1人ハモからロボット声まで作れるボーカル専用コンパクト・エフェクター

BOSSVE-20
クオリティの高い効果的なサウンド・メイクが行え、フレーズ・ループ機能も搭載されている、ライブ・パフォーマンスに最適なエフェクター

BOSS VE-20 オープン・プライス(市場予想価格/25,000円前後)BOSS VE-20はボーカルに最適なエフェクト群を本体内に搭載したボーカル専用エフェクターです。30種類のプリセットからお好みのサウンドをセレクトするだけで、クオリティの高い効果的なサウンド・メイクが行える上、フレーズ・ループ機能も搭載されライブ・パフォーマンスに最適とのこと。試していきましょう。

ツマミで選んだサウンドをペダルでオン/オフするのみの操作性


トップ・パネルは、赤いボディにメニュー画面への移行やリバーブ・レベルの調整などを行う6つのボタン、エフェクトを選択するツマミが1つ、エフェクトのオン/オフやループ・サンプルの録音開始/停止などを制御するペダルが2つとかなりシンプル。さらに使用エフェクトを視認できる液晶パネルがオレンジでかわいいです。各接続はリア・パネルにて行います。入力はTRSフォーン/XLRのコンボ・タイプ。ファンタム電源も付いているのでコンデンサー・マイクも使えます。出力はXLR端子によるステレオ仕様で、ステレオ・ライン出力としても使用できるヘッドフォン端子も装備。電源は乾電池(単3電池×6本)とACアダプターによる2電源選択方式なので、ライブ会場などでも安心です。続いては内蔵されているサウンド。VE-20には、ダイナミクスやダブル/ハーモニー、ディレイ、リバーブなどの6種のエフェクトが内蔵されています。それらを単体で使うことも可能ですが、ハーモニーの音程やエフェクトの音色などの組合せによって、ジャンルや効果別に最適化された4カテゴリー/計30種類のプリセット・エフェクトがあらかじめ用意されています。どれもツマミを回して選ぶだけの簡単操作でセレクトすることができ、それらプリセット・エフェクトをエディットすることもできるし、好みの設定をユーザー・エリアに合計50種類保存することが可能です。

即効性があるプリセット・エフェクトは微調整も可能


それではプリセットを中心に音色を試していきましょう。STANDARDというカテゴリー内には、"POP" "BALLAD"など、分かりやすいサウンド・ネームが用意され、どれもシンプルでよくなじむ自然な音で使いやすいです。声に厚み加えるDOUBLEのカテゴリーは、3種類のサウンド・ネームが用意されていて、実際に2人で歌っているような効果を演出します。HARMONYのカテゴリーのプリセットでは、元声を変化させずに二声のハーモニーを追加することができ、それぞれ音質やキーの詳細も設定可能。設定によっては本当にもう1人自分が歌っているようです。さらにパンで音の定位も調整できるので、広がりのあるハーモニーを作ることができるでしょう。SFX/TONEカテゴリーはラジオ・ボイスや声が細切れになるストロボ機能など面白いエフェクトが多数搭載されている上、EQやトーンなどを調整可能。中でも"PREAMP"を選択したときにEQの細かい設定ができ、EQの効く周波数が選べるのが便利。私の声はある周波数が出過ぎる傾向にあるんですが、ミキサーのEQで低域や中域を削ると"違う人の声みたいになるなぁ"と思っていたんです。しかし、この機能を使うと切りたい部分だけ削ることができるので、声の印象を変えることなくクリアにすることができます。そしてPITCH CORRECTカテゴリーでは、音程の補正や声質を変化させることができ、機械的な音程変化から自然な音程補正としてまで使い方はいろいろ。多種多様な音作りが可能です。どれもボーカル用に考えられているだけあり声によくなじんで使いやすく、中でも"CHORUS"が良いなと思いました。個人的にコーラスはあんまり好きじゃないのですが、これはなんだか美しい。またVE-20にはフレーズ・ループ機能も付いています。モノラルで最大38秒間フレーズ録音ができ、多重録音も可能。録音時にループの頭にクリップ・ノイズが入らない点が良く、音も奇麗だし、多重録音しても古い音が埋もれず、1音1音の粒がそろうように感じました。私は普段、ギター用のループ・サンプラーでボーカルのループを作っているので、音の劣化やクリップ・ノイズは付いてまわるものでした。また私が使っているループ・サンプラーはスイッチ式で、録音時のカチカチ音がループの中に入ってしまうこともあったんです。しかし本機ではそうしたストレスも無く、その点もとても魅力的に感じます。ギタリストがギターの音を作るように、ボーカリスト自ら声を作れるという点がとても素晴らしいと思いました。ボーカルは基本的に歌うだけという印象が強いかもしれませんが、声を"もっとこういう音で出したい"と思っている方はたくさんいると思います。VE-20は機材の知識が無かったり、私みたいに説明書を読まない人でも簡単に使いこなせるので、エフェクターのことはよく分からないという人にもお薦めです。

▲リア・パネル。左からライン/マイク入力(XLR/TRSフォーン共用)、ヘッドフォン・アウト(TRSフォーン)、マイク出力LR(XLR)、電源スイッチ、DC INジャック


『サウンド&レコーディング・マガジン』2010年1月号より)撮影/川村容一
BOSS
VE-20
オープン・プライス (市場予想価格/25,000円前後)
▪サウンド:30(プリセット)+50(ユーザー)▪最大録音時間(モノラルのみ):38秒▪外形寸法/173(W)×158(D)×58(H)mm▪重量/1.1kg