
一方のスピーカーの内蔵アンプで
両方のスピーカーを駆動する仕組み
CR4の外形寸法は156(W)×224(H)×185(D)mmと小ぶりで、パソコン・デスクに置いて使用するイメージ。コンパクトながら、設置や使用感のためによく考えられた幾つかの特徴を有しています。まずは左右のスピーカーのためのパワー・アンプが、片方のエンクロージャーにまとめて搭載されている点。片方がパワード・スピーカー、他方がパッシブ・スピーカーとなっており、両者をスピーカー・ケーブルで結線し、パワード側の出力50WのクラスABアンプでパッシブ側も鳴らすという珍しいスタイルを採っています。
オーディオの入力端子はパワード側にまとめて装備されており、メイン入力としてTRSフォーンとRCAピンのライン・インL/Rを用意。電源スイッチや電源ケーブルも当然パワード側にあるので、電源口が1つで済み、自宅などでの“電源口取り合い合戦”に優しい仕様となっています。そのほかポジション・セレクト・スイッチが装備されており、パワード・スピーカーをLch用に使うか、Rch用にするかを切り替えることが可能。ケーブルの取り回しがオーディオ/電源共にパワード側だけなので、スイッチを使用すれば環境に合わせて都合の良い場所を選んで設置できます。これはなかなか便利だと思います。
パワード側の前面にはノブが付いていて、モニター音量をコントロールすることが可能。左にカチッというまで回し切ると、モニターOFFになります。同じく前面には、ステレオ・ミニのヘッドフォン端子とAUXインが配置。ヘッドフォン端子にヘッドフォンやイヤホンを接続するとスピーカーの出音はOFFになり、先のノブでヘッドフォン音量をコントロールできるようになります。一方AUXインは、スマートフォンや携帯音楽プレーヤーを接続し、それらの音を本機で鳴らすための端子。ここから入力した音もノブで音量調整することができ、ヘッドフォンをつなぐとスピーカーの出音がカットされ、ヘッドフォンのみでモニターできるようになります。
ちょっと面白いと思ったのは、背面の2系統のインプットと前面のAUXインがすべて同時に生きていて、一度に音を入力するとミックスされて聴こえるところ。各インプットにプレーヤーをつないでおけば、いつでもスピーカーとヘッドフォンの好きな方でモニターできます。そう考えると、本機は3系統の簡易的なモニター・ミキサーも兼ねていると言えますね。長年ミキサーを作っているMACKIE.ならではの親切設計で、とても素晴らしいと思います。
バランスの良いサウンドで
70〜100Hz辺りの低域もよく出る
続いては出音をチェックしてみました。周波数特性は70Hz〜20kHzとなっていて、背面バスレフで低域を調整しています。一聴してみると、やはり私が気に入った最近のMACKIE.のバランスの良さを感じました。ウーファーが小さいためローエンドには限界がありますが、70〜100Hzくらいの低域はしっかりと出ているため、サイズに見合った量感で不足は感じません。ROLAND TR-808のキックなども、YAMAHA NS-10Mよりよく鳴ります。左右で構造が違うスピーカー、という部分が少し心配だったのですが、しっかり調整されているのか位相の乱れなども感じませんでした。周波数的に目立ったピーク感も無いので、中域の張り出しという意味ではおとなしいのかもしれませんが、それがバランス良く聴こえる要因なのでしょう。ソースを選ばず、幅広く使えるスピーカーだと思います。高域もしっかりと出るため、最近の超ワイド・レンジなEDMなどにも対応。ラジカセよりは良いモニター機器が欲しいけれど、あまり大きな音が出せない環境などには、利便性も含めてうってつけでしょう。

(サウンド&レコーディング・マガジン 2015年1月号より)