2chのマイクプリを搭載したUSB接続も可能なADコンバーター

LAVRY ENGINEERINGAD11
AD/DAコンバーターは、オーディオI/Oからコンピューターまで、どのデジタル機器にも必ずといってもよいほど入っている機能です。当たり前に存在するものですが、実はこれが最も音質を決める要素であると言っても過言ではありません。そのため音のグレード・アップやキャラクターを変えたいときには、AD/DAコンバーターを別途用意したりするのです。そこで今回紹介するのが、LAVRY ENGINEERING AD11です。ADコンバーターとマイクプリの機能を持つ本機ですが、その実力はいかに......?

2chのマイクプリとUSB接続を新搭載
アナログ感を加えるサチュレーション機能


LAVRY ENGINEERINGと言えば、マスタリング・スタジオでも見かけるGoldシリーズなど、高額な部類のコンバーターが多いのですが、その中でも低価格シリーズに入るのが、今回紹介するAD11です。外見はハーフラック・マウント・サイズで、がっちりとした作り。電源がアダプターではなく、本体内蔵型なのもうれしいですね。入出力に関しては、マイク/ライン対応のアナログ・インプットとAES/EBUとS/P DIF(XLR、コアキシャル)のデジタル出力を装備しています。前モデルのAD10にあったS/P DIFオプティカル出力が無いのは残念ですが、本機は新たにUSBを装備し、コンピューターに接続して音を入力することができます(Mac/Windows対応)。そのため、ちょっとした録音や、自宅マスタリングなどに活躍しそうです。それに加えてデジタル環境では重要なワード・クロックの入出力を備えている点も見逃せません。また本機は通常のADコンバーターとしての機能だけでなく、ファンタム電源付きのマイクプリを2ch分装備しています。通常の宅録ならば2chあれば十分ことは足りるので、この追加機能はうれしいですね。機能的な面では、視覚的にも広いレベル・メーターや、Digital Tape Simulation(ソフト・サチュレーション)が装備されています。このDigital Tape Simulationは、急なピーク・レベルをサチュレーションを加えることで抑え、アナログ・テープのようなクリッピングの少ない音を録音できる機能です。サンプリング周波数は96kHzまで対応し、これらの機能の選択はすべてフロント・パネルで行い、その際はレベル・メーター部分が機能選択の表示に変わります。インプット・レベルは、右側に用意されているUp/Downで左右別々に調整でき、動かしたときの値も表示されます。デジタル可変式で左右のレベル・マッチングもそろうので、特にADコンバーターとして使用するときに便利でしょう。

色付けの無いマイクプリ特性
マスタリングにも適するA/Dの解像度


では、次に肝心な音の方をチェックしていきます。今回はいろんな接続を試してみました。まずマイクプリの確認をピアノでチェックします。接続はDAWのオーディオI/OにAES/EBUでデジタル接続した場合と、USBでDAWに直接録音する方法で試しました。マイクプリの音質はナチュラルで色付けの無い音色です。通常のアナログ・マイクプリは、少なからず個々のキャラクターが出てしまいますが、本機はそれをあまり感じませんでした。入力音を素直に増幅するので、純粋にマイク選びや立てる位置でキャラクターを選択できます。厳密に言うと、ほんの少し硬めの音で、低域が締まっていますね。AES/EBUとUSB出力の違いですが、USBの方が若干レンジが広いように思います。このように接続でサウンドを変えられるのも面白いところでしょう。ほかにもアコギでも試してみましたが、この場合も印象はピアノと同じで、曇ること無くクリアなイメージでした。ただ、ボーカルに関しては素直過ぎると言うか、もう少し中域にパンチが欲しいように感じました。とは言え、これは声のキャラクターによっても変わるので参考程度に。次にADコンバーター部のチェックです。マスタリングを想定して、アナログ機器で音を調整したあとに本機へライン入力し、USB接続でSTEINBERG WaveLabで録音してみます。印象はマイクプリの音質感と同じでクリアでした。良い意味で色づけが少ないので、自宅などでのマスタリングにも信頼できるクオリティだと思います。さすがに上位シリーズであるGoldのような低域と高域の解像度にはかないませんが、価格が何倍も違う上位シリーズが持つ感覚を、よく低価格でまとめているなと思います。また、Digital Tape Simulationをオンにすることによって、レベルを大きく入れることができますし、このときの音質がデジタル臭くないのも良いですね。余談ですが、ワード・クロックに関しても、最近意外とこの部分が弱い機器が多い中で、ちゃんとした内部クロックを持っている印象を受けました。今回USB接続では、AVID Pro ToolsとWaveLabで試してみましたが、コンピューターを直で接続できるのは、やはりいろんな面において便利です。例えばデスクトップのPro Toolsで再生したミックスを本機にアナログ入力し、別途用意したパソコンにUSB接続してマスターを録音することもできますし、録音時にマイクプリやADコンバーターとしてさまざまな用途で使えると思います。音質的にも色づけが少ないので、多様なジャンルで信頼できるものだと思います。サウンドのクオリティをワンランクを上げたい人は、本機の音を一度聴いていてみることをお勧めします。 201201_AD11_rear.jpg▲リア・パネル。左からマイク入力×2(XLR/TRSフォーン・コンボ)、S/P DIF&AES/EBU出力×2(XLR、コアキシャル)、USB、ワード・クロック入出力
LAVRY ENGINEERING
AD11
オープン・プライス (市場予想価格/ 176,400円前後)
▪サンプリング・レート/44.1/48/88.2/96kHz▪ビット・レート/24ビット▪外形寸法/203(W)×45(H)×273(D)mm▪重量/2.3kg

▪Mac/Mac OS Ⅹ、Core Audio対応▪Windows/Windows XP/Vista/7、WDM/ASIO対応