新たなサウンド・ステージを提示したStudio One 3の「進化」と「実力」①

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さまざまなDAWが存在する中、2010年にPRESONUSから登場したStudio One。生みの親は、ドイツの名匠マティアス・ジュワン氏とヴォルフガング・クンドゥルス氏で、STEINBERG Cubaseも手掛けたソフト開発者だ。2011年にはVer.2にアップデート。64ビットのオーディオ・エンジンの搭載による音質の良さ、ドラッグ&ドロップによるシンプルな操作性、シングル・ウィンドウの搭載、CELEMONY Melodyneの統合、マスタリング時のDDP書き出しまで対応するプロジェクト画面など、さまざまな特徴をそなえており、その認知度を上げてきた。そして2015年5月、満を持してVer.3にアップデートされたStudio Oneは、一体どんな進化を遂げているのだろうか? ここでは、日本でのプロ向けStudio Oneコミュニティの代表も務める、田辺恵二氏によるナビゲートの下、まだStudio Oneを使ったことない人も、Ver.2を使っていて最新バージョンが気になっている人も、既にVer.3を使っているユーザーにも役立つ内容で、その「進化」と「実力」に迫っていきたいと思う。今回は田辺氏、作編曲のオリジナル楽曲「Keep on movin'」をバンド・レコーディング。デモ楽曲「Keep on movin'」作詞:内川佳子
作曲&編曲 :田辺恵二
録音&ミックス&マスタリング :加納洋一郎
ボーカル:内川佳子
ギター西山昌一郎
ベース:服部源
ドラム:杉野寿之 S1_3

*本楽曲のプロジェクト・ファイル(Studio One 3 Professional版)のダウンロード期限を2015年11月末まで延長しました! 紙版をお持ちの方は誌面封入のパスコードをそのまま利用可能です。iOS版をご利用の方は、ページに従ってダウンロードをしてください。


*さらに本楽曲のソング・ファイル(Studio One 3 Prime版)をエムアイセブンジャパンのホームページからダウンロード可能です。→https://www.mi7.co.jp/products/presonus/studioone/sr/*Studio One 3の詳細は→http://www.mi7.co.jp/products/presonus/studioone/S1_3-1
こんにちは、約一年ぶりの登場になります、作編曲/プロデューサーの田辺恵二です。昨年Studio One(以降S1)の良さを伝えるべく、4回にわたってDAW AVEN
UEの連載を担当しましたが、S1がVer.3にアップデート。今回は、筆者が作曲した楽曲の制作工程を通して、この群雄割拠のDAW勢の中でS1の何がイケてるのかを、余すこと無く感じでもらえたらと思います。楽曲制作にあたって何がVer.3の目玉かを考えた結果、やはりVer.3になってさらなる音質の向上が見られたこと。これを伝えたい(実は伝えにくい)と思い、生演奏を中心とした楽曲を制作することを考えました。さらに今時な流れも踏まえ32ビット浮動小数点/96kHzという環境で制作をし、筆者のようなクリエイターがミックスするのではなく、本職のエンジニアである加納洋一郎氏に録音の一部、ミックス、マスタリングをしていただきました。エンジニアの客観的な意見も参考にしながら、Ver.3の特徴、S1の魅力を知っていただけたら幸いです。まずはS1の技術的な資料を参考に、概要を解説しましょう。S1_3-1aS1の最上位版Professionalでは、OSの32/64ビットにかかわらず、オーディオ・エンジンに32/64ビット浮動小数点演算のどちらかを選ぶことが可能です。64ビット浮動小数点演算は、1クロック・サイクルで2倍の命令を処理することができますが、デジタル・オーディオにおいてサウンドは数値に変換されるため、1ワードでどれだけ大きな数値を表すことができるのかが重要となり、64ビットでは、2の64乗=8,446,744,073,729,551,616(約172億GB!)が得られるのです。また、デジタル録音では、1オーディオ・サンプルあたりのビット数が増えるほど高いダイナミック・レンジが得られることは周知の事実です。Studio Oneが搭載する32ビット浮動小数点演算では1,680dBをも得られ、最高峰のProfessionalでは倍精度の64ビット浮動小数点演算となります。オーディオ・エンジンは、環境設定 > オプション・ダイアログ > オーディオ設定内の処理精度から32/64ビットの切り替えが可能です。S1_3-1b64ビットOSのメリットとしては、32ビットOSではRAMの上限が4GBですが、64ビットOSでは理論上ほぼ無限のRAMを利用できるため、大型のデータ・セット(トラック、プラグインなど)をRAMへロード可能、低速なディスク・アクセスの必要性が軽減されます。つまり、速度と精度でより多くの処理が行えるのです。S1_3-1cS1の内部分解能は最大64ビットで、内部処理にそもそもMIDIは存在していません。表示は、あくまでMIDI表示用に処理がされ、127段階での数値表示およびMIDI入出力しているにすぎないのです。例えばソフト・シンセを64ビット演算内での相対的な%で処理するのか、127段階で切って処理するのかでは結果は大きく異なります。また、一般的なMIDIコントローラーのフェーダーは10ビットの1,024段階。しかし、S1ではオートメーション・カーブなど内部ミックスもすべて最大64ビットで処理されるため、変化が非常にスムーズなのです。 
▲2015年5月に、前バージョンから3年半の時を経てリリースされたStudio One 3。100以上に上る新機能と機能向上を搭載していながら、Ver.1から変わらない軽快な音楽制作を実現している ▲2015年5月に、前バージョンから3年半の時を経てリリースされたStudio One 3。100以上に上る新機能と機能向上を搭載していながら、Ver.1から変わらない軽快な音楽制作を実現している
Studio Oneには2種類のグレードとフリー版、そしてクロスグレード版が用意されている。自身の環境に合わせてチェックしてみよう。 Studio Oneには2種類のグレードとフリー版、そしてクロスグレード版が用意されている。
自身の環境に合わせてチェックしてみよう。
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<製品ラインアップページ:>
http://www.mi7.co.jp/products/presonus/studioone/buy/Studio One 3 Professional日本語版(USB editionおよびダウンロード)
Studio One 3 Professionalクロスグレード日本語版(USB editionおよびダウンロード)
Studio One 3 Artist日本語版(USB editionおよびダウンロード)
各種バージョンアップ/アップグレード日本語版(ダウンロードのみ)<MI7楽割アカデミック・プログラムページ:>
http://www.mi7.co.jp/academic/

