
ADコンバーターは
Unison使用時に進化の大きさを実感
最初にApollo 8の概要から。本機は同社のDSPエフェクト環境UAD-2が内蔵された18イン/24アウトのMac専用Thunderboltオーディオ・インターフェースである。UAD-2が入っていることで、ほかのインターフェースには無い、以下のような特徴を持っている。
①UADプラグインをかけた状態でもほぼ遅れが無くモニター/録音ができる
②入力インピーダンスまでシミュレートしたUnisonテクノロジーによるプラグインが使用できる
③ほかのオーディオI/Oを使うときもUAD-2のプロセッサーとしてプラグイン環境を併用可能
本機にはプラグイン・バンドルRealtime Analog Classics Plusが付属し、その中にはUnison対応のUA 610-Bも含まれる。僕はApolloの購入当初、プラグインを通した状態で録音する、いわゆる“かけ録り”は、プラグインの利点であるリコール性がなくなるし、あまり利用しないだろうと思っていた。しかし演奏時にConsole(付属のコントロール・ソフト)上でUADプラグインをかけ、モニターで良い感じに鳴っているのをそのまま録れるのは、録音を進める上でとても有意義なことだとあらためて感じている。“いろいろ処理したものも聴いてみたいけど、この状態でもバッチリだね!”という、以前はごく当たり前だった作業の進め方を呼び戻してくれたように思う。
ではApollo 8の新しくなった部分を見ていこう。ぱっと見、外観はシルバーから黒に変わった。リア・パネルはMIC/LINE INPUT 1〜4がXLR/フォーンのコンボ・タイプとなった。またモニター出力端子がインプットとアウトプットの間に移動している。フロント・パネルには3つのスイッチが追加された。これらはMETER(パネル上のメーターを入力/出力表示のいずれかに切り替え)、ALT(複数のスピーカーやモニターをつなげる場合の切り替え)、FCN(ディマーやカット・スイッチなど用途を自分で選べる)という、主にモニター用のスイッチとなっている。本機に複数のスピーカーを接続してモニター・コントローラーとして使う場合などに便利だろう。
次に最も気になっている音質について検証してみた。まずは入力から。マイクをつないでApollo 8、旧Apolloに録音してみたが、それほど違いを感じない。うーむ、UnisonテクノロジーはApolloに搭載されたマイクプリの特性を加味してモデリングしているとのことだから、あまり変えられない、と言うか、変えたら“今までのApolloはどうなんだよ”という話になるから、これはこれでアリなのかなと思いつつ、ちょっと複雑な心境。
次にUnison対応プラグインAPI Vision Channel Strip(別売)を入れてみた。何と、先ほどとはうって変わって明らかに違う! 旧Apolloで5〜6kHz辺りにあったクセが抑えられ、上質なモデリング感になっている。Neve 1073(別売)でも試してみたが、こちらも同様の印象だ。NEVEらしいシルク感、そしてゲインを上げていった際のドライブ感もリアルさが増している。今までのApolloでNeve 1073をプラグインして喜んでいた僕のところに、UAから“そんなもんじゃないですよ”と、さらに綿密なモデリングを差し出された気分だ。なお、ConsoleもVer.2.0になってプラグインのハンドリングなどが大きく改良されている(画面①)。

D/Aは中域のクセが抑えられ
よりワイド・レンジになった印象
次にD/Aも試してみた。旧Apolloは硬めな音と言われており、確かに中域が張り出す感があった。またワード・クロックを入れると印象が変わる傾向があり、僕は個人的な好みに合わせるために外部クロックに同期させて、さらに別メーカーのDAコンバーターにS/P DIF接続して使っていた。まず旧Apolloの音とApollo 8を比べてみる。こちらも入力と同様に以前の中域のクセが抑えられたフラットな質感で、よりワイド・レンジになった感じだ。次に現在使っているクロック・ジェネレーターをApollo 8にも接続してみた。旧Apolloほどではないが、多少質感が変わって聴こえる。ということで、僕の印象としてはApollo 8のD/Aは従来の特色を残しつつ、以前よりハイファイで、いわゆる良い音になったという印象だ。もし僕がApollo 8に買い替えたら、わざわざDAコンバーターなどをつながなくても大丈夫かなと思っている。
このように、Apollo 8の音質は入出力ともにしっかりとグレード・アップしていた。機械モノは後発ほど良い製品だということは重々承知しているが、旧Apolloユーザーとしては少々悔しい(笑)。特にUnisonプラグインをインサートした状態での両者の違いは衝撃的だった。一体どこをどうやったらこんなに良くなるんですか?と質問したいほどだ。冒頭でも書いたが、良いなぁと思った音をそのままレコーディングしていくのは楽しいし、とても創造的だ。あれこれとエフェクトをかけるのも良いが、プレイ自体をしっかりと見つめ直せるような、純粋に良い音をApollo 8とUADプラグインの組み合わせは提供してくれる。その音はエンジニアだけでなく、実際に演奏するミュージシャンも刺激を受けている(実際僕もそうした理由でApolloを持ち歩いている)。音質も使い勝手も良くなった本機で、ぜひかけ録りの楽しさを味わってほしい。

bolt 端子×2、ワード・クロック入出力(BNC)、LINE OUTPUT 1〜8(フォーン)、MONITOR L/R(フォーン)、LINE INPUT 5〜8(フォーン)、MIC/LINE INPUT 1〜4(XLR/フォーン・コンボ)
(サウンド&レコーディング・マガジン 2015年8月号より)