ショックマウントに磁力で装着する
専用ポップ・ガードが付属
まず、感心したのがアルミ・ケース。重厚感のあるしっかりとした作りで、好感が持てます。そして、セッティングし始めて気付いたのがショックマウントの良さ。本機に付属するShureLockは、非常にがっちりと安定感があり、長年使ってもへたれることはなさそうで、しっかりとしています。KSM42/SGにはポップ・ガードも付属しているのですが、グース・ネックもネジも付いていない......これは先述のショックマウントに磁石でくっつくというのです。マイクに近過ぎて役目を果たさないのでは?......と思ったのですが、この心配は後ほど払拭されることとなりました。
では、早速ボーカルを録りながら検証していきましょう。まずは、ポップ・ガードを付けてマイクにベタ付きで録音してみました。近接効果による前に出てくる感じは残しつつも、低域の邪魔になる部分がとても自然にロールオフされます。しかも全体の周波数のバランスが良く、洗練された音。かといって中域の情報量が少ないこともなく、高域のつながりもとてもナチュラル。一言で表すなら"プレーン"というのがしっくりきそう。ミックス次第でどの方向にもいける、かなりポテンシャルの高い音という印象です。これはこれで使える音でしたが、高域が少しポップ・ガードで丸まっているような感じもあったので、ポップ・ガードを外してベタ付きで録ってみると......あら、ポップ・ガードしているくらい問題なくいけるではないですか!? 説明書をもう一度みてみると、"一体型3段メッシュ・グリルが風と息のノイズをガード。マグネット・ポップ・フィルター・アタッチメントを使えばさらなるポップ防止を実現"とありました。なるほど。
離れた感じが顕著に現れるので
スイート・スポットは"近いところ"
続いてマイクにベタ付きから15cmくらい離れた標準的な位置でボーカルを録ってみました。ここで気付いたのが、今まで僕が使ってきたコンデンサー・マイクよりも、ちょっと離れただけで"離れた感じ"が顕著に現れるということ。しかし、全体の周波数バランスが崩れることはありません。これは宅録など、狭い場所でボーカルのダブルやコーラスを録るといった場合に、奥行き感を出すにはとても有効ではないかと思いました。また自然なロールオフが部屋のノイズや不必要な低域をカットしてくれるので、宅録やリハスタで録るにもちょうど良いと思います。ボーカルだけでなく、アコースティック・ギターも録ってみました。普段はギターから60cmくらいの位置にマイクを置くのですが、本機では少し遠く感じる音に録れたので、音を聴きながら探るとサウンド・ホールから15cmくらいのところがベスト・ポジション。ストロークの場合はここからほんの少し離した方がよく録れましたが、総じてこのマイクのスイート・スポットは"近いところ"にあると思いました。やはりプレーンかつ洗練された音で、良い意味で今っぽい音だと思います。最近、リボン・マイクKSM353やKSM313、ダイナミック・マイクSM7B、ヘッドフォンのSRH840など、SHURE製品を使うことが増えてきました。そのすべてにおいて、以前のスタンダードと呼ばれていた機材の音を引き継ぎ、消化して、今ならこう鳴らしていくのではないか?という設計者・開発者の提案を感じることができます。そこには派手ではないけれども、本質的で普遍的な使える音がいつもあるように思います。