「RUPERT NEVE DESIGNS Shelford Series」製品レビュー:名機をほうふつさせるルパート・ニーヴ氏入魂のアウトボード群

RUPERT NEVE DESIGNSShelford Series
AES 2013で発表されたルパート・ニーヴ氏の集大成とも言えるShelford Seriesがいよいよ発売となりました。ニーヴ氏は50年前、イングランドのリトル・シェルフォードで数々の名機を生み出しましたが、本シリーズの名前の由来はもちろんそこにあります。

ライン・アンプにEQとコンプまで備えた
Shelford 5051

今回紹介するのは、同社のラージ・フォーマット・コンソール5088と互換する縦型モジュール2機種。まずShelford 5051(以下5051)はライン・アンプで、EQとコンプも装備。Shelford 5052(以下5052)は伝説の1073をほうふつさせるマイクプリ/EQです。2機種ともに“Shelford Blue”と呼ばれる、古き良き時代を意識したパネル・カラーを採用。今回はこの2機種を別売の2way Vertical Rack(オープン・プライス:市場予想価格50,000円前後)に収め、電源は5way Power Supply(市場予想価格:130,000円前後)で駆動しました。

まず5051のパネル構成から見ていきます。上からLINE 1/2の切り替えスイッチ、EQ IN(ハイパス・フィルターはこのスイッチを通りません)、HFのゲイン・コントロールは15dBのブースト/カットが可能で、8kHz/16kHzが選択できます。続いてHI PEAK、8kHz/16kHzのEQカーブをシェルビング/ピークで切り替えるスイッチ、MID FREQは200/350/700Hz/1.5/3/6kHzから選択可能。MID HI QはMID FREQのピーク・カーブの幅を選択できます。MIDも15dBのブースト/カット、その右にコンプを使った場合のEQ PRE/POSTのスイッチがあります。HPFでは60/120Hzのローカット(12dB/oct)が可能。その下のLOW FREQは35/60/100/220Hzから選択可能で、EQカーブはLF PEAKのスイッチでシェルビング/ピークを選択でき、最後がLFのゲインとなります。ここまでがEQセクションで、モジュールの中央部にはアウトプット/ゲイン・リダクションを表示するLEDが備えられています。

続くコンプのセクションはGAIN(−6〜+20dB)、VCAによるサイド・チェイン・スイッチ、RELEASE(100ms〜2.5s)、ATTACK(5〜75ms)、LINKスイッチ、リダクションの制御方式を切り替えるFF/FBスイッチ、その右がRATIO、THRESHOLDとなり、最後にCOMP INがあります。

伝説の1073を想起させる
マイクプリ+EQのShelford 5052

次に5052のパネルを見ていきましょう。Mic/Line切り替えスイッチ、入力ゲイン(−6〜+6dB)、EQセクションに信号を送るかマイクプリをダイレクトに出力するかを選ぶスイッチ、48Vファンタム電源、位相反転スイッチ、アウトプットを表示するLED、66dBまで可能な6dBステップのマイク・ゲイン、20〜250Hzまで連続可変のハイパス・フィルター、その下がEQセクションで、構成は5051と同様になっています。5052にはさらにPorticoシリーズなどでおなじみの“TEXTURE”機能を搭載。出音に独特の倍音成分が付加され、ビンテージ・クラスAデザインのサウンドをほうふつさせてくれます。SILK REDを選択すると高域〜中高域、SILK BLUEは低域〜中低域を、ノブを回すことで強調できます。

両モジュールの出音はまさに“ニーヴ・サウンドそのもの”でした。5052に関しては“1073と全く同じか?”と聞かれれば、“違う”という答えになりますが、EQは1073よりもフレキシブルで使いやすく、音を作りやすいように感じました。特にLOW FREQは絶品で、歌や楽器すべてに膨らみや温かみをもたらしてくれます。今回は5051と5052を直列につなぎ、まるで卓のモジュールのように使ってみましたが、教科書のように動作してくれ、本当に強力でした。特にEQを2台使えるのは“至福の作業”と言え、音作りの楽しさを再認識した次第です。

5051のコンプはクセを出すこともできますし、質実剛健にしっかりと音をまとめることもでき、万能です。また5052のTEXTUREに関してはこれまでも同社の製品レビューで幾度となく紹介してきましたが、いつ使っても音の質感が素晴らしく、サウンドに深みを与えるのはやはりひずみなのかな?とあらためて感じました。アレンジャー/ミュージシャンは、ベースの録音などでぜひこの2台を使って、ハードウェアEQ/コンプの素晴らしさを味わっていただきたいと思います。2way Vertical Rackも木製のしっかりとした作りとなっており、これらの組み合わせをDAWと一緒に使用するのは、かなり上質で楽しい作業になるのは間違いないでしょう。

▲右はShelford 5051のリア・パネルで、上からS/C INSERT SND/RET(フォーン)、LINK OUT/IN(フォーン)、LINE 1(XLR)、LINE 2(XLR)、OUTPUT(XLR)、POWER。左がShelford 5052のリア・パネルで、上からMIC IN(XLR)、LINE IN(XLR)、MIC OUT(XLR)、EQ IN(XLR)、MAIN OUT(XLR)、POWER ▲右はShelford 5051のリア・パネルで、上からS/C INSERT SND/RET(フォーン)、LINK OUT/IN(フォーン)、LINE 1(XLR)、LINE 2(XLR)、OUTPUT(XLR)、POWER。左がShelford 50
52のリア・パネルで、上からMIC IN(XLR)、LINE IN(XLR)、MIC OUT(XLR)、EQ IN(XLR)、MAIN OUT(XLR)、POWER
▲電源ユニットは写真の5way Power Supplyのほか、25way Power Supply(オープン・プライス:市場予想価格420,000円前後)もラインナップ ▲電源ユニットは写真の5way Power Supplyのほか、25way Power Supply(オープン・プライス:市場予想価格420,000円前後)もラインナップ

サウンド&レコーディング・マガジン 2015年7月号より)

RUPERT NEVE DESIGNS
Shelford Series
Shelford 5051、Shelford 5052/共にオープン・プライス(市場予想価格:290,000円前後)
Shelford 5051 ▪最大入力:+24.5dBu(20Hz〜20kHz) ▪最大出力:+24.5dBu(20Hz〜20kHz) ▪全高調波歪率:0.007%@20Hz ▪外形寸法:44(W)×241(H)×229(D)mm ▪重量:約3.2kg Shelford 5052 ▪最大入力:+25dBu(20Hz〜20kHz) ▪最大出力:+25dBu(20Hz〜20kHz) ▪外形寸法:44(W)×241(H)×229(D)mm ▪重量:約3.2kg