Expressカードに驚きのパワーを備えたDSPプラグイン・システム

UNIVERSAL AUDIOUAD-2 Solo/Laptop
ラップトップ向けDSPプラグイン・システム

UNIVERSAL AUDIO UAD-2 Solo/Laptop オープン・プライス(市場予想価格/68,250円前後)僕はUNIVERSAL AUDIO UAD-1が登場して以来のユーザーで、普段使用しているMacをINTELに移行するのと同時に、UAD-2にも移行した。そのパワーと信頼性は今さら語るまでもなく、DSP駆動タイプのプラグイン黎明(れいめい)期から安定した製品を作り出しているだけに今回レビューを行うUAD-2 Solo/Laptopにも大きな期待があった。普段はデスクトップのみで1カ所で仕事をすることが多いので、ラップトップでどこまで作業するのかというのは自分の中にある。しかしここ数年流動的な作業が多くなり、データもどこに居ても扱えるようになった。オーディオ・インターフェースが無かろうと、96kHzのプロジェクトだろうと、今では本当に場所もファイルの形式さえも選ばず作業ができるようになってきている。だから当然、このようなラップトップ向けのDSPプラグイン・システムもいよいよ出番かな、と思えたのだ。

UAD-1の2.5倍のDSPパワーをExpressカード・サイズで実現


本機はDSPプラグイン・システム、UAD-2シリーズの1つ。UAD-2シリーズはそのチップ数に応じてSolo、Duo、Quadの3タイプが用意されており、前モデルであるUAD-1と比較するとそのDSPパワーは2.5倍、5倍、10倍となっている。今回試用するのはSoloで、Expressカード・タイプのもの。ほかのモデルはPCI Expressスロットに挿すタイプなのだが、本モデルは多くのラップトップ・コンピューターに搭載されているExpress Cardスロットに挿すことで動作する。その名の通りラップトップ・コンピューターでこそ、その威力を発揮してくれそうだ。もちろん可搬性にも非常に優れている。小さいがそのパワーはUAD-2 Soloと全く同じだ。付属するプラグインはMix Essentials
IIと呼ばれる4モデル。コンプのUA 1176SE、EQのPultec EQP-1A、リバーブのRealVerb Pro、チャンネル・ストリップのCS-1だ。いずれも繊細なニュアンスから極端な加工まで割と広く対応できる基本的な構成になっている。UA 1176SEはUNIVERSAL AUDIO 1176をシミュレートしたものだが、数ある同種のプラグイン中でも実機に近いニュアンスが感じられる。CS-1はチャンネル・ストリップながら、アナログ感あふれるディレイが付いているので、重宝するだろう。EQ部もビンテージ感ある音作りが簡単にできる上、音の立ち上がりも良いのでミックスに使いやすい。プラグインのクオリティの高さもさることながら、CPUに負荷をかけることなく駆動ができるところが本機の大きな魅力である。トラック数やプロジェクトのサンプリング・レートによっては"挿し放題"とまでは言えないが、一般的なミックスで必要最低限なくらいは余裕を持って使えそうである。実際この試用中も、いつの間にか付属のすべてのプラグインが立ち上がって活躍してくれていたので、本当にどこでも場所を選ばずミックスができそうな気さえしてきた。

豊富なアナログ機材をシミュレートした多彩なプラグインを追加していく楽しみ


UADシリーズのだいご味は、既に多くラインナップしているプラグインや、後々にリリースされてくる新しいプラグインをどんどん追加していくことであったりもする。ちなみに本機には50ドル分のバウチャーが付属するので、後ほど好みのプラグインを購入できることも魅力の一つ。既にかなりの数の定番ハード機材がプラグインとしてシミュレートされているが、今年も真空管アウトボード・メーカーの王様とも言うべきMANLEYのプラグインも開発中とのことで、目が離せない。基本的に本シリーズのプラグインはアナログのビンテージの名器のシミュレートが多いが、どれも個性があるのでコンプやEQであっても用途でモデルを使い分けできるのがうれしい。UNIVERSAL AUDIOのモデリング技術が非常に正確で絶妙であるという証につながるかもしれない。実機の多くは筆者もほとんどが使ったことは無いので、実際のサウンドは詳しく知らないわけであるが、当時の年代の音を聴いて想像をふくらませてしまう。飛び道具としてのプラグインの印象はあまり無いが、音のゆがみ、ひずみ感はとても音楽的で、温かみを与える用途で使う分には間違い無い。まずはプリセットも豊富なので、そこからいろいろ試していけば操作に困ることも無いだろう。正直、こんな小さなカードに最新のDSPが搭載されているというのは使ってみて驚いた。ちなみにDuo、Quadのタイプもリリース予定ということ。やっぱり目が離せない。(『サウンド&レコーディング・マガジン』2009年11月号より)
UNIVERSAL AUDIO
UAD-2 Solo/Laptop
オープン・プライス (市場予想価格/68,250円前後)
■ 対応OS/Windows XP/Vista、Mac OS X 10.4以降■ 動作環境/256MBのRAM(512MB以上を推奨)、1,024×768以上の高解像度モニター、CDROMドライブ、125MB以上のHDD容量、インターネット接続環境(製品登録と追加プラグイン購入のため)、Express Cardスロット、VST、RTAS、Audio Unitsのいずれかが動作するソフト