
プロ機器の雰囲気を醸し出す仕上げ
フロント・パネルには8つの入力端子を装備
UAC-8はUSB 3.0接続のオーディオI/Oで、Mac/Windowsに加えiOS機器でも使え、24ビット/192kHz、入出力は最高で18イン/20アウトに対応。本体は1Uサイズで、メタリック・グレーのパネルと両脇にある黒のラック・アングルが重量感のあるプロ機器の雰囲気を醸し出しています。持ってみるとなかなか重く、価格以上の高級感があります。20年前と比べてブランド・イメージが随分洗練されているように感じました。
フロント・パネルには8つの入力端子(XLR/フォーン・コンボ)とゲインつまみが並び、右端には2系統のヘッドフォン端子&ボリュームつまみというシンプルな構成(メイン写真)。ファンタム電源スイッチは2つありますが、1〜4chと5〜8ch共用のオン/オフとなっていますので、リボン・マイクなどを使用する際は注意が必要です。また、入力のch1/2にはHi-Z切り替えスイッチがあり、ギターやベースを直接入力することができます。リア・パネルにあるMAIN / LINE OUTPUT端子は良質な部品が使われているようで、プラグの抜き挿し時にカチッとした安定感があります。
素直でバランスの良いD/A
ADコンバートも倍音がよく表現される
本機の特徴として、D/A変換時に4倍のサンプリング・レートで処理するアップ・サンプリング機能があります。モニターのDACとして使えるか興味があったので、まず自分がミックスした曲や聴き慣れた音源をAVID Pro Tools 11で再生して聴いてみました。アップ・サンプリング機能はデフォルトでオンになっているのですが、スムーズで奇麗に伸びてステレオ感もある高域と、耳に痛くなく聴きやすい中域、ローエンドまでよく伸びてこもらない低域と、非常に素直でバランスが良い印象。音の傾向としてはDCSのコンバーターに似ているかな?と感じました。
アップ・サンプリングをオフにして聴いてみたところ、高域は少しおとなしくなりますが、低域がよりタイトになるので、個人的にはこちらの方がバランスを取りやすい印象です。続いてメイン・アウト、ライン・アウト、ヘッドフォン・アウトを聴き比べてみましたが、ほとんど同じ音色でした。このような機種はなかなか珍しく、音色にこだわって作られたことがうかがえます。外部からワード・クロックを入れて試聴してみましたが、あまり音色の変化が無かったので、内蔵のクロックも優秀なのだと思います。
続いてアップ・サンプリング機能をオフにしてマイク入力の音をチェックしてみました。まずダイナミック・マイクをつないでドラムを録音しました。何だか聴き覚えのある感覚がしたのですが、出音のスピード感と音色がSSLコンソールのそれに良く似ていることに気付きました。UAC-8はSSLよりワイド・レンジになった印象で、EQのかけどころが分かりやすい、素直な音色だと思います。
次にコンデンサー・マイクをつないで女性ボーカルとアコースティック・ギターを録ってみたところ、低域がふくよかで倍音もよく表現されていました。おおよそ80Hz辺りがQ広めで少し持ち上がっているような感じで、良い雰囲気に音作りされています。外部のマイクプリを使う場合、ゲインつまみを左に絞りきれば+4dBに対応するように設計されています。少し気になったのは、入力ch3〜8は上記のような印象ですが、入力ch1/2のマイク/Hi-Z入力はローエンドが少し足りなく感じた点。使用する際は音をよく確認するようにしてください。
現場での自由なモニタリングを実現する
ミキサー・ソフトUAC-8 MixEfx
本機には専用のミキサー・ソフトUAC-8 MixEfxが付属しており、アウトプットのアサインや入力信号のモニター・バランスなどを調整できるようになっています(画面①)。

最近のコンピューターはCPUの性能が上がっているためダイレクト・モニターはあまり使わなくなってきていると思います。その場合はミックス画面の左側の下にあるインプット1〜8chのフェーダーを下げれば入力のダイレクト音は聴こえなくなります。
ミキサーの左上のインプット画面にあるch1〜8に80Hzのローカット・スイッチと位相反転スイッチがあり、必要に応じてそれぞれオンにして使用できます。もう一つの便利な機能として、ヘッドフォン出力が2系統あり、PHONE 1はソースがメイン・アウト固定ですが、PHONE 2はミキサー画面左下のヘッドフォンのアイコンを押せば別のアウトプットを聴けるようになります。例えばLINE 3/4をセレクトして、このとき右側のアウトプット・ミキサーの3/4だけフェーダーを上げれば、DAW側でセレクトした3/4アウトの音が聴けるようになります。
本機は、価格を考慮するとデザイン、使い勝手、音色ともよくできており、ブランド・イメージの向上が期待される製品だと思います。これからのハイレゾ時代にマッチしたDACとしての使用や、ハイファイなADコンバーターとして使用することで、音楽制作の可能性を広げてくれるでしょう。この素直な音色は逆に個性とも言え、アコースティックなサウンドを求める方には特にお薦めです。

(サウンド&レコーディング・マガジン 2015年9月号より)