
4イン/6アウトのオーディオ入出力
マイクプリも2基搭載
まずはコントロール・サーフェスとしての外観、操作、機能を大まかに説明していこう。16本のタッチセンス・フェーダーそれぞれの横に、10セグメントのLEDレベル・メーターを装備。ソロ、ミュート、チャンネル選択(Sel)、Recレディ、オートメーション・キーを備える。その上部にパン/プラグイン・パラメーターなどを扱う32基のタッチセンス・ロータリー・エンコーダーと、高解像度OLEDディスプレイを実装。ここにはトラック名と番号、詳細なメーター値、パラメーター名と値、オートメーション・モードなどが表示できる。大きなトップ・パネルに対して高さは低く、シャープな印象だ。コンピューターとの接続はイーサーネットで行い、プロトコルにはEUCONを採用している。さらに本機はAVB接続のCore Audio対応オーディオ・インターフェースにもなり、XLRでのマイク/ライン入力×2、TRSフォーンのライン入力×2、XLRのライン出力×2、TRSフォーンのライン出力×2、ヘッドフォン出力で計4イン/6アウト。現在のところ24ビット/48kHzに限定され、またコンピューターも比較的新しいものが必要となるが(現在はThunderbolt搭載Macが対応)、例えば普段はPro Tools|HDXを使っているユーザーが、ノート・パソコンと本機を持ち出して使うといった用途が想定できるだろう。今回のテストは、Macと接続して行った。設定などはEuControlソフトウェアをインストールして行う。新しいバージョン3.2が対応しており、以前のバージョンのEUCONに比べて、動作の安定性が向上したそうだ。
繊細な操作が可能なフェーダー
プラグイン・パラメーターも展開可能
まずはPro Toolsのコントローラーとして使用してみることにしよう。ミックス中のセッションを開いてまず感じたのが、フェーダー動作の滑らかさ。軽いタッチで操作できるので、繊細なレベル調整が自然に行え、非常に心地が良い。また、選択したチャンネルのフェーダー位置をモーターでリコールする際のレスポンスが良く、動作音も静かで高級感がある。フェーダー・キャップを観察してみると、従来のノブの形状と比べて肉抜きされ軽く作られている。また、銅メッキの上に仕上げのメッキを施すなどタッチセンスのレスポンス正確さにつながる導電性も考慮されているようだ。フェーダー値の正確性も確認してみたが、DAW上のフェーダー値とわずかにずれる問題などは感じられなかった。またフェーダー横のレベル・メーターは視認性が良く、これがあると非常に助かる。ただ、Pro Toolsの画面ではフェーダーの左にメーターがあるのに対し、Pro Tools|S3は右にあるため、最初のうちは何度か隣のフェーダーを触ってしまった。特徴的な32のロータリー・エンコーダーは、まずInput、EQ、 Pan、 Dynといったカテゴリーがアサインされ、明快にアクセスが可能。任意のノブを押し込むと奥の階層に入る。さらに選択したチャンネルでInキーを押すことで、プラグインのパラメーターまでアクセス可能となる。横16ch分の操作ノブとOLEDディスプレイにずらりとパラメーター名と値が表示されるのだが、何せ16もあるため、目的のパラメーターを目の前に表示させることが容易だ。横に16ch分のディスプレイが並ぶという本機のスタイルは視認しやすく、非常に便利だと感じた。32基のロータリー・エンコーダーでパラメーターを触ってみても、非常に滑らかな動作で心地よい。ノブのトルク感、レスポンスが良いため、アウトボードを操作しているときの“音の変化を感じながら調整する感覚”に近く、少々使い飽きたプラグインであっても使用感が異なって非常に面白い。また、下段の16基にアサインされたパラメーターはFlipキーを押すとフェーダーと入れ替わる。つまりフェーダーでプラグイン・エフェクトのパラメーターの操作が可能だ。元の階層に戻ったり、別のチャンネルへアクセスするときは右側のBackで戻り、再びInを押すだけ。Pro Tools|S3上で任意のパラメーターをフェーダーに展開するのに必要な操作ステップが少ないのはうれしい。操作手順も違和感が少なく、操作の習得が必要という感じもしなかった。またトランスポートは、標準では右下のタッチ・ストリップにアサインされている。視覚的にはほとんど主張が無いが、トランスポートはコンピューターのキーボードで操作したい人も多いと思うので、合理的だと感じる。
Pro Tools以外のDAWにも対応
複雑な設定が不要で安定動作
続いて、Pro Tools以外のEUCON対応DAWソフトとしてAPPLE Logic Pro Xでもテストした。ロータリー・エンコーダーはミキサーのインプットやパンといった基本パラメーターに使えるのはもちろん、プラグインのアサインや操作も簡単に行えた。ソフト・シンセをメーカー名/プラグイン名で探し、インサート。Inキーでパラメーターにアクセスする。シンセのハイパス・フィルターのカットオフ周波数でひとしきり遊んだ後に、Backを押して今度はエフェクトをインサート。右手でEQやコンプを操作しながら、そこで変化した音量を左手のフェーダーでコントロールする、といったことができてしまう。ちなみに、先述のEuControlをインストールした以外は特に何の準備もせずLogic Pro Xを起動したのだが、自動でコントロール・サーフェスとして認識された。その後もLogic Pro XがPro Tools|S3を見失うことは無く、終始安定していた。
モニター・コントローラー機能は
1dBステップでの調製が可能
先述したようにPro Tools|S3はイーサーネット・ケーブルを介したAVBでコンピューターとつながり、オーディオ・インターフェースとして機能する。この機能に関しては筆者の環境では使用できなかったので、AVIDのオフィスを訪問して簡易的なテストをした。オーディオ関係の設定はロータリー・エンコーダーの上段右側に展開できる。ここではマイクプリのゲインやファンタム電源オン/オフ、−20dB PADといったインプット系(写真①)と、


