
GainFinderで適正な入力ゲインを設定
マルチタッチでEQカーブを調整可
TFシリーズには、マイク/ライン・イン(XLR/TRSフォーン・コンボ)の数とフェーダー構成の異なる3モデルがラインナップされている。TF5(オープン・プライス:市場予想価格500,000円前後)のマイク/ライン・インの数は32で、TF3は24、TF1(オープン・プライス:市場予想価格350,000円前後)は16。フェーダーの数はそれぞれのマイク/ライン・インの数+マスター1本で、いずれもモーターを内蔵している。ヘッド・アンプは、同社独自の“D-PRE”をリコーラブルに再設計し搭載。また新搭載の“GainFinder”機能を用いて、ギター・チューナーのような画面で各入力の適正なゲインを導き出せるのも便利だ。バス構成はメイン(ステレオ+サブウーファー)、20AUX(8モノラル+6ステレオ)、DCAグループの数は8で、このサイズのミキサーとしては十分な数。出力端子は全機種共通で、16ライン・アウト(XLR)となっている。
オペレーションは、7インチのタッチ・パネルを中心に行う。シーンの呼び出しをはじめ、各チャンネルのパラメーターやパッチなどを指で操る形だ。まずはインプット1〜8のチャンネル・ストリップが表示されるホーム画面を左右スワイプすると、表示チャンネルを切り替えられる。また上下スワイプで各ストリップ下部のAUXセンドを表示させたりと、スマートフォンなどと同じ要領で操作できるため親近感抜群。例えばEQなどにしても、カーブをドラッグすることで周波数やゲインを変更でき、ピンチするとQ幅の調整が行える。まさに音を指で触る感覚だ。
3つのモードを持つ1-knob EQ
内蔵リバーブやディレイは広がり方が魅力
さて幾らタッチ・パネルが快適でも、限られた時間内に音作りを行うには、豊富な知識と経験が必要。それをサポートしてくれるのが冒頭でも触れた1-knobCOMP(写真①)や1-knob EQ、“QuickPro Presets”といった機能だ。

まず1-knob COMPは、TFシリーズではタッチ・パネルにパラメーターの変化が表示される仕様。ノブの回し具合でスレッショルドやレシオ、ゲインが同時に変わっていくので、内部の設定を垣間見られて感動した。1-knob EQは、インプット/アウトプットで別のモードを搭載。インプットには、あらかじめ設定されたEQカーブの周波数を固定しつつ各バンドのゲインを上げ下げできる“Intensityモード”、そして明りょうな歌声を作り出す“Vocalモード”が備わっている。とりわけVocalモードの動きが興味深く、ノブを回し始めるとハイパス・フィルターが入ってローがカットされていき、次第に中高域が持ち上がる。普段行っているボーカルEQそのものの流れでカーブが動くので、かけ過ぎたと思えばノブを元に戻せばOKだ。アウトプットには、最適な音質を保ちつつ音圧を上げられる“Loudnessモード”がスタンバイ。QuickPro Presetsは、AUDIO-TECHNICA/SENNHEISER/SHUREといったマイク・メーカーや、エンジニアとの協業によるチャンネル用プリセット。EQやダイナミクスなどを統合したものなので、すぐに音作りが始められる。
ミキサーとしての音質は、周波数バランスの良い自然なサウンド。またEQやダイナミクスのかかり具合、内蔵リバーブやディレイの広がり方などが非常に素晴らしい。新機能だけに注力したのではなく音質面も申し分ないので、ミキシングがスムーズに、そして楽しく行えた。TFシリーズは3モデルの中から予算や規模に応じて選べるので、ミキサーを導入予定の方には検討をお勧めする。

(サウンド&レコーディング・マガジン 2015年7月号より)