光学リミッターを増幅回路前に装備
3バンドEQとFETリミッターも実装
やや青みがかったフロント・パネルに、従来通り節度を持ったツマミが整然と並ぶ。“ミュージシャンがツマミの海におぼれることなく自らのパフォーマンスに集中できるよう、信号の流れを直感的にとらえられるレイアウトにした”というメーカーの言葉通り、向かって左から右へ5ブロックに分かれた操作系は大変分かりやすい。まずハンド・ワイアード・トランス、“MANLEY IRON”からの入力信号はハイパス・フィルター(120Hz)、アッテネーターを経由してELOP(Electro-Optical-Limiter)に入り、オール・チューブのクラスAプリアンプ回路に送られる。各スイッチは押し込むことで点灯し、動作確認しやすい。Hi-Z用のDIRECT INは、プラグを挿すことで自動的にこの入力に切り替わる。背面パネルにあるDIRECT OUTはこのチューブ・セクションの後の信号を取り出している。ELOPコンプレッサーは、パネル上では左から2番目にあるが、回路では前述したようにプリアンプの増幅より前。増幅する前にある程度レベルをならし、クリッピングを極力抑えようという発想だ。レシオは3:1に固定され、アタック・タイムは5〜60ms、リリース・タイムは100ms〜1.5s。ELOPを内蔵したプリアンプ部という仕様は、同社Voxboxから受け継がれたものである。プリアンプ部からの信号はインサート・ポイントを経由し、3バンドEQに入る。High(12kHz)、Low(90Hz)はシェルビングで、可変幅は±12dB。Midは切り替えスイッチとFREQUENCYつまみにより、100Hz〜10kHzに対応。ゲイン幅は±10dBとなっている。EQから渡された信号はFETリミッターに入る。同社Slam!譲りの155μs超高速アタック・タイムと、∞:1というレシオの“Brickwallリミッター”だ。スレッショルドとリリース・タイムが調整可能。アタック・タイムが高速で固定で、リリースを速くし過ぎるとひずみを生じることがあるため、注意すべき領域にジグザグ模様がプリントされている。かかり具合は赤いLEDで確認可能。リミッターで制御された信号は最終段のOUTPUT GAINに送られ、−6dBから+4dBの範囲で調整できるので、DAWへ送るレベル管理もしやすい。そしてフロント・パネル右部にある大型のVUメーターは、電源投入時に青く点滅し、動作が安定すると点灯に変わる。スイッチを切り替えることにより、OP1=プリアンプ後のDIRECT OUTの値、OP2=MAIN OUTの値、GR=ELOPコンプのゲイン・リダクション値をそれぞれ表示する。
カラッとしたアメリカン・サウンド
ピーキーな音源も上手に受け止める
実際の音色や操作性を確認するためAKG C414 XLIIをつないでアコギ、ボーカルなどでチェック。EQやコンプ&リミッターを動作させない状態でプリアンプそのものの音色を確認すると、非常にカラッとしているというのが第一印象だった。3kHz辺りの張り出しと500Hz辺りの整理のされ方が明りょう度の高さに貢献している。高域の伸びは自然でくせが無く、低域も上手に整理されており、何もしなくともまとまりのあるヌケの良いパキッとしたアメリカン・サウンドが得られる。ELOPのかかりはナチュラルで、深めにかけてもコンプくさくならない。このコンプとチューブ・セクションのゆるやかな挙動が、ピーキーな音源も上手に受け止めてくれるので、アマチュアの方々でも録音を失敗することが少なくなるだろう。EQは3バンドともブロードなQ幅で動作するので、オーバーEQになりづらいのが好印象。最終段のリミッターもピーク時にLEDがほんのり点灯するようにセットすれば、適度なリミッティングを得た上でDAWへの入力を適正にコントロールできるだろう。これらのことにより、プロはもちろん、アマチュアの方々にとって音源からDAWへの受け渡しがこれ一台で簡単にコントロールできる、頼もしい機材だと言える。 これまで主にハイスペックなプロユース製品を世に送り出してきたMANLEY。Coreは、その遺伝子を受け継ぎながらも、より簡単かつ的確にMANLEYサウンドが得られるというコンセプトで作られたものだろう。その狙い通り、価格帯をも含め敷居が低くなったのは、ユーザーにとって喜ばしいことだと思う。