音になっています。今までは、ハイに多少癖を感じていましたが、高域の伸びたクリーン・サウンドに進化していて好印象でした。低域は各チャンネルのEQを調整することで、タイトになり過ぎないファットな音も作れます。アコースティック・ギターのアルペジオでは、コードのルート音もつぶれずにしっかりと聴こえました。中域はボーカルが自然に表現され、ミックスに苦労しない音色です。また、DJプレイではベースの音がしっかり感じられるグルーブを再現できました。全体的にレンジが広いオーディオ的な方向の音に発展した印象です。
16種類の内蔵エフェクター(1系統)には、普段よく使うリバーブが8種類用意され、パラメーターは固定ですが、自分がイメージした音にきちんと変化する印象です。エフェクターに詳しくなくても、プリセット・セレクターを回して音の変化を聴きながら直感的に操作できるでしょう。ディレイは3種類あり、ディレイ・タイムをFAST/MED/SLOWから選べます。ただ、フィードバックが多い印象なので、常時使用ではなくワンポイントで使う方が良さそうです。フィードバックが短めのプリセットが1種類入っていればさらに良かったと思いました。
グラフィックEQはメイン・ミックスとモニター・ミックスのどちらにかけるかを選択できます。今回モニター・ミックスに使用してみたところ、狙った帯域がしっかりと変化し、補正しやすかったです。
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本機のベストな使用環境は、ミュージシャンが1人でライブをし、ミックスも自分で行うケースが考えられます。ほかにはキュー・ミックスやサブミックス用に使っても十分なスペックです。ProFX V2シリーズにはチャンネル数が異なる6モデルが用意されているので、大きさやスペックを基にベストな機種を選べば、ライブ/レコーディング/音楽制作にと幅広く活用できるでしょう。


(サウンド&レコーディング・マガジン 2015年10月号より)