
単四電池×1本で500時間駆動
スマートフォンの撮影も安定した構えに
動画の印象(見てもらいやすさ)について、画質と音質どちらが大事だと思いますか?という問いかけに、大体の人は画質と答えてしまいがちかと思いますが、実は聴き取りやすい音質の方がはるかに重要だったりします。筆者は普段音楽ライブの映像配信などを手掛けていますが、画質がどんなに良くても、音にノイズが多かったりひずんでいたりすると、最初は見ていてくれていた視聴者が徐々に減っていってしまいます。逆に画質が多少荒くても音質が良好であれば見続けてもらえるようです。
今回のMM-VE001は、FR-310というマイクに、専用ブラケットと変換ケーブルなどをセットにした製品。マイクはショットガン・タイプと呼ばれる指向性のとても鋭いものになります。ショットガンは、よくテレビなどで音声スタッフが長い棒の先につけて使っているタイプ。指向性がとても狭いため、余計なノイズを抑えて目的の音をはっきりと収音することができます。最近ではライブ録音などで歓声を収録する目的での使用も増えてきました。
マイクのFR-310はメタル・ボディでしっかりとした作り。5dBステップの3段階ゲイン切り替えと、150Hz以下のローカットを兼ねた電源スイッチがあります。バッテリーの残量はLEDで確認できます。これは常時点灯しているものではなく電源投入時に一瞬光るタイプ。バッテリーの寿命を延ばすための仕様ではないかと思います。カタログ・スペック上では単四電池×1本で500時間という、長時間の駆動が可能です。
ブラケットにはスマートフォンなどを挟めるクランプと、ホット・シュー×2が付いています。2つのホット・シューは縦/横を用途に応じて使うことができ、マイク本体以外にLEDライトなどを固定することも可能です。またブラケット形状が斜めになっているのですが、握り部分がラバー・コーティングされていたりと人間工学的に考えられているようで、スマートフォンだけで撮影するよりも安定して構えることができます。クランプを外せばミラーレス一眼などのカメラもマウント可能です(写真①)。

付属の二股ケーブルは3ピンのミニ・プラグ。二股の片方には手持ちのイヤホンなどを差し込めるようになっていますが、筆者のAPPLE iPhone 5Sでは、録画時のモニターはできず、再生確認時につなぎ替えずに音を聴くことができるというものでした。この辺りはスマートフォンなどの仕様によるところが大きいので、機種ごとに挙動を確認したいところです。
背面の音や余計な響きを拾わない特性で
コメント動画などの収録に最適
実際のテストは、iPhone 5Sとミラーレス一眼を持って公園へ出かけてみました。まずはiPhone 5Sでチェック。ブラケットに固定すると本格的なカメラのようで少しテンションが上がりました。本体内蔵マイクと比べると周囲の雑音が抑えられており、マイクを向けた方向の音をうまく拾っているようです。また背面の音をほとんど拾わない特性のため、撮影者が多少しゃべったりくしゃみをしたりしても録音に影響が少ないでしょう。また、iPhone 5Sの仕様のためか、ローカットしない場合でも低域がかなりスッキリとした印象になっており、低域成分が必要な場合には注意が必要です。これはiPhone 5Sの設計上、このような外部入力のマイクは通話用と考え、ローカットが施されているためだと思われます。
次にミラーレス一眼に接続してチェックしたところ、こちらはしっかりと低域もとらえており、マイクの素直な特性を聴くことができました。ローカットの効きもしっかり確認でき、近くを走っている車の騒音などをうまく抑えてくれます。カメラの内蔵ステレオ・マイクと比べると、ステレオとモノラルの違いはあれど(本機はモノラル仕様)、余計な響きなどを抑え、うまく被写体の音をとらえていると思いました。これであれば、後々音量を上げた場合でも周りの雑音が増えず、聴きたい音だけを上げられます。
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本機は指向性が狭いため、音楽ライブなどをありのままに収音する用途にはあまり適さないと思いますが、スマートフォンが少々苦手とする騒がしい場所でのインタビューなど、人の声をしっかりと収音する目的にはとても有効な手段となると思います。コメント動画など声が主体の撮影には最適ではないでしょうか。
(サウンド&レコーディング・マガジン 2015年8月号より)