
すべてにCV/Gate入力端子を備え
モジュラー・シンセと組み合わせ可能
そんな中、ROLANDが昨今のダンス・ミュージック・シーンのニーズに応えるべく投入した新ラインナップ、AIRAシリーズを発表。同社TR-808やSH-101、System-100のほか、往年のリズム・マシンやシンセの名機をデジタル解析したラインナップに加え、今回、AIRA Modular という、Eurorackコンパチブルの4種類のエフェクター・シリーズが発売された。すべてにCV/Gate入力端子を備えており、21HPのEurorackモジュールとして使用できるので、いわゆるモジュラー・シンセとの組み合わせで活用したくなるわけだが、単体でテーブルトップとしても使用可能。4機種ともインプット、アウトプットが2系統あり、DJ向けにステレオで使うことも想定されている。その4種とは、ビット・クラッシャー/フィルターのBitrazer、ディレイのDemora、スキャッター/ルーパーのScooper、ディストーションのTorcidoである。今回は、筆者自前のモジュラー・シンセでパッチしたアンサンブル・サウンドをこれら4機種に通し、それらの特徴と操作性を調べてみよう。
●Bitrazer:サンプル・レートとビット数を設定できる左セクションと、ハイパス/ローパス・フィルター部の右セクションという、新旧取り混ぜたエフェクターである(写真①)。

左上のSAMPLE RATEは反時計回りで粗くなっていき、リング・モジュレーターにも似てピッチが下がっていくようにも感じられる。左下BIT DOWNも反時計回りで粗くなり、SAMPLE RATEとの兼ね合いでデジタル・ローファイ感を調整可能。右側はオーソドックスなFILTER CUTOFFとRESONANCEで、左下にはLPF/HPFのスイッチがあり、フィルターのローパス、ハイパスを切り替えることができる。
●Demora:ディレイ機能を持ったモジュール。左上のTIMEツマミでは20ms~10sの範囲でディレイ・タイムを、右上のFEEDBACKツマミでフィードバック・リピートのかかり具合を調整できる。左下のWIDTHでは、ピンポン・ディレイ効果によりステレオL/Rの広がり感が出せ、その下のHOLDボタンを押すと、現状がホールドされループした状態になるが、HOLDオンのままTIMEやWIDTHツマミを動かすことでさらに強力な変化が得られる(写真②)。

●Scooper:ループ・レコーダーであり、それをスキャッターという機能でまるでロボットがリズミックにスキャットするような効果が出せる。まず、入力された音を中央のREC/PLAYボタンでサンプリングする(最大で10秒)。右下のSCATTERボタンは、ほかの3機種のBYPASSスイッチのようなものだが、逆にオンでSCATTER機能が働くので注意。再度REC/PLAYボタンを押す(インジケーターが青に点灯)ことでループが始まり、SCATTERをオンにすると、左下のPITCHツマミでループの速さを変更できる。右下のFILTERツマミは真ん中で変化無し、反時計回りにローパス、時計回りにハイパス・フィルターとなっている(写真③)。

スキャッター機能は、左上部のSCATTER DEPTHツマミを時計方向に回すと刻みの度合いが増し、右上部のTYPEツマミでは刻み方のタイプを滑らかに10通り選ぶことができる。このTYPEとDEPTHやPITCHとの兼ね合いで、万華鏡のように多彩なループ・サウンドを生み出すことができるわけだ。
●Torcido:ディストーション機能を持ったモジュールであり、4つの中では比較的操作がやさしい機種となっている。左上のDISTは時計回りで深くひずみ、右上TONEは時計回りでひずみ成分の音色が明るくなる。中央左のTUBE WARMは時計回りで真空管的な温かみが加味され、その下のLO BOOSTボタンを押すと低域が強調される。中央右はDemora同様、DRY/WETのバランスであり、バイパスとエフェクトONでの音量差はここで調節することができる。
専用エディターで
モジュールをプログラミング可能
筐体が共通しているため4機種のデザインがほぼ同じであり、個々のキャラクター区別という点ではそれほど違いはないが、統一感があって良いとも思うので、そこは好みが分かれるであろう。いずれも、メインの機能だけで見ると、デジタルながら1,600万段階以上の高解像度で滑らかな変化を行えるエフェクターということになるが、やはりモジュラー・シンセというフォーマットに基づいているため、すべての機能をCVやGateトリガーでコントロールできることがポイント。パッチ次第では複雑なスイッチングによって聴いたことの無いような音の動き/グルーブを作ることができる。エフェクト自体が新たなオシレーターととらえることもでき、それを単体で即興的にツマミやスイッチを実際にいじりながら行えるわけで、クリエイター魂を大いに刺激してくれる。これぞモジュラー・エフェクター・シンセサイザー!
さらには、iOSのほか、Android、Mac OS X/Windowsに対応した専用のエディター、AIRA Modular Customizerも用意されている(写真④)。

それぞれのREMOTE INとステレオ・ミニ・プラグで接続することにより、LFOやSAMPLE & HOLDといった15種類のバーチャル・サブモジュールをコントロール可能。筆者のAPPLE iPad Miniからメイン・モジュールを選び、幾つかのサブモジュールをロードして試してみたところ、バーチャルにパッチされたパラメーターを複数コントロールでき、複雑なサウンドを生成できた。将来的な機能拡張も予定されているということで、音作りの幅を広げてくれる機能として、さまざまな活用方法が期待できるだろう。

製品サイト:https://www.roland.com/jp/products/aira_modular_customizer/
(サウンド&レコーディング・マガジン 2015年10月号より)