
L/Rchに個別のDAコンバーターを搭載
アンプ部はオペアンプとバッファーで構成
D Zero MK2はMac/Windows/iOS/AndroidとUSB接続することで、DAC+ヘッドフォン・アンプとして使用可能。APPLE iPhoneやiPadとつなぐ際はApple iPad Camera Connection Kit(別売)、Androidデバイスとの接続には付属のOTGケーブルが必要になります。D/A部にはCIRRUS LOGICのDAコンバーターWM8740を2基備え、L/Rchを個別に処理することでダイナミック・レンジを拡大。対応ビット&サンプリング・レートは、最高24ビット/96kHzです。
ヘッドフォン・アンプ部はオペアンプとバッファーで構成。単体のヘッドフォン・アンプとして使うときは、サイド・パネルのAUXイン(ライン・レベル)から音声を入力します。このAUXインの隣には、ヘッドフォン端子の音量ダイアルがスタンバイ(写真①)。もう一方のサイド・パネルにあるインピーダンス切り替えスイッチ(Hi/Lo)と組み合わせて、さまざまな音量に設定できます(写真②)。


なお先述のAUXインは、DAC+ヘッドフォン・アンプ・モード時にはAUXアウトとなります。DAC+ヘッドフォン・アンプと単体ヘッドフォン・アンプの各モードでは内蔵リチウム電池の持続時間も異なり、前者は連続10時間、後者は連続120時間。やはりDACは電力を消費しますが、それでも10時間持てば問題無いでしょう。
パンチと輪郭のあるサウンド
ビット&レートの違いがよく分かる音質
まずはMacにつなぎ、DAC+ヘッドフォン・アンプとして使ってみました。使用した楽曲データは16ビット/44.1kHzのAACファイル。iPhone 6にも同じデータを入れていたので両者を聴き比べたところ、iPhone 6の音圧の低さがハッキリと分かりました。低域/高域共に伸びが無く、音が丸いのです。その点、D Zero MK2のサウンドは膜が取れたような感じでパンチがありますね。周波数レンジもワイドです。
この音の違いは両者のアンプ部の差によるものかと思い、本機のAUXインにiPhone 6のヘッドフォン・アウトを入力してみました。いわゆる単体のヘッドフォン・アンプとして使ってみたわけです。すると音の輪郭が見え始め、パワー感もアップ。電車の中でヘッドフォンから音漏れしている人を見かけますが、このようにしっかりと音圧を得られるヘッドフォン・アンプを併用することで、音量を下げられるのではないでしょうか。
本機は24ビット/96kHzに対応しているので、その辺りもチェックしてみました。ちょうどマスタリングを終えたファイルがあり、CD用の16ビット/44.1kHz、映像用の24ビット/48kHz、ハイレゾ音源用の24ビット/96kHzの3種類のファイルを用意していたので、AVID Pro Toolsで再生し聴いてみました。ビット&サンプリング・レートの高いものから順に試聴していくと、低くなるにつれて高域の伸びが減り、ザラつきが増していくのが分かります。きちんと聴き分けられる性能は優秀ですね。
ここで試しに、AUXアウトをスピーカーにつないでチェックしてみました。Macのオーディオ・アウトをスピーカーに接続するより良いのはもちろんで、出音への印象は先ほどと同じく輪郭がはっきりするというもの。個人的には中域の聴こえ方に良い印象を持ちました。いつも使っているヘッドフォン・アンプは据え置き型で、価格は本機よりもやや高いのですが、ヘッドフォンの音質にはあまり違いを感じませんでした。スピーカーを使用すると本機の方がやや奥行きに欠ける印象でしたが、そこは価格の差でしょう。本機の音は低域も高域もよく伸びているので、この価格でそれだけできるのはすごいと思います。
総合的には、サイズも含め持ち運び用のDAC/ヘッドフォン・アンプという印象のD Zero MK2。外出先でもハイレゾ環境を整えることができるので、導入を検討してみる価値がありそうです。

(サウンド&レコーディング・マガジン 2015年5・6月号より)