
コンピューターとの接続は
USBまたはイーサーネットを選択可能
AVBは米国電気電子学会(IEEE)の規格で、音声と映像のネットワーク転送をするためにイーサーネットを使い、48kHzで最大512ch、最長100mの同時転送が可能になる。MOTUのAVBシリーズはいち早くこの規格に対応し、AVB機器同士での大規模なシステムを作り、Webアプリケーションを使ってコンピューターやスマートフォンなどからのコントロールを可能にしている。コンピューターとの接続がUSBまたはイーサーネットであることや、UltraLite AVBをコントロールするためのアプリケーションの操作画面がWeb上にあるのが新鮮だ。
本機はハーフ・ラック・サイズだが入出力は豊富で、最大で18イン/18アウトに対応。MIDI IN/OUTもリア・パネルに装備し、電源はACアダプターで供給する。
ツマミやスイッチ類はすべてフロント・パネルに集中しており、パネルの右1/3は液晶ディスプレイとなっている。4つのスイッチは、2つのマイク入力のPADと48Vファンタム電源用だ。ツマミはロータリー式でデジタル制御なので、ガリが発生する恐れはない。ハーフ・ラック・サイズにこれだけの端子やツマミを詰め込んでいるのだが、実際に接続して操作してみると意外にすっきりとしていて使いやすいし、液晶画面の表示も見やすい。
芯のしっかりしたタイトな録り音
低域のスピードも感じられる
まず、ミキサー機能を使わずにストレートに録音/再生の音質をチェックしてみた。メイン・アウトとヘッドフォン・アウトの音質は、いずれも芯のしっかりとしたタイトなものだ。MOTUらしい個性はMicro Book 2と共通しているが、定位の良さや低域のスピード感はさすがにランクが違う。ハイエンドもローエンドもしっかりピントが合っているが、特徴は中域の充実感だ。シンセ・ベースが奇麗に聴こえるし、モダン・ジャズの演奏もとてもリアルで生々しい。出力部で117dBのダイナミック・レンジというのもうなずける出音だ。
次に、マイク入力とギター入力で録音してみた。これはちょっと驚きで、プリアンプからのノイズが非常に少なく、ゲインをかなり上げてもクリアだ。マイク入力はマイクプリの個性よりもマイク自体の音をそのまま聴かせるニュアンス。またギター入力は、ほかのインターフェースではノイズが乗ってしまうエレキギターからもほとんどノイズが出ない。この一点からしてもUltraLite AVBの優秀さが分かる。マイクとHi-Z入力という自宅録音での最重要ポイントのクオリティは、20万円以上の“プレミアム”なインターフェースと比べても決して引けを取らないものだと感じた。なお、アナログの入出力はすべてトリムで個別にレベル調整できる。
またレイテンシー性能も優秀で、USB 2.0仕様ながら44.1/48kHzのサンプル・レートで動作時はバッファー・サイズ64で問題なくマルチトラックの録音/再生ができた。この設定だとDAW経由でもレイテンシーは7ms程度なので、生録音でもほぼ違和感なく演奏でき、ダイレクト・モニタリングの必要がない。
Web上のAVB Controlアプリで
詳細なセッティングが可能
UltraLite AVBは本体にUltraLite MK3の約2倍の能力のDSPを持ち、Webブラウザーに表示されるAVB Controlアプリケーションも、プログラム自体は本体内にある。あらかじめオーディオI/Oのみ、独立したミキサー、多チャンネルの同時録音など幾つかのセッティングが用意されているが、ユーザーの使い方に応じてオリジナルな設定にエディットし、名前を付けて本体にセーブしておくことも可能だ。ここで、オーディオI/O+ミキサー機能の設定を使うと、入力/出力信号のさまざまなルーティングやEQ/コンプ/リバーブのエフェクトをかけたり、録音する信号をダイレクト・モニターするといった操作が可能になる(画面①)。トラック数やプラグインが増えてバッファー・サイズを上げたくなった場合にも、ダイレクト・モニターを使えばレイテンシーが気にならないし、モニター信号の方にリバーブをかければコンピューター側の負荷は上がらなくて済む。

EQはハイ/ミッド/ローの3バンドで奇麗に効く。コンプレッサーも色付けの少ないデジタル・コンプでパラメーターの設定がそのまま音に現れて使いやすい。リバーブは密度が高く汎用性の高いもので、センドでかける1系統のみだ。どこの位置でかけるかによって入力信号のかけ録りもできるし、モニターのみにかけることもできる。AVB Controlのミキサー画面は分かりやすいので、ルーティングやデバイスの画面とともに理解してしまえば、操作は容易だ。
UltraLite AVBは、まずアナログ入力のプリアンプ部が大変優れている。また入出力の数も多く、MIDI端子も付いているので、ハードウェアのシンセサイザーやエフェクターを幾つか使う場合でも、外部ミキサーを使わずにシステムを組めるだろう。将来的にAVBに対応した機器を加えてシステムを拡張できる可能性も含めて、とても魅力的な製品だ。

B ETHERNET端子(RJ45)、アナログ出力(フォーン)×6、MAIN出力L/R(フォーン)、アナログ入力(フォーン)×6、Mic 2入力(XLR)
(サウンド&レコーディング・マガジン 2015年8月号より)