いかにもTANNOYらしいつやを感じさせるニアフィールド・モニター

TANNOYReveal 501A
ユーザーに優しく音楽的に乗せてくれる、音楽制作向けスピーカー

TANNOY Reveal 501A 25,200円(1本)イギリスのモニター・スピーカーの老舗TANNOYから新しいパワード・モニターのシリーズが発売された。ラインナップ中で、今回レビューするのは小さめのReveal 501Aである。実は、筆者はTANNOY好きで、Revealシリーズの初代、レンガ色のパッシブ・モニターはいまだに自宅スタジオの一角を占めている。果たして新作はどうか? 興味深々で試してみた。

サイズからは想像できない音圧の高さが魅力


まず驚くのは、TANNOYのアクティブ・スピーカーがペアで5万円程度で手に入るという価格の安さだ。現在、小型のニアフィールド・モニターは各社から優秀な 製品が目白押しの状態だが、それらの中でもこの価格でこのスペックは素晴らしい。箱から取り出すと、前面の角が丸くなったRevealおなじみのデザイン。目を引くのは何と言ってもフロント・パネル下部にバスレフ用のダクトがきたことで、これまで一貫してスピーカーのリア・パネルに低音を出すためダクトを設けていたことからの大きな転換だ。黒を基調に、ところどころ銀色をあしらったデザインはシャープ。リア・パネルのインプットやコントロール類はごくシンプルで、インプットはバランス入力(XLR)とアンバランス入力(フォーン)、ボリューム・コントロール(絞りきると音量0)、ツィーターのトリム(+1.5dB/0/−1.5dBの3ポジション)、電源スイッチと電圧のセレクトのみである。早速、ほかのスピーカーと切り替えながら聴いてみた。まず最初に音を出したところで、なじみのあるTANNOYらしい音が出てくるのにうれしくなる。個性は健在で、中低域のふくよかさ、なめらかさが気持ちよい。ダクトが前面にきたことで、本体と後ろの壁との距離をさほど気にしなくてもいいのは便利だ。ただし、左右のスピーカーの位置とリスニング・ポイントがしっかりと二等辺三角形を作るのは重要。リスナーがスピーカーに近過ぎると、低音が正確に聴き取れなくなるので注意したい。また、フロント・パネル近くに反射物があると音が変わりやすいので、設置環境は大事である。なお、ボリューム・コントロールにはクリックがないので、きちんと両方のスピーカーから同じ音量が出て、センター定位が正確に出ているかのチェックはシビアにやった方がいい。初代のRevealが20kHzまでだったのに比べると、Reveal 501Aは30kHzまでハイエンドが伸びている。確かに、アコースティック・ギターやシンセなどの高域はきらびやかだ。とはいえ、本機の魅力はこのサイズにして108dBという音圧の高さで、リア・パネルのボリュームを上げていくと、ホーム・スタジオではまず出せないところまで平気で音量が上がり、バランスも崩れない。あと、サイン波で確認してみると低音の特性が良い。カタログでは、周波数特性は64Hzからとなっているが、40Hzでもしっかりとした量感を聴き取ることができた。ヒップホップやクラブ・ミュージックで低音を重視する場合、また打ち込みのサウンドで余計な低音があっては困る場合も、サブウーファーを使用しなくとも低域の判断がつくだろう。ROLAND TR-808系のバスドラを試していると、低域にスピード感があるのがよく分かる。クラシック系のアンサンブルを幾つか聴いて、試しにツィーターのトリムを+1.5に切り替えてみたが、これはよく効き、一気に華やかな音になる。高域やリバーブ感が物足りないという人は、これをオンにしたまま使用するのもアリだろう。

クラブ・ミュージックの低域もよく見えリズムやベースの打ち込みに向く


次にDAWを使っての曲作りにReveal 501Aを使ってみると、予想通りリズムやベースの打ち込みにはとても向いていて、気持ちよく作業が進められた。音量を出さなくても、低域にしっかりとした量感が感じ取れるので、耳を傷めることなくタフなリズムを作ることができ、たまに確認のための音量を出したり、ほかのスピーカーと切り替えたりしても、印象が大きく変わることがない。ギターやボーカルの生録音も好印象で、コンプやEQによる処理による音の変化も正確に聴き取ることができる。注意点があるとすれば、普通の音色なのにとても良い音だと錯覚する点で、特に本機に乗り換えた当初は、中域のスムーズさから腕が上がったかのような誤解が起きるかもしれない。Reveal 501Aを使った途端に楽器の演奏や録音のテクニックが上がるわけではない。Reveal 501Aは音の正確さを保ちつつ、ふくよかな中低域と高域の伸びを兼ね備え、音量にも余裕がある。この価格でありながら、小規模スタジオでのメイン・モニターとして十分使えるだけの実力を備えているのだ。ユーザーに優しく、音楽的に乗せてくれる、という意味においては音楽制作に向いたスピーカーだ。ぜひ店頭で独特のつやのある音色を確認してほしい。(『サウンド&レコーディング・マガジン』2010年10月号より)
TANNOY
Reveal 501A
25,200円
▪周波数特性/64Hz〜30kHz▪最大音圧/108dB ▪ディストーション/0.7%以下 ▪LF/MIDセクション/130mmマルチファイバー・パルプ・ペーパーコーン ▪HFセクション/25mmソフトドーム、ネオジム・マグネット・システム ▪クロスオーバー周波数/2.3kHz ▪外形寸法/184(W)×300(H)×237(D)mm ▪重量/5.45kg(1本)