Studio One 3 Professionalアカデミック日本語版(USB editionおよびダウンロード)
Studio One 3 Artistアカデミック日本語版(USB editionおよびダウンロード)
各種バージョンアップ/アップグレード日本語版(ダウンロードのみ)S1のラインナップは3種類となっている。フラッグシップのStudio One Professional、ミッドレンジのStudio One Artist、そして無償のStudio One Prime(Studio One Freeの後継モデル)。Add-on機能やコンテンツを追加購入してS1を自身の環境に合わせアップデートすることも可能だ。これまでのS1ユーザーには、バージョン・アップ版を購入することできるほか、他DAWユーザー向けにStudio One Professionalクロスグレード版も用意されている。対象DAWユーザーはオンラインでクロスグレード登録することで、通常よりロープライスでStudio One Professionalを購入可能。またデモ版もあり、Studio One Professionalのすべての機能を30日間体験することができる。すべて、オンラインによる『ダウンロード版』と、64GB USBインストーラーを収録した『パッケージ版』(Primeを除く)が用意されている。スクリーンショット 2015-08-20 16.57.32 



































































































Studio OnePrimeStudio OneArtistStudio OneProfessional
オーディオ・エンジン(ダイナミック・レンジ)32ビット(1,680dB)32ビット(1,680dB)64ビット(倍精度)
オーディオ・トラック&MIDIトラック無制限無制限無制限
プラグイン・エフェクト数9種類30種類40種類
付属バーチャル・インストゥルメント1種類5種類5種類
Note FXの収録1種類1種類4種類
Audio Units、VST2、VST3、ReWire対応(別売/アドオン)
Studio One Remote for iPad
オートメーション・カーブ
アレンジ・トラックとスクラッチパッド
マルチトラック・コンピング
Pro Tools、Cubase、Logicのショートカットまたは独自ショートカットの作成
Melodyneピッチ補正の統合体験版Essential収録
マスタリング機能
ロスレス形式のオーディオ・ファイルの書出し(WAV/AIFF)
圧縮形式のオーディオ・ファイルの書出し(FLAC/MP3)(別売/アドオン)

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*上画面は、Studio One 3の新機能であるアピアランス機能を使用した田辺氏オリジナルのインターフェース *上画面は、Studio One 3の新機能であるアピアランス機能を使用した田辺氏オリジナルのインターフェース
[1]アレンジビュー:MIDI、オーディオ、マーカー、テンポ、オートメーション、その他のトラックが表示されるエリア[2]コンソール:インプット/アウトプット/バス/センドなどを表示したミキサー画面で、主にミキシングの際にメインに使われる[3]トラック・リスト:既存のトラック名がすべて一覧表示され、トラック名横の矢印をクリックすると関連トラック、エンベロープ、レイヤーが表示される。複数選択することでアレンジビューにそれらのトラックを同時に表示することができる。トラック名の左側の鉛筆アイコンが付いているトラックが編集可能なトラック[4]インスペクター:トラックやイベントの詳細情報が表示されるエリア。入出力チャンネルの選択や、レイヤー、ディレイ、トランスポーズなどのパラメーター値の設定、選択したトラックのコンソールの表示、Note FX、アレンジトラックなどさまざまな情報を操作することができる[5]ブラウザー:オーディオ、音楽データ・ファイル、VST/Audio Unitsなどのプラグイン/インストゥルメンツの検索、インポートが行えるエリア。アレンジビューにドラッグ&ドロップするだけで簡単にセットアップが完了する[6]ツール・バー:マウス・ツール、オーディオ・ベンド、ストリップサイレンス、クオンタイズ、スクラッチパッド、ビデオプレイヤーなどの各種ボタンが並ぶ[7]トランスポート:再生/ストップ/録音の各種ボタン、ループや現在の再生位置、メトロノーム、拍子、テンポなどを表示するエリア 
編集ビュー:いわゆるピアノロール画面で楽曲のタイムラインがバーで表示される。こちらではMIDIからオーディオ、Melodyneなど、さまざまなパラメーターの編集を行うことができる 編集ビュー:いわゆるピアノロール画面で楽曲のタイムラインがバーで表示される。こちらではMIDIからオーディオ、Melodyneなど、さまざまなパラメーターの編集を行うことができる
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