Cubaseの各ファンクションに特化した専用コントローラー・シリーズ

STEINBERGCMC Series
自分に必要な機能だけを選べる、非常に魅力的な製品がSTEINBERGから登場しました。個人的にも発売がアナウンスされてからとても気になっていたCubase専用のUSBコントローラー、CMC Seriesです。市場に出回っている多機能なフィジコンは確かに便利ですが、導入しようとすると机のスペースも必要だし、使わない操作子も意外と多かったりしますよね。しかしCMC Seriesはコンパクトかつ低価格で、Cubaseの各ファンクションに特化した6機種をラインナップ。自分の環境に合ったモデルを自由に組み合わせて(もちろん1台だけでもOK)使えるわけです。

自照式のボタンは質感も良好
LED式の新感覚タッチ・フェーダー


まずCMC Seriesに共通しているのは、ルックスが良い!ということです。白と黒のコントラストは高級感があり、ボタンはゴムのように弾力のある材質で、触り心地も良好。ボタンは自照式なので視認性も良く、今どの機能にアクセスしているのかがすぐ把握できます。ボタンにプリントされた機能を表すマークもCubaseでおなじみのアイコンそのままで分かりやすいですね。1機種あたりのサイズはパソコンのテンキー・エリアを一回り大きくしたくらいで、薄くて軽量。本体の裏側には、傾斜を付けて操作がしやすくなるよう折り畳み式のスタンドも付いています(写真①②)。

▼写真① CMS Series背面のスタンドを開いた部分にUSB(ミニB)端子が用意されており、ケーブルとの接続はここで行う。スタンドを閉じた状態でもケーブルが挟まることなく出せる仕様



▼写真② CMC-CHを横から見たところ。スタンドを使用すると写真のように傾斜の付いた状態になる。スタンドを使わずにフラットに置いて使うことも可能で、この仕様はCMC Seriesで共通だ


付属のCD-ROMでドライバーをインストールし、パソコンとUSBで接続してCubaseを立ち上げるだけで、特に設定をしなくても即座に使うことができます。この辺はさすがSTEINBERG純正ですね。CMC Seriesはバス・パワーで動作するので、電源アダプターも必要ありません。ただCMC Seriesを複数接続する場合は、動作安定のために電源付きのUSBハブを使った方が良いでしょう。CMC Seriesの各パッケージには連結器具も付属していて、横に並べるようにつなぐことで1つのフィジコンのように使用もできます。それでは、各モデルについて細かく解説していきましょう。まずCMC-CH(Channel Controller)は、Cubaseのトラック・インスペクターにある"CHフェーダー" 部分を抜き出したようなモデル。縦長の操作子はフェーダーをコントロールするためのもので、タッチ・センス式になっており、現在のフェーダー位置がLEDで表示されます。物理的なフェーダーではないので操作は慣れが必要ですが、ムービング・フェーダーのようにモーターが搭載されていない分、故障の心配も少なくて良いと思います。SHIFTボタンを併用することによって、より細かいフェーダー操作(1,024ステップ)を行うことも可能です。そのほか、作業中に非常によく使うミュート/ソロ/モニター/録音ch選択ボタン、そしてインサート/EQ/センドがワンタッチでバイパスできるボタン、オートメーションのライト/リード、VSTiの呼び出し、EQ画面の呼び出しボタンなどが用意されています。フリーズ・ボタンも独立して配置されており、一押しでチャンネルのフリーズが可能。またフォルダー・ボタンは、Cubase上でフォルダー・トラックが選択されていればフォルダー内のトラックが表示され、オーディオ・チャンネルが選択されていればトラックの下にオートメーション・レーンが出てきます。さらにパネル上には自照式のパンポットも用意されており、明るさによってパンの位置が分かる作りです(センターから左右に振ると緑色が濃くなります)。続いてCMC-TP(Transport Controller)。その名の通り、トランスポートに特化したモデルです。ループ/停止/再生/録音/早送り/巻き戻しなどの基本的なボタンのほかに、面白いものとして"COPY TRACK"ボタンがあります。このボタン一押しで選択トラックをコピーすることができ、作業をスムーズに進めることが可能です。そして最大の特徴は、中央にある横長のタッチ・コントローラー。"SLIDER MODE"ボタンでジョグ/シャトル/ロケート/画面スクロール/ズーム/タップ・テンポのどれか1つをここに割り当てることが可能です。必要に応じて上記のファンクションを切り替えて割り当てられるので、いろいろな場面で役に立つと思います。

