「DAVE SMITH INSTRUMENTS DSM01 Curtis Filter/DSM02 Character」製品レビュー:同社シンセ開発のノウハウを込めたEurorack規格のモジュール

DAVE SMITH INSTRUMENTSDSM01 Curtis Filter/DSM02 Character
デイヴ・スミス氏という人の名前を知らなくても、SEQUENTIALのシンセサイザーProphet-5ならご存じの方もいらっしゃるでしょう。氏はその開発者で、現在はDAVE SMITH INSTRUMENTSの名の下Prophet 12やProphet-6などを手掛けており、第一線のシンセ・ビルダーとして活躍しています。今回ご紹介するのは、DSM01 Curtis Filter(以下、DSM01)とDSM02 Character(以下、DSM02)。いずれも、同社シンセのノウハウを生かしたEurorackモジュールとなっています。早速レビューしていきましょう。

スロープ切り替えやひずみエフェクトで
多彩な音作りが行えるDSM01

DSM01は幅8HP(40.3mm)のローパス・フィルターで、カットオフとレゾナンスのノブを備えるほか、−24dBと−12dBの2種類のスロープをスイッチで切り替えて使えます。まずは単純な波形のオシレーターを入力し、試してみましょう。−24dBモードではバッサリと気持ち良くかかります。またこのモードではレゾナンスを上げていくと自己発振するので、パーカッシブな音を作る際などに有効です。一方−12dBモードはより緩やかな特性で、高域からゆったりと覆っていくようにフィルターをかけられます。細かなニュアンスや雰囲気を出すには、こちらのモードが向くでしょう。スロープのスイッチの下には“Boost”スイッチがあり、ONにすると入力段でひずませることができるので、よりアグレッシブな音色が得られます。

カットオフとレゾナンスにはそれぞれCVインが用意されていて、外部からCVを入力すると変調が可能。さらにフィルター後段にVCAがあるため、別途VCAを用意せずとも音声を出力できます(写真①)。

▲写真① DSM01のオーディオ入出力。VCAの前段にはVCFアウトもあり、VCAアウトと同時に使用できるので、双方を使ってより複雑な音作りも可能だろう ▲写真① DSM01のオーディオ入出力。VCAの前段にはVCFアウトもあり、VCAアウトと同時に使用できるので、双方を使ってより複雑な音作りも可能だろう

倍音成分のコントロールや
ビット・クラッシュが可能なDSM02

DSM02は幅14HP(70.8mm)のデジタル・エフェクト・モジュールで、同社フラッグシップ・シンセProphet 12やPro 2に備わっている“Character”セクションを単体化したもの。Characterセクションとはオシレーターとフィルターの間に位置し、波形にエフェクトをかけるモジュールのことです。

このDSM02には5種類のエフェクト・ノブが装備されていて、それぞれで異なる効果が得られます。1つずつ見ていきましょう。まずローシェルフ・フィルターの“Girth”では、低域の倍音成分を強調することが可能。ノブを上げると低域が厚くなっていく印象で、密度をコントロールできます。続いてはハイシェルフ・フィルターの“Air”。こちらはGirthとは逆に高域の倍音成分を増やすもの。上げていくと、まるで音が“起き上がる”ように存在感を強めます。ビット・デプス・リダクションの“Hack”とサンプル・レート・リダクションの“Decimate”の2つは、アナログ機材では生み出すことのできない破壊系エフェクト。入力ソースのビット数やサンプル・レートを下げて独特の粗い質感を得るもので、Hackは上げれば上げるほどジャリジャリした音になり、Decimateではソースの原形をとどめないほどに壊れた音が得られます。最後はオーバードライブ/サチュレーターの“Drive”。これは上記のどれとも違い、音に温かみを付加してくれます。今回のテストでは、最終的にここで音の居場所や立ち上がり方をコントロールしていました。

以上5つのノブにはそれぞれCVインが備わっていて、個別に変調することが可能。シーケンサーと併用すれば、ステップごとに存在感が変わるようなフレーズを生み出せるかもしれません。オーディオの入出力はそれぞれ2つずつ用意されていて、デュアル・モノ/ステレオの両方に対応しています(写真②)。

▲写真② DSM02のオーディオ入出力。デュアル・モノで使用する際に、“Out 1”を“In 2”へ入力したりすると、よりエフェクティブな出音が得られそう ▲写真② DSM02のオーディオ入出力。デュアル・モノで使用する際に、“Out 1”を“In 2”へ入力したりすると、よりエフェクティブな出音が得られそう

今回はDSM02→DSM01という順に接続しさまざまな音を作ってみましたが、この2つだけでも音作りの幅は相当広く、幾ら時間があっても足りないほどでした。シンセの巨人、デイヴ・スミス氏の懐はまだまだ深そうです。

サウンド&レコーディング・マガジン 2015年8月号より)

DAVE SMITH INSTRUMENTS
DSM01 Curtis Filter/DSM02 Character
DSM01 Curtis Filter:21,800円/DSM02 Character:34,800円
⃝DSM01 Curtis Filter ▪操作子:カットオフ/レゾナンスの各ノブ、スロープ切り替えスイッチ(−12/−24dB)、“Boost”スイッチ ▪CVイン:カットオフ/レゾナンス/フィルター部後段のVC Aのそれぞれに装備、モノラル・ミニ、0〜10V ▪オーディオ・イン:モノラル・ミニ、±5Vもしくは10V p-p ▪VCFアウト:VCA前段、モノラル・ミニ ▪VCAアウト:モノラル・ミニ ▪外形寸法:40.3(W)×128.5(H)mm ⃝DSM02 Character ▪操作子:Girth、Air、Hack、Decimate、Driveの各アマウント・ノブ ▪CVイン:Girth/Air/Decimate/Hack/Driveのそれぞれに装備、0〜10V ▪オーディオ・イン:モノラル・ミニ×2、±5Vもしくは10V p-p ▪オーディオ・アウト:モノラル・ミニ×2 ▪外形寸法:70.8(W)×128.5(H)mm