「IBASSO AUDIO D Zero MK2」製品レビュー:24ビット/96kHzに対応の小型USB DAC/ヘッドフォン・アンプ

IBASSO AUDIOD Zero MK2
自分は普段、ヘッドフォンやイヤホンで音楽を聴くことが少ないのですが、最近はミックスの仕上がりをヘッドフォンやイヤホンでチェックされることが多いので、ミキシング時に使うことが増えてきました。今回レビューするのは、コンパクトなUSB DAC/アナログ・ヘッドフォン・アンプのIBASSO AUDIO D Zero MK2。初めて見たときは、55(W)×11(H)×101(D)mmというクレジット・カードのようなコンパクト・サイズにびっくりしました。重量は95gで、普段使っているiPhone 6よりもずっと軽いです。こうした機器は、大きかったり重かったりすると持つのが面倒くさくなって使わなくなる場合もあるので、小型軽量設計は良いことですね。サイド・パネルのスイッチで、DAC+ヘッドフォン・アンプ/単体のヘッドフォン・アンプの2モードを切り替えて使える本機。どんな音を聴かせてくれるのか、早速チェックしてみましょう。

L/Rchに個別のDAコンバーターを搭載
アンプ部はオペアンプとバッファーで構成

D Zero MK2はMac/Windows/iOS/AndroidとUSB接続することで、DAC+ヘッドフォン・アンプとして使用可能。APPLE iPhoneやiPadとつなぐ際はApple iPad Camera Connection Kit(別売)、Androidデバイスとの接続には付属のOTGケーブルが必要になります。D/A部にはCIRRUS LOGICのDAコンバーターWM8740を2基備え、L/Rchを個別に処理することでダイナミック・レンジを拡大。対応ビット&サンプリング・レートは、最高24ビット/96kHzです。

ヘッドフォン・アンプ部はオペアンプとバッファーで構成。単体のヘッドフォン・アンプとして使うときは、サイド・パネルのAUXイン(ライン・レベル)から音声を入力します。このAUXインの隣には、ヘッドフォン端子の音量ダイアルがスタンバイ(写真①)。もう一方のサイド・パネルにあるインピーダンス切り替えスイッチ(Hi/Lo)と組み合わせて、さまざまな音量に設定できます(写真②)。

SIDE2 ▲写真① サイド・パネルの右側には、パネル左に位置するヘッドフォン端子のための音量ダイアルが備えられている。中央にはAUXイン/アウト(ステレオ・ミニ)とモード切り替えスイッチをレイアウト
SIDE1 ▲写真② もう一方のサイド・パネルの右側には、インピーダンス切り替えスイッチ(Hi/Lo)を装備。そのほかUSBオーディオ・インや充電モードのOn/Offスイッチが配置されている

なお先述のAUXインは、DAC+ヘッドフォン・アンプ・モード時にはAUXアウトとなります。DAC+ヘッドフォン・アンプと単体ヘッドフォン・アンプの各モードでは内蔵リチウム電池の持続時間も異なり、前者は連続10時間、後者は連続120時間。やはりDACは電力を消費しますが、それでも10時間持てば問題無いでしょう。

パンチと輪郭のあるサウンド
ビット&レートの違いがよく分かる音質

まずはMacにつなぎ、DAC+ヘッドフォン・アンプとして使ってみました。使用した楽曲データは16ビット/44.1kHzのAACファイル。iPhone 6にも同じデータを入れていたので両者を聴き比べたところ、iPhone 6の音圧の低さがハッキリと分かりました。低域/高域共に伸びが無く、音が丸いのです。その点、D Zero MK2のサウンドは膜が取れたような感じでパンチがありますね。周波数レンジもワイドです。

この音の違いは両者のアンプ部の差によるものかと思い、本機のAUXインにiPhone 6のヘッドフォン・アウトを入力してみました。いわゆる単体のヘッドフォン・アンプとして使ってみたわけです。すると音の輪郭が見え始め、パワー感もアップ。電車の中でヘッドフォンから音漏れしている人を見かけますが、このようにしっかりと音圧を得られるヘッドフォン・アンプを併用することで、音量を下げられるのではないでしょうか。

本機は24ビット/96kHzに対応しているので、その辺りもチェックしてみました。ちょうどマスタリングを終えたファイルがあり、CD用の16ビット/44.1kHz、映像用の24ビット/48kHz、ハイレゾ音源用の24ビット/96kHzの3種類のファイルを用意していたので、AVID Pro Toolsで再生し聴いてみました。ビット&サンプリング・レートの高いものから順に試聴していくと、低くなるにつれて高域の伸びが減り、ザラつきが増していくのが分かります。きちんと聴き分けられる性能は優秀ですね。

ここで試しに、AUXアウトをスピーカーにつないでチェックしてみました。Macのオーディオ・アウトをスピーカーに接続するより良いのはもちろんで、出音への印象は先ほどと同じく輪郭がはっきりするというもの。個人的には中域の聴こえ方に良い印象を持ちました。いつも使っているヘッドフォン・アンプは据え置き型で、価格は本機よりもやや高いのですが、ヘッドフォンの音質にはあまり違いを感じませんでした。スピーカーを使用すると本機の方がやや奥行きに欠ける印象でしたが、そこは価格の差でしょう。本機の音は低域も高域もよく伸びているので、この価格でそれだけできるのはすごいと思います。

総合的には、サイズも含め持ち運び用のDAC/ヘッドフォン・アンプという印象のD Zero MK2。外出先でもハイレゾ環境を整えることができるので、導入を検討してみる価値がありそうです。

HUZOKUHIN ▲付属品。上からOTGケーブル、ステレオ・ミニのアナログ・ケーブル、USBケーブル

サウンド&レコーディング・マガジン 2015年5・6月号より)

IBASSO AUDIO
D Zero MK2
オープン・プライス(市場予想価格:18,500円前後)
▪周波数特性:DAコンバーター/17Hz〜20kHz(±1dB)、アンプ/17Hz〜100kHz(±1dB)▪S/N:108dB(DAコンバーター)、102dB(アンプ)▪ビット&レート:24ビット/96kHz▪ヘッドフォン・インピーダンス:8〜300Ω▪最大出力:120mW+120mW(L/Rchのアンプ合計/インピーダンス16Ω時) ▪電源:内蔵リチウム・ポリマー・バッテリー▪対応OS:Mac/Windows/iOS/Android 4.1以降▪外形寸法:55(W)×11(H)×101(D)mm▪重量:95g(突起部含まず)