たたく強さで色が変わるパッド
定評あるAIノブを備えたモデルも


CMC-QC(Quick Controller)は、8つのツマミをCubase上にある8つのクイック・コントロールに対応させて操作できるほか、EQモードでは4バンドのチャンネルEQのコントロールも可能。さらに専用の設定アプリケーションが付属しており、ツマミへコントロール・チェンジを変化幅なども含めて詳細に設定することができます。ツマミがさまざまな用途に柔軟に対応できるのはとても便利で、これらEQ/コントロール・チェンジ/クイック・コントロールのモード切り替えもボタン1つで瞬時に行えます。そのほか、オートメーションのライト/リードやチャンネル・セレクト・ボタン、好きな機能を割り当てられるファンクション・ボタン×4個も備えています。CMC-FD(Fader Controller)は、4つのフェーダーとチャンネル・セレクト/バンク切り替えボタンがシンプルに並ぶモデルです。フェーダーはCMC-CHと同様、SHIFTキーを押すことで1,024ステップの細かなコントロールもできます。しかもフェーダー部は何とレベル・メーター代わりにもなり、LEDによって現在のレベルが視覚的に把握できます。この機能はなかなか面白いですね。ちなみに、CMC-FDを最大4台まで結合すれば計16chの大規模フェーダー・システムに拡張可能です。CMC-PD(Pad Controller)は、リズム・マシンのように16個のパッドをたたきながら直感的にリズムの打ち込みをしたり、ショートカット・キーを割り当てて一発でその機能にアクセスすることができます。パッドはタッチ・センス付きで、専用の設定アプリケーションから16種類のベロシティ・カーブも選択できるので、より本格的な演奏が可能となります。リズムの打ち込みは鍵盤よりもパッド操作の方が断然やりやすいですからね。たたく強さでパッドの色が変わるのも面白いです。(強くたたくに従って緑→橙→赤)。最後のCMC-AI(AI Controller)は、Cubase上にある好きなパラメーターにマウスを合わせるだけで、中央のAIノブからそのパラメーター操作が可能となるモデルです。これは非常に便利!任意のショートカットをアサインできる4つのファンクション・ボタンも備え、"VOL" "JOG"ボタンでAIノブをボリューム/ジョグ・ダイアルへと即座に切り替えることもできます。いろいろな機能に対応する魔法のノブですね。


以上、駆け足でしたがCMC Seriesの6機種をご紹介しました。モデルごとに機能が振り分けられているので、"フェーダー機能だけ欲しい""ロケーターしか使わない"といった方々には最適な製品ではないでしょうか。しかもSTEINBERG純正ですから、Cubaseの設定は非常に簡単。使い方も至ってシンプルで、実際に今回のレビューにあたって、説明書を見る必要はほとんどありませんでした(笑)。各モデルを組み合わせて、自分好みにカスタマイズできる楽しさもあるCMC Series。ワンタッチでさまざまな機能にアクセスできる便利さは、一度経験してしまうと手放せなくなりそうです。

サウンド&レコーディング・マガジン 2011年12月号より)
STEINBERG
CMC Series
CMC-AI/CMC-CH/CMC-PD/CMC-QC/CMC-TP: オープン・プライス(市場予想価格/14,800円前後)  CMC-FD:オープン・プライス(市場予想価格/16,800円前後)
▪外形寸法/CMC-AI:102(W)×32.7(H)×183(D)mm、CMC-CH:102(W)×29.5(H)×183(D)mm、CMC-FD:102(W)×18(H)×183(D)mm、CMC-PD:102(W)×30(H)×183(D)mm、CMC-QC:102(W)×29.5(H)×183(D)mm、CMC-TP: 102(W)×18(H)×183(D)mm▪重量/CMC-AI:220g、CMC-CH:240g、CMCFD:245g、CMC-PD:260g、CMC-QC:250g、CMC-TP:240g

▪Mac/Mac OS X 10.5.8/10.6.4(32/64ビット・カーネル)/10.7(32/64ビット・カーネル)、INTEL製プロセッサー(Core Duo以上を推奨)、1GB以上のRAM、CD-ROMドライブ、USB1.1/2.0端子▪Windows/Windows XP(SP3)/Vista(SP2、32/64ビット)/7(32/64ビット)、INTEL Pentium/AMD Athlon製プロセッサー2GHz以上(デュアル・コア推奨)、1GB以上のRAM(Windows 7/64ビットでは2GB以上)、CD-ROMドライブ、USB1.1/2.0端子