「ZOOM TAC-8」製品レビュー:マイクプリ8基搭載でマルチ録音できるThunderboltオーディオI/O

ZOOMTAC-8
ハンディ・レコーダーやAPPLE iPhoneなどに装着して使うIQマイク・シリーズなど、ユニークで実用性の高い機材を多数リリースしているZOOM。Thunderbolt接続のオーディオI/Oにおいても、TAC-2/TAC-2Rなど高品位で手ごろな価格の製品が注目を集めており、今回紹介するTAC-8も期待できそうです。早速チェックしていきましょう。

USB3.0の2倍以上の転送速度で
超低レイテンシーを実感

本機はThunderbolt接続のMac専用オーディオI/Oです。まず注目したいのが豊富な入出力で、アナログ8イン(XLR/TRSフォーン・コンボ)/10アウト(TRSフォーン)を用意しています。また、8イン/8アウトのADATオプティカル端子、2イン/2アウトのS/P DIFコアキシャルというデジタル入出力も合わせると最大18イン/20アウトに対応。定評のある同社のハンディ・レコーダーHシリーズで培った高性能マイクプリが、8ch分搭載されているのもうれしいところでしょう。ch1/2にはHi-Z切り替えスイッチも備えているので、ギターとベースを直接挿してレコーディングすることも可能です。そしてワード・クロック入出力を装備している点からは、本機がプロもターゲットにした製品であることが伺えますね。

次に注目したいのはThunderbolt接続の魅力について。USB3.0と比較しても2倍以上の転送スピードを誇るThunderbolt接続によって“超低レイテンシー”を実現し、快適な録音環境を得ることができます。今回はAPPLE MacBook ProにTAC-8をつなぎ、DAWソフトにABLETON Liveを用いたシステムでテストを敢行。エレキギターをライン入力し、どこまでレイテンシーを小さくできるか試しました。サンプリング・レートを96kHz、バッファー・サイズを64サンプルに設定したところ、入出力レイテンシーが1.33ms(!)の状態で問題なく動作したのにはうれしくなってしまいました。さらに重めのアンプ・シミュレーター・プラグインをインサートしてチェックを続行。128サンプルという設定でも入出力レイテンシーは2.67msで、業務機に匹敵するレベルです。ダイレクト・モニタリングを使用せずともパンチ・イン/アウトが手軽に行えるため、ダビングを多用する人にとっては大きなメリットとなるでしょう(ダイレクト・モニタリング機能も使用可能)。

付属の専用ミキサー・ソフトTAC-8 MixEfxも多彩な機能を備えています。まず、TAC-8内部の20chのバーチャルなバス・アウトを物理的なアウトプットへアサインできること。バスを各アウトに一つずつ割り当ててパラアウトとして使用できるほか、楽器ごとにバスに振り分けてバランスの異なる複数のモニター・アウトを用意することも可能です。今回の録音時もDAWで処理したプラグインのサウンドに少しだけダイレクト音を加えて演奏しやすいモニター環境を作ってみました。レイテンシーのストレスに悩まされることなく録音できたのも好印象です。

TAC-8 MixEfxでもう一つ注目すべき点は、ループバック機能が備わっていることでしょう。これはDAWやAPPLE iTunesなどのソフトウェアの音声出力とTAC-8の入力信号をミックスして再度DAWに戻す機能で、動画配信などを一台のコンピューターで行うには必須とも言える機能です。複数のマイクを使った配信もミキサーを使わずに行うことができ、内蔵DSPエフェクトをTAC-8 MixEfxで操作して要所でエコーをかけるといったこともできます。

4倍のアップ・サンプリングで内部処理
音質は脚色が少なくフラット

高音質な録音を実現させるために、AD/DA変換時に4倍のアップ・サンプリング機能を用いて処理されていることも大きなポイントです。44.1/48kHzのデータもTAC-8内部では176.4/192kHzとして扱われることで、エイリアシング・ノイズの無いサウンドが得られます。肝心の音質については入力、出力、ヘッドフォン・モニターともに脚色の少ないフラットなキャラクターで、良い意味で“仕事がしやすい誠実な音”だと感じました。そしてこれだけの機能を備えたTAC-8が、何とこの価格という事実には、正直驚きです!!

ハイサンプリング・レートのマルチチャンネル録音を望むユーザーにとって、TAC-8は現時点で間違いなくベスト・チョイスです。正直に言ってお借りしたテスト機を“返却したくないなぁ”というのが今の筆者の本音であります。

▲リア・パネル。左から電源スイッチ、Thunderbolt端子、STAND ALONE切り替えスイッチ(コンピューターと接続せず8chのマイク・プリアンプ、AD/DAコンバーターとして使用可)、S/P DIF入出力(コアキシャル)、MIDI OUT/IN、ワード・クロック入出力(BNC)、ADAT入出力(オプティカル)、MAIN OUTPUT×1系統(TRSフォーン)、LINE OUTPUT×8(TRSフォーン) ▲リア・パネル。左から電源スイッチ、Thunderbolt端子、STAND ALONE切り替えスイッチ(コンピューターと接続せず8chのマイク・プリアンプ、AD/DAコンバーターとして使用可)、S/P DIF入出力(コアキシャル)、MIDI OUT/IN、ワード・クロック入出力(BNC)、ADAT入出力(オプティカル)、MAIN OUTPUT×1系統(TRSフォーン)、LINE OUTPUT×8(TRSフォーン)

サウンド&レコーディング・マガジン 2015年3月号より)

ZOOM
TAC-8
オープン・プライス (市場予想価格:67,000円前後)
▪接続タイプ:Thunderbolt ▪入出力数:アナログ8イン/10アウト(デジタルを含むと最大18イン/20アウト) ▪ビット&レート:最高24ビット/192kHz ▪ダイナミック・レンジ:120dB(AD/DA) ▪電源:ACアダプター ▪外形寸法:482.6(W)×46.03(H)×157.65(D)mm ▪重量:2.01kg 【REQUIREMENTS】 ▪Mac:OS X 10.8.5以降