
25種類のサンプリング波形と
25種類のシンセ音を合成して生成
動作環境はMac OS X 10.7以降とWindows 7/8の両プラットフォームに対応。公称40GBのライブラリーとなっていますが、可逆圧縮のストリーミング・タイプなので、実データの容量は20GB程度で収まっています。NATIVE INSTRUMENT Kontakt 5.3.1以上または無償のKontakt Playerのライブラリーとして動作し、スタンドアローンのほか、VST、Audio Units、RTAS、AAXに対応しています。
それでは内容を見ていきましょう。Signalは2系統のオシレーター部にそれぞれ独立した2系統の波形パターン(Main Rhythm/2nd Rhythmと呼ぶ)を合成することで音色を形成します。つまり、最終的に独立4系統の波形をレイヤーしながら演奏することができるのです。
音色の大本になる2系統のオシレーター部には25種類のサンプリング波形と25種類のシンセ音が用意されています。サンプリング波形はピアノ、エレピ、ハープ、チェロ、ギターなどで、シンセ音はサイン波、ノコギリ波などのベーシックなものからダーティ・モーション、デチューン・ポリなど最近の音楽事情にフィットしそうな実用的なものまで。これらの中から2種類を選択し任意でバランスを変えることはもちろん、ADSR、ピッチ・エンベロープも設定可能となっています。例えばピアノを音源として選択し単純に4分音符で音を鳴らすと“ポーン”ですが、これに1st Rhythmで16分音符のパルス波を選択して演奏すると“ポポポポ”となります。加えられる波形パターンはパルス波以外にも、サイン波やノコギリ波からかなり複雑なものまで45種類を用意(画面①)。45種類では足りないと思う方もいるかもしれませんが、テンポにシンクした状態で8小節から64分音符の3連符まで25段階で速度変更できるのでご安心を。

フィルター/エフェクトを多数内蔵し
自由度の高いシンセサイズが可能
Signalのパルス・エンジンのキモである“Main Rhythm”“2nd Rhythm”は、無段階にレイヤーすることができます。無段階の調整項目の中にボリューム、パン、フィルター(ローパス、ハイパス、ダフト、バンドパス、ノッチ)、レゾナンス、チューブ・ドライブなども含まれているのです。つまり1音に対して2種類の発音設定、音色設定をレイヤーすることになります。ここまでを一つのパルス・エンジンとし、これを2系統独立して搭載しているので、期待できる音作りの幅の広さには“まるで宇宙”を感じずにはいられません。
さらにエフェクトとしてEQ、コンプレッサー、ローファイ、テープ・サチュレーション、オーバードライブ、ディレイ、リバーブを各エンジンごと、そしてマスター出力段に加えることができます。各エンジン部のフラッターやステレオ拡張、マスター段のフェイザー、コーラスなど個別に用意されたものもあります(画面②)。

自由度が高いと同時にかなり複雑なシンセサイズを可能にしているSignalですが、筆者のようにごくごく簡単に使用したいユーザーのために高機能ブラウザーも搭載されています。数日使っただけですがEDMからアンビエント系までありとあらゆるジャンルに対応できそうなプリセットを500種類用意。これらをシンプル(もしくは複雑)、明るい(もしくは暗い)、クリエイティブ、Fat、ダーティなどのキーワードで絞り込みできるようになっています。求めるサウンドが明確でない場合の大きな助けになることと思いますし、ここから思いもよらないような楽曲のモチーフを得ることもあるでしょう。
さらにこのプリセットには各4系統のマクロが設定されており、先のリズム、フィルター、エフェクトなどを簡単に、かつ包括的に操作することができます。ここが筆者の思うOUTPUTの面白いところで、簡単にカッコいい音を得るために考え抜かれた“クリエイティブな設定”が提供されています。
複雑さは無限大ですが、インターフェースはシンプルなので実際に使ってみると扱いはとても簡単です。ドラム、ベース、パッド、リフ、メロディで構成された簡単な楽曲があるとした場合、Signalが担当しうるのはパッドとリフだと思います。最初パッドだったものがだんだんリフを演奏し始めるなんていうような、2パート間を行ったり来たりもできるので有機的なサウンドを作り出すことが簡単にできます。ただのパッド音、シンセ・リフで片付けたくないとき、これからのクリエイティブの助けとなること請け合いです。
(サウンド&レコーディング・マガジン 2015年7月号より)