ラスマスのセンスが表れているのは、まず生演奏によるベースのループが46パターンも収録されているところ。彼の作品にはプログラミングされたドラム・パターンに、あえて生のベースを重ねるものが多いのですが、それは生ベースがハウス特有のグルーブを生むキーになるからです。思ったよりもシンセ類や低域を効かせたドラム・ループの収録数は少なく、生のパーカッション類が充実しています。ラスマス・フェイバーの大ヒット曲「エヴァー・アフター」や彼が手掛けたリール・ピープル「アリバイ」のリミックスでも聴けるように、トラックをよりダンサブルかつ華やかにするのが彼独特のパーカッション・アレンジなのです。なお、収録されたパーカッション・ループは102種類。BPMは125前後で使い勝手が良さそう。もちろん、ワンショットも充実しています。本製品にはシェイカーが数多く用意されており、"秘密のLAVA素材フォルダー"にコンガを中心としたパーカッション素材を多く保存している僕としてはうれしいところ。ダンス・トラックのドラム・パターンではハイハットやシェイカーなど、高域を担う打楽器が重要だと思います。しかもこのライブラリーには音の粒子感が荒いものまで用意されており、これもまた一興。自宅録音が増えた昨今、"生の要素"を導入しトラックを立体的に作りたい人にはお薦めの素材集です。僕は今年7年ぶりにリリースする新作の中で、決定的なドラム・フィルに本製品の音を用いました。最後に、こういったアーティスト・プロデュースの素材集は続々と出してほしいと思います。なぜなら彼らが使用した、もしくは使いたいと思った音が自分のものになるのですから。
(サウンド&レコーディング・マガジン 2011年4月号より)