
新開発のDSPエンジン“S1LKi”を採用
PCMもDSDに変換してDAコンバート
Super UAは新開発のDSPエンジン“S1LKi”を採用したUSBオーディオI/Oです。S1LKiでまず特筆すべきは、PCMに加えてDSD(再生のみ)に対応している点。そのスペックですが、PCMは最高で32ビット/352.8kHzをサポート。32ビット浮動小数点で動作するDAWの信号をそのまま受けられるということで、音質への期待が高まります。さらに本機はDAWから受け取ったPCMデータをいったん176.4/192kHzにアップ・サンプリングし、1ビット/2.8MHzのDSDに変換した後にDAコンバートを行います。DSDに関しては、2.8MHzのデータはネイティブで再生が可能ですが、5.6MHzのものは再生時に2.8MHzにダウン・コンバートされます。
ボディの仕上げは素晴らしいの一言。高級感のあるアルミ一体化ボディを採用し、中央に大きなコントロール・ノブとレベル・メーターを装備。MIC入力とLINE OUT Bはリア・パネルのコネクターよりブレイクアウト・ボックスにつながる仕様で、デスクに置いてもケーブルが目立たず、スタイリッシュに使うことができます。
付属のコントロール・ソフト“Control Panel”は左にマイク入力、中央にゼロ・レイテンシー・モニタリングのためのダイレクト・ミキサー、右がアウトプットというレイアウト。ここで注意すべきポイントは、アウトプットの再生モード(2ch/6ch)の切り替えです。実は先述した1ビットDSDに変換してのDAコンバートは、2chアウト時のみ有効なのです。6chを選択するとPHONESとLINE OUT A/Bが個別に動作し、DAWのパラアウトが可能になります。ただし、この場合はPCMのままDAコンバートされます。2chアウト時はモニター・スピーカーの切り替えなどができます。
音像に立体感があり
すべての楽器が引き締まって聴こえる
音質の評価ですが、まずお気に入りのCDをAVID Pro Tools 11に取り込み、44.1kHzで再生してみました。アウトプットの2ch/6chを切り替えて聴き比べてみると、2ch(1ビットDSDに変換してD/A)の方が圧倒的に良いです! 何より音像に立体感があり、すべての楽器が引き締まっています。6ch(PCM)にすると、それがスピーカーの左右に広がった感じになります。
次に2chアウトの状態でHD I/Oと聴き比べてみましたが、正直がく然としました。Super UAは全く問題無いどころか、聴き方によってはHD I/Oの音を上回っているのです。HD I/Oは44.1kHzの音をDAコンバート後のアナログ回路でよく作り込んだ印象。立体感があって良い音なのですが、少しだけ平面的にバラけて聴こえるときがあり、僅差でSuper UAの勝ちです。
次は32ビット/96kHzの自分のミックスで比較してみましたが、こちらはHD I/Oに軍配が上がりました。低音の太さと高域の抜け、天井の高さがSuper UAはやや控えめに聴こえます。が、価格差を考えればかなり健闘していると言えます。
続いてA/Dもチェック。NEUMANN U87AIで収音したボーカル/ギターは44.1kHz/96kHzのどちらも抜けがよく、シルキーな高域が楽しめました。録音はPCMなのでDAコンバート時ほどのサプライズはありませんでしたが、十分な音質だと思います。
Super UAは昨今ありがちなiOS入力などを備えていませんが、ド直球な音質一本勝負のI/Oで、大好きです。あらためて言いますが、1ビットDSDに変換しての再生においてはHD I/Oに負けていません。良い音でミックスしたいのであれば、“絶対に買い”の逸品と言えます。


(サウンド&レコーディング・マガジン 2015年4月号より)