
キック専用マイクや楽器全般向けモデル
コンデンサー・マイクなどを同梱
PGA Studio Kit 4は、キック用ダイナミック・マイクのPGA52、楽器用ダイナミック・マイクのPGA57、単一指向性コンデンサー・マイクのPGA181×2本の計4本とマイク・ケーブル、マイク・ホルダー、専用ケースなどから構成されています。例えばドラムを録るときは、オーバーヘッドにPGA181をステレオで設置し、スネアにPGA57、キックにPGA52というシンプルなセットアップを組むことができます。リハーサル・スタジオなどで自分たちの音源を録る際、その音質を向上させたいと考えている方には特にお勧めです。“ドラム録りにはもっとマイクの本数が要るのでは?”と思うかもしれませんが、厳密にモニターできない環境でマイクを立て過ぎると、位相の問題でかえって音が悪くなりがちです。そのためサクッと良い音を目指すのであれば、これくらいの本数から始めるのが良さそうです。また、ドラム以外にもPGA52でベース・アンプ、PGA57でギター・アンプ、PGA181でボーカルやピアノなど、一通りの楽器パートの収音が行えます。バンド録りに必要十分なマイクが一度にそろい、無駄がないのは非常にうれしいですね。
ふくよかな音のキックが得られるPGA52
中域も充実しているPGA181
それでは実際の音を聴いてみましょう。今回は、京都精華大学のMagi Sound Studioにてドラムのレコーディングを敢行。APIのアナログ卓1608にPGA Studio Kit 4のマイクと比較用のマイクを接続し、切り替えながら試聴していきます。
まずはキックに立てたPGA52からチェック。最近のキック用マイクはかなりドンシャリ傾向で、200~500Hz辺りの中低域をザックリとカットしたものが多いのですが、それに比べてかなりふくよかな印象です。ほかより低域が多いわけではないのに、中低域がちゃんと出ている分、アタックの重心が下がって聴こえます。特に小口径のスピーカーで鳴らしたときは、こちらの方が太く聴こえるかもしれません。昨今のキック用マイクの音が“ベチッ&ドーン”という感じだとすれば、PGA52は“ボムッ”とくる感じ。メタリックな音のマイクが増えた中で、こういうロックっぽいサウンドは個人的に好印象です。
次にPGA57をスネアへ立ててみました。同社SM57と比べたところ、意外にもこちらの方が素直な出音。SM57の録り音は中高域のジャリっとした部分が持ち上がってかなり特徴的ですが、PGA57はそこがややおとなしくナチュラルな傾向です。ただし密度が高くタイトなSM57に対し、PGA57には良い意味で粗さがあるので、キレイにまとまり過ぎているわけではありません。比較用に立てた他社のマイクに比べると、全体のバランスとしては同じ方向性だと感じました。
最後にオーバーヘッドへ立てたPGA181。このマイクはキットの中ではキャラクターが最も強く、先のPGA57ではややおとなしかった5kHz以上が持ち上がっています。コンデンサー・マイクというより、SM57の周波数レンジを広げたような雰囲気ですね。安価なコンデンサー・マイクは、ハイファイ感を出すために高域が強調されツルツルとした音になっていることが多く、一聴すると良いのですが肝心の中域が抜けているものもあります。しかしPGA181は無理に周波数レンジを広げず、あくまで音楽的な中域にフォーカスしている印象。特にスネアは倍音がザクザク入ってきて、かなり気持ち良い音になります。ロックではルーム・マイクをコンプなどでひずませて混ぜ、パンチを出すことが多いですが、最初からそういう音になるよう設計されている感じ。高級なコンデンサー・マイクを持っている方も、選択肢として導入して良いでしょう。
これだけのセットが、専用ケースも付いて4万円ほどで手に入るのは驚きです(写真①)。例えるなら、ちょっと頑張って買うコンデンサー・マイク1本くらいの価格でドラム録りができる衝撃。しかもSHURE製品とくれば、クオリティも保証されているようなものですね!

(サウンド&レコーディング・マガジン 2015年8月号より)