
中低域の豊かな
Precision Bassらしいサウンド
Ample Bass P Ⅱ(以降P Ⅱ)はFENDERのPrecision Bassを各弦の開放から22フレットまで指弾きでサンプリングしたサウンド(24ビット/44.1kHz、2,851サンプル)を約3.6GBのライブラリーに収録。Ample Bass J Ⅱ(以降J Ⅱ)は同じくFENDERのJazz Bassの各弦の開放から20フレットまでを指弾きでサンプリングしたサウンド(24ビット/44.1kHz、2,709サンプル)を、約3.7GBのライブラリーに収録したものです。さらにJ Ⅱ用には、ピック弾きしたサウンドを約1.6GBの容量で新規収録したAmple Bass J Ⅱ Pick Extensionという専用の追加ライブラリーも発売になりました。動作環境はMac OS X 10.7以降とWindows 7/8の両プラットフォームで、スタンドアローンのほか、VST、Audio Units、RTAS、AAXに対応しています。
サウンドの第一印象はどちらも非常にクリーンで使いやすい音。僕らベーシストがレコーディング時にラインの音をヘッドフォンから聴いている、そんな感覚です。丁寧に各フレットずつサンプリングしているので、どこかのノートからどこかへ移動した際の質感の変化もありません。P Ⅱは中低域の豊かなブリっとしたPrecision Bassらしいサウンド感が、J Ⅱは独特の“バリっと感”がよく出ています。アンプ・シミュレーターをインサートしてみましたが、こちらもFENDERのBassmanからAMPEG B4らしさといった独特のアンプのトーンが色濃く出せました。
では肝心の生ベースらしいサウンド・メイキングのためのソフトとしての機能を探ってみます。まず、こうしたソフトでは、いわゆる“マシンガン効果”の発生をいかに抑えるかという課題があります。“マシンガン効果”とは、同じ音程=同サンプルを8分音符などで弾き続けた際、マシンガンを撃っているかのようなうそっぽい機械音になってしまうという欠点。そこを逆に利用した演出することもダンス・ミュージックではよくあるのですが、本ソフトでは、“ラウンドロビン”と呼ばれる、同じ音程のサンプル音を複数用意し、自動的にローテーションして再生する方法で回避します。またベロシティ・レイヤーも細かく、サンプルも豊富なので、同じ音を8分/16分音符で弾きまくっても、マシーンらしさは全く感じさせません。ベロシティ違いも交えると完ぺきな生感が表現できました。
生演奏感を再現する
さまざまなサンプルを網羅
生ベースらしさを演出する際に必要なアーティキュレーションもしっかり押さえられています。サステイン・サウンドから僕も大好きなパーム・ミュートと呼ばれるブリッジ部分に右手を軽く乗せミュートしながら弾くサウンド、ここぞという際のスライド・インやアウト、スタッカート、スラップなどのサンプルを網羅していて、スライド奏法も違和感のない生演奏感が出せました。またベースという楽器はゴースト・ノートをはじめとするノイズ的サウンドでリズムを作り出すことが多く、そうした音をちりばめないとどうしても“打ち込まれた”演奏に聴こえてしまいます。しかし、そのあたりもよく研究しており、フレット/アクセント/スクラッチ/スラップ、デッド・ノートなどの豊富なノイズが用意されていました。特に気に入った機能は、弦のビビリを自動的に加える“Auto Buzz System”と、強く弾いたときのノイズを再現する“Auto Accentuation Noise”。個人的に強弱をかなり付け演奏する方なので、その際のノイズ感含め打ち込めるのはかなり弾いている感が出ます。また、打ち込まれた感を払しょくするのが難しいスラップ・サウンドもよく表現されていました。
そのほかに、Guitar Proフォーマットのファイルを読み込み演奏可能な“Tab Playerパネル”、弦ごとのチューニングを設定する“Alternate Tuner”、収録サンプル一つ一つのゲインとピッチを詳細な表で調整でき、ベースなのにカポタストで移調が可能!と、重箱の隅まで細かい機能も搭載(画面①)。ベーシストの仕事がまた減るほどの生感が演出できますが、ベースという楽器の奏法自体を細かく理解できる、そんなソフトウェアになっています。フレットレスなどの追加発売も期待しちゃいます。


製品サイト:http://www.crypton.co.jp/mp/do/prod?id=98852
(サウンド&レコーディング・マガジン 2015年10月号より)