
DAWのシーケンサーでアプリを鳴らし
そのままDAWにレコーディングが可能
まず箱から出してみると金属製のボディは適度な重みがあり、しっかりとした印象です。オーディオ関連は4系統のアナログ同時入力(XLR/フォーン・コンボ)と4系統のアナログ出力(フォーン)、独立したボリュームのヘッドフォン端子を1系統搭載。最高24ビット/96kHzの録音/再生に対応します。ノブはフロント・パネルに1つしかありませんが、パネルはタッチ・センス式となっており、パラメーターを選んでノブを回すことで、入出力やヘッドフォンの音量、入出力やファンタム電源のオン/オフなどを手元で操作できます。
MIDI関連は1系統のMIDI入出力端子と最大8台のUSB MIDIデバイスを接続可能(電源付きUSBハブ使用の場合のみ)なHost端子を装備。そしてこれらの信号をすべてコントロールするのがIConfigソフトウェアです。無償で付属しているこのソフトを使うと、全接続デバイスのMIDIのルーティングやオーディオ入出力の設定などが可能になります。
それでは実際にデバイスを接続してみましょう。リア・パネルの2つのUSB端子のうち、1がiOS機器用で2がコンピューター用となっています。分かりやすいアイコンが書いてあるので、間違えることはないでしょう。付属のUSB/Lightningケーブルを使ってAPPLE iPadを接続してみます。ちなみに接続されたiPadには電源が供給されるので、つなぎっ放しでも充電切れの心配はありません。Host端子にはUSB MIDIキーボードを接続。iPadでCore MIDI対応のシンセ・アプリを立ち上げると、デフォルトの設定によりこれだけでIConnectAudio4+のアナログ出力1/2からアプリの音が鳴ります。USB MIDIキーボードを弾いてもほとんどレイテンシーは感じず、ハード・シンセを弾いているような感覚です。そしてIConnectAudio4+のオーディオ出力から聴くシンセ・アプリの音は、普段iPadのミニ端子から出力している音より断然クリアでレンジが広く感じます。
次に筆者のWindowsマシンをUSB端子2に接続し、PRESONUS Studio One 3を立ち上げてMIDIの入出力の設定を見ると、IConnectAudio4+のMIDI端子の項目が表示されますので、ここでは“Host”を選択。すると今度はDAWのMIDIトラックを経由してiPadのシンセ・アプリが鳴るようになります。MIDIトラックに簡単なフレーズを打ち込んでみると、その通りにiPadのアプリが鳴ります。まさにハード・シンセ感覚ですね。
今度はその音をDAWに録音してみます。デフォルトの設定ではオーディオ入力の“5/6”にiOSの出力がアサインされているので、DAWのオーディオ・トラックの入力を“5/6”にして先ほどのMIDIトラックを再生しつつオーディオを録音。適切なレベルでiPadのシンセ・アプリの音がオーディオ化されました(画面①)。

面倒な配線やつなぎ替えの手間もなく、内部のルーティングのみでいとも簡単にシンセ・アプリの音をDAWに取り込めるので、普段の制作でも積極的にアプリを使いたくなります。しかもソフト・シンセと違ってコンピューターへの負荷はほとんどありません。マルチティンバーのiOSアプリであれば、楽曲のほとんどの音を任せることも可能でしょう。
アプリでDAWのソフト・シンセを制御
DAWアプリへのマルチ録音も可能
iOSアプリはシンセばかりではありません。タッチ・スクリーンを生かしたMIDIコントローラー・アプリも豊富にありますので、今度はそれらのアプリでDAWに立ち上げたソフト・シンセをコントロールしてみます。これもStudio One 3のMIDI設定にIConnectAudio4+の項目が出てきますので、“USB1”端子を選択。ソフト・シンセを立ち上げ、MIDIラーン機能などでアサインすれば、iPadからDAWのソフト・シンセをグリグリと操作できます。
さらに最近ではiOS用のDAWアプリも登場し、iPadだけでマルチトラックのレコーディングも可能になりました。今回はSTEINBERG Cubasisを使ってIConnectAudio4+のオーディオ入力から録音してみます。これも非常に簡単で、Cubasisのオーディオ・トラックの入力設定に任意のIConnectAudio4+の入力端子の番号を選ぶだけ。最大4トラックの同時録音が可能です。マイクプリの音質も素直でクセのない好感の持てるものでした。さらにすごいのは、同時にDAWにも同じ信号が録音できること。一発勝負のライブ・レコーディングなどでは、メインはDAWで録音しつつ、万が一のバックアップとしてiPadにも録音しておけるので、安心度が増します。
本機は別売の30pin Inline iOS Connection Cableを使えばiPhone 4などの古いiOS機器も接続できます。最新機種に買い替えて古いiPhoneが余っているという方は多いのではないでしょうか。IConnectAudio4+によって、意外と壁があったDAWの制作環境とiOSアプリ環境がシームレスにつながります。ともすればスペックや音質だけで語られがちなオーディオ・インターフェースというカテゴリーの中で、作曲のアイディアに影響を与える、魅力的な製品だと思いました。

(サウンド&レコーディング・マガジン 2015年10月号より)