「ZOOM Q8」製品レビュー:3M HD動画撮影と4tr同時録音に対応したビデオ・レコーダー

ZOOMQ8
Q8は、音響機器メーカーであるZOOMならではのユニークな機能を搭載したハンディ・ビデオ・レコーダーだ。昨今は、インターネットなどを通して音楽と映像をセットで提供するのは当たり前。それだけにどのような制作ツールを選べばよいのか、ミュージシャンの間でよく話題になる。しかし映像に関しては高機能なものが多い反面、音についてはもう一歩……という声が多いのも現実だ。そんな中、Q8はどのような働きを見せるのか?

交換可能なマイク・ユニットを装備
USB接続のWebカメラとしても機能

Q8は1/3インチのCMOSセンサーを備え、最高3M HD(2,304×1,296ピクセル)30fpsの動画撮影に対応している。5段階のデジタル・ズームが可能で、一番引いた状態だと画角は160°。横幅の広いステージなどもしっかり撮ることができる。ただし周辺が多少ゆがんだ感じになるので、気になる人はカメラの位置とズームの倍率を調整してみよう。本体の2.7型タッチ・パネル液晶では、映像のモニタリングや各種設定が可能。なかなか快適な操作性だが、入力レベルや録音/再生の開始などに関してはハードのダイアルやボタンで行えるのがありがたい。対応する記録メディアはSD/SDHC/SDXCカード(最大容量128GB)で、撮影したものは本体のHDMI端子を介して外部ディスプレイに出力することもできる。

録音の面については、XY方式のステレオ・マイクXYQ-8を標準装備。これは2つの単一指向性コンデンサー・マイクを120°で交差させたものだ。試しに生ドラムの入ったロック・バンドを録ってみたところ、さすがに素晴らしい音質。XYマイク自体は前ラインナップのQ4にも備えられていたが、その音質を受け継ぐ臨場感あふれるサウンドだ。またXYQ-8は別売のオプション・マイクに交換可能で、一眼レフカメラのレンズを交換するような感覚で換えられる。交換用マイクはMSマイクやショットガン・マイクなど5機種が用意されており、音楽だけでなくセリフの収録など、さまざまなシーンに対応できる。

さて、本機では標準装備のマイクと外部入力×2(XLR/TRSフォーン・コンボ)の計4chを内蔵ミキサーでステレオ・ミックスし、録音することができる。フォーマットは最高24ビット/96kHzのWAV。また“MOV+WAV”というモードに設定すれば、映像とは別に4trのWAVファイルをパラで保存することも可能。ただしこの場合は最高24ビット/48kHzとなる。

外部入力のそばにはUSB端子もスタンバイ。Mac/Windowsと接続すればWebカメラとしても使用でき、USTREAMなどのライブ配信サービスにも対応する。またMac/Windows/APPLE iPadのUSBマイクにもなるので、DAWソフトなどへの録音も可能だ。

ストリーミング配信に便利な内蔵ミキサー
外部入力はライブ動画制作などにも有用

ここで外部入力がどのような場合に便利かを考えてみよう。Webでストリーミング配信を行う際、場合によっては音楽とナレーションをミックスするためのミキサーが必要となる。しかしQ8をWebカメラとして使えば外部入力に音楽、マイクにナレーションなどを入力し本体内でミックスできるため、セットがシンプルになるだろう。

外部入力とともにMOV+WAVモードで4tr録音を行えば、ライブの録画/録音に一工夫加えられる。例えばPA卓のそばにQ8を設置してマイクで録音しつつ、外部入力に卓のライン・アウトを送れば、ミックス時に空気感のコントロールが行えるわけだ。また外部入力はファンタム電源(+12/24/48V)に対応しているので、コンデンサー・マイクをつないで演奏の近接収音を行い、標準装備のマイクでアンビエンスを録っても面白いかもしれない。もちろん本格的なライブ・レコーディングをやろうとすると4trでは足りないが、ボーカルやギターなどの重要なパートを卓から個別に入力し、マイクで拾った全体の音とミックスするなど、クオリティを上げるための工夫はいろいろと考えられる。

以上の通り、さまざまな機能が満載のQ8。ライブ動画やミュージック・ビデオの制作などにとどまらず、アイディア次第でさまざまな作品作りに役立ちそうだ。

▲マイク付近のダイアルはマイクへの入力ゲインを調整するもので、リア・パネルには外部入力のマイク/ライン・イン×2(XLR/TRSフォーン・コンボ)やライン・アウト/ヘッドフォン端子(ステレオ・ミニ)、USB端子、HDMI端子を装備。サイド・パネルには、録音したいトラックの選択などが行えるトラック・キー×4(L/R/1/2)や外部入力1/2のゲイン・ダイアル、再生/一時停止ボタン、電源ボタンを配置し、トップ・パネルには録画/録音ボタンがスタンバイ ▲マイク付近のダイアルはマイクへの入力ゲインを調整するもので、リア・パネルには外部入力のマイク/ライン・イン×2(XLR/TRSフォーン・コンボ)やライン・アウト/ヘッドフォン端子(ステレオ・ミニ)、USB端子、HDMI端子を装備。サイド・パネルには、録音したいトラックの選択などが行えるトラック・キー×4(L/R/1/2)や外部入力1/2のゲイン・ダイアル、再生/一時停止ボタン、電源ボタンを配置し、トップ・パネルには録画/録音ボタンがスタンバイ

サウンド&レコーディング・マガジン 2015年8月号より)

ZOOM
Q8
オープン・プライス(市場予想価格:39,000円前後)
▪レンズ:固定焦点(36cm~∞)、F2.0、焦点距離約16.6mm(35mm換算) ▪映像機能:5段階デジタル・ズーム、シーン・セレクト(Auto/Co ncert Lighting/Night)、セルフ・タイマー(OFF/3/5/10s) ▪動画フォーマット:MPEG-4 AVC/H.264(MOV) ▪動画解像度:最高3M HD(2,304×1,296ピクセル)30fps ▪最大音圧レベル:140dB SPL(標準搭載のマイク) ▪音声機能:ローカット(80/120/160Hz)、ダイナミクス・エフェクト(リミッター/コンプレッサー/レベラー) ▪録音フォーマット:WAV(16/24ビット/44.1/48/96kHz)、AAC(64〜320kbps/48kHz) ▪出力:HDMI micro(Type D)、ライン・アウト/ヘッドフォン端子(ステレオ・ミニ) ▪内蔵スピーカー:モノラル(400mW/8Ω) ▪電源:リチウムイオン電池/ACアダプター(別売) ▪外形寸法:47.8(W)×118.54(H)×156.63(D)mm(マイクを起こした状態) ▪重量:300g(本体/電池含む)+XYQ-8(40g) ▪動作環境:Mac/Windows/iOS(USB接続時)