「PELUSO P-49」製品レビュー:NEUMANN M49を研究し忠実に踏襲したコンデンサー・マイク

PELUSOP-49
ビンテージ・マイクをとことん研究し、その仕様、音色、特性などを忠実に踏襲しながらも、現代の使用状況にしっかりとマッチするアイディアを盛り込んだ製品を生み出しているPELUSO。このコーナーでも同社製品である22 47、P-67などを取り上げてきたが、今回はこれまた名機として誉れ高いNEUMANN M49を基に作られたPELUSO P-49を紹介しよう。

真空管は5744WBを搭載
9パターン切り替え可能な指向性


まずは基になったM49というマイクに関しての説明をしておく。M49は、1951年、NEUMANN U47と同一のM7カプセルにマルチパターンという利便性を付加し、さらにその指向性をアンプ部に設けられたダイアルで“リモート可変”という、当時世界初の発明が盛り込まれたマイクとして誕生した。ふくよかでありながらダブつきのない低域〜中低域、NEUMANNらしい中域の張りと、控えめながら伸びのある高域という音色傾向を持ち、その太く温かみのあるサウンドは、バスドラ、ウッド・ベース、ホルンといった低音楽器、ストリングスなどのルーム・マイク、さらには男女を問わずボーカル用として使用されることが多い。さてP-49に戻りその外観に目を移してみる。PELUSOのデザイン・ルールにのっとり、クローム&マット・シルバーで統一されたボディは至ってシンプルで、うっすらと刻まれたブランド名、モデル名以外スイッチのたぐいも全く無い。M49のそれに似た形状のメッシュ・グリルに、U47のようなボディが合わせられており、現行のNEUMANN M149のボディを少し延ばしたような外観だ。内部構成は5744WBチューブにM49でも一部使われていたBV-11タイプ出力トランスを組み合わせ、M49の持つメロウなサウンドを再現しているという。付属品として無指向から双指向まで9段階に設定できるスイッチを備えた専用電源、専用ケーブル、ショック・マウント、木製マイク・ケースが用意され、そのすべてがフライト・ケースに収められている。 

豊かで身の詰まったメロウな響き
整理された低域で反応も良い


音色をチェックしてみよう。比較対象として用意したNEUMANN U87AIとともにアコギに立て、API 512Cを通して聴いてみる。ゲインはU87AIに比べて2〜3dBほど低めだが、そこは21世紀のチューブ・マイク、S/Nはトランジスター仕様のU87AIに引けを取らない。一聴して感じたのはメーカー発表通りのまさに“メロウ”な響き。派手さは無いが豊かで身の詰まった音像は、明るめにチューニングされていることの多い最近の新しい真空管マイクの中では異色だと言えよう。細かく分析してみると、低域はかなり整理されており、ブーミーな印象は全く無い。ただし、150Hz辺りが嫌み無くしっかり残っているので、どんなスピーカーで聴いても低域の物足りなさは感じない。そこから続く中低域……特に500〜700H
z辺りの膨らみが特徴的だ。この帯域は、音像のキャラクターを決定付けるキー・ポイントとなる部分なのだが、それを上手にとらえることにより、音像が持つ個性を際立たせている。このまま高域にわたって目立ったピークを持つことも無く、ハイエンドに向かい上手にロール・オフしている印象だ。7kHz辺りのギラっとした部分がU87AIに比べてかなりおとなしく、この辺りがメロウに感じる要因でもあろう。地味……と感じられることもあるのかもしれないが、ナチュラルかつスムーズととらえる方が賢明だと感じた。次にマイクプリをRUPERT NEVE DESIGNS Portico 5032に替えて男性ボーカルでチェックしてみる。イタズラにチューニングされていない高域のおかげか、子音の収まりがよく、現状のDAWでは避けて通れないハイエンドの荒さも収まりが良く聴きやすい。中低域の充実っぷりは声の太さにつながり、整理された低域のおかげか、音程の低い部分でも反応よく声をとらえてくれるのは好印象だった。正直なところ、冒頭で紹介したM49のサウンド・キャラクターとは、ローンチから60年以上を経てビンテージとなってしまったM49のざっくりとした印象なのだが、このP-49にはそのビンテージM49サウンドをしっかり研究した上で忠実に踏襲している印象がある。このような特性からかんがみるに、M49同様ウッド・ベースなどの低音楽器、そして各種ルーム・マイクとしてはもちろんのこと、読者の方々の収録シチュエーションを想定すると、エレアコのようなラインの音色を重視するあまり生音がやや細めに感じられるアコギを生音で録りたいときや、男女問わず明るめのマイクで録ると、か細くてどこか物足りなく感じられる声に強いキャラクターを与えたい場合などに合っている気がする。これ一本ですべてが事足りる、といったオールマイティなマイクだとは言わないが、先述したような場面においてその能力をフルに発揮し、他の追従を許さないという職人かたぎな使命を与えられたマイクだという印象であった。  (サウンド&レコーディング・マガジン 2014年5月号より)
PELUSO
P-49
253,000円
▪形式:コンデンサー ▪周波数特性:20Hz〜20kHz ▪指向性:9パターン (無指向性から双指向性まで切り替え) ▪感度:15mV/pa ▪最大SPL:147dB ▪インピーダンス:200Ω ▪外形寸法:60(φ)×205(H)mm ▪重量:731g