「WALDORF Nave Plugin」製品レビュー:ウェーブテーブル・シンセの本家が送り出すNaveのプラグイン版

WALDORFNave Plugin
Naveは、ウェーブテーブル・シンセの元祖とも言えるWALDORFが送り出すソフト・シンセです。その心臓部はもちろんウェーブテーブル・シンセシス。簡単に説明すると、“多くの波形を複雑に使用することで、変化に富んだ音色を構築する音源方式”とでも言いましょうか。通常のシンセではなかなかできない音色が作れます。

2基のウェーブテーブル・オシレーターと
5種類の波形が選べるオシレーターを搭載

今回紹介するNave Pluginは、2年ほど前にリリースされたiOSアプリのMac/Windowsバージョンで、VST/Audio Umits/AAXに対応。それでは実際に音色を作成しながらNave Pluginの内部を見ていきましょう。

まずオシレーター部は“心臓”とも言えるウェーブテーブル・オシレーターと通常のオシレーターから成っています。2基あるウェーブテーブル・オシレーターはそれぞれ83個のウェーブテーブルを持ちます。早速ウェーブテーブルを1つずつ聴いてみましたが、“MalletSyn”が好みでした。この波形はその名の通りマレットを使ったようなアタックに特徴の出る波形で、かつ本物の鍵盤打楽器とは異なるシンセらしい音色が作れそうです。

このウェーブテーブルの中でさらに波形の場所を探っていきます。パラメーターを動かしていと段々倍音が増えていくのが分かります。音色が持続する中で倍音が変化するのが面白そうなので、後で変調を加えることを前提に、まずはおとなしそうな部分で決めておきます。もう1つのウェーブテーブル・オシレーターでは中低域を補助するような波形を選択し、これも少しおとなしめの部分を指定しておきました。

続く通常のオシレーターは、ノイズを含む5種類の波形から選択可能です。PulseWidthなども搭載し、必要十分という感じです。さらにそのすぐ下にある“Uberwave”がポイント。ここでは8つまでのオシレーターを重ねることが可能です。もちろんデチューンが付いていますので、いわゆるSuperSaw的な波形を簡単に作成することが可能です。今回は三角波を選択して7つのオシレーターを重ね、デチューンで少しズラして補強してみます。ここまでで、ベル系の音色がベースにありつつ、シンセ・サウンドとの中間のような音色になりました。

フィルターは計6種類のマルチモード
ウェーブテーブル・エディターも実践的

次に、ウェーブテーブルの波形選択をLFOで変化させてみます。ウェーブテーブル・オシレーターにはこうした波形選択への変調を容易に行えるよう、変調設定部分がすぐ下に配置されています。ここからまずは肝となるMalletSyn波形の選択部分をLFO1で揺らしてみます。打鍵と同時に波形が動き出し、ベルがキラキラと鳴り出すような音色になってきました。ちょっとメロウに弾きたいと感じたので、LFO側のDelayを少しだけ上げておきます。こうすると打鍵後、LFOがその分だけ遅れて変調を始めてくれるので、音色の途中からフワフワと変化が付いてくれます。同様に2つ目のオシレーターの波形選択はスピードの違うLFO2で揺らします。オシレーター1と変調元を変えたのは、より複雑な音色変化を作りたいから。LFOのDelayのパラメーターは同じにしてあるので、音色変化の部分だけがより複雑になりました。

続くフィルター部はローパス/ハイパス/バンドパスの3種類。それぞれ−12/−24dBの2種類のカーブを備えるので、計6種類のマルチモード・フィルターとなります。今回は−24dBのローパス・フィルターを選択。高域を少し抑えめに、エレピに近い感触の音に仕上げていきます。ちなみにこのエンベロープ、各ポジションでリニア/エクスポーネンシャルを選択することができます。個人的には今シンセで一番欲しい機能なので、とてもうれしくなってしまいました。

ここまでで十分に素敵な音色なのですが、もう少しキャラを立たせたいので、ほんの味付け程度にひずませてみます。Nave Pluginにはフィルター/EQの前後にポジションを選択可能な“Drive”機能があります。しかもカーブを5つから選択可能。ほんの少しの隠し味のように微妙なひずみを加えてみます。ここまでのエディットだけで、温かくこもるフィルターの中でオシレーターが複雑にうごめくような、存在感がある音色になりました。

単純な音色構築だけでなく、Nave Pluginにはさまざまな機能がまだあります。簡単に変調を構成できるマトリクス・エディター(画面①)やMIDIラーン、多様なエフェクトからアルペジエイターまで、現代的な機能は網羅しています。

▲画面① WALDORFシンセではおなじみのマトリクス・エディターを表示したところ。10基のスロットが用意され、LFOなどのモジュレーション・ソースをさまざまなパラメーターに割り当てられる ▲画面① WALDORFシンセではおなじみのマトリクス・エディターを表示したところ。10基のスロットが用意され、LFOなどのモジュレーション・ソースをさまざまなパラメーターに割り当てられる

そんな中、使用しているうちに感動したのが、“ウェーブテーブル・エディター”。同様の機能は昔からありましたが、複雑な操作が必要で実践的ではなかったように思います。しかしNave Pluginに搭載されたエディターはまるで画像編集ソフトのように範囲指定しての操作が可能で、使いやすいものになっています。これは非常に“掘りがい”のある機能であると言えるでしょう。

ここまでゼロからのエディットでいかにキャラクターの濃いサウンドを作れるかをご紹介してきましたが、Nave Pluginには数多くのプリセットが搭載されています。リチャード・ディヴァインに代表される有名サウンド・クリエイターによる、現代的な即戦力サウンドをすぐ使えますので、難しく考えず、まずはプリセットを触ってみてください。メインストリームのシンセ・サウンドからキャラクターの濃い特徴的なサウンドまで、その幅広さにびっくりすると思います。

製品サイト:http://fukusan.com/products/waldorf/nave_plugin/

サウンド&レコーディング・マガジン 2015年10月号より)

WALDORF
Nave Plugin
23,000円
▪Mac:OS X 10.7以降、1GHz以上のINT EL製CPU ▪Windows:Windows 7以降、1GHz以上のCPU ▪共通項目:2GB以上のRAM、インターネット環境