新機能で高いユーザビリティを実現したコンピューターDJシステム

RANESerato Scratch Live SL3
24ビット化で音質が大幅に向上。アナログやCDとの共存も容易に

RANE Serato Scratch Live SL3 オープン・プライス(市場予想価格88,000円前後) コンピューターでDJをするという概念が定着した昨今、RANE Serato Scratch Liveは中でも屈指のDJソフトであり、その安定性と機動性で多くのDJたちをとりこにし、現場でも頻繁に使われている。ひと昔前はラップトップを使ってDJプレイなんて考えもつかなかったし、全く予想もしてなかった。いやはやすごい時代が来たものだ。今回紹介するのは、DJを始めるための機材が一式そろったセット、Serato Scratch Live SL3だ。 

ミックスに必要な機材一式をバンドル コンパクトに持ち運びが可能


Serato Scratch Live SL3は、DJソフトのSerato Scratch Liveに加え、オーディオ・インターフェースのSL3や、コントロール用のバイナル/CDが2枚ずつ、そして接続用ケーブルや電源アダプターが付属する。セッティングを終えて思ったのが、一式が非常にコンパクトであること。SL3本体はコンピューターと一緒にバッグに詰めて肩から下げて持ち運べるレベル。要はこれだけでレコード棚を背負っているのと同じだから、海外のゲストDJが頻繁に使っているのもうなずける。RANE_SSL_Screen.jpg

▲Serato Scratch Live


本機の特長は、ターンテーブルやCDプレーヤーに付属のコントロール・バイナル/CDをセットし、タイム・コードをSL3を介してソフトへ入力することで、コンピューター内のオーディオ・ファイルを操作できる点だ。これによりユーザーはコンピューターの画面から解放され、従来のレコードやCDを操る感覚そのままにオーディオ・ファイルを操りミックスやスクラッチなどのパフォーマンスに集中することができる。画面とにらめっこになってしまい現場感を失う、というラップトップDJの課題をクリアしているのだ。私も幾つかのDJソフトを現場で試しているが、PCから離れられずオーディエンスのレスポンスを感じにくいこともあった。本機なら、ディスプレイに向かうのはレコードを棚から選ぶように選曲のときのみで良い訳だ。 

AUX入出力やREC機能 バイパス・スイッチなど新機能満載


肝心の音質は、前バージョンのSL1から大幅に向上している。量子化分解能は24ビットへ、ダイナミック・レンジは104dBに引き上げられ、大規模なPAシステムでも低ノイズかつ迫力あるサウンドを出力できるようになった。コンピューターでDJを行うと、少し音圧が落ちるのが悩みの種だったが、実際に交互に音出しして各チャンネルを聴き比べたところ、EQ補正する必要はほぼ無かった。また、SL1ユーザーからの要望を取り入れ(素晴らしい!)、タンテ/CDプレーヤーの音をそのまま出力するバイパス・スイッチをソフト上に搭載。クリック1つで、アナログ・レコード/CDでの一般的なDJプレイへ移行できるのがうれしい。さらに、SL3には2枚のデッキ入出力に加え、AUX入出力も搭載されている。ここへシンセやリズム・マシン、サンプラーなどを入力して鳴らすことができるのだ。"この曲こんな音入ってたっけ?"といった現場ならではのリミックス感を演出できる。加えて、ソフト上には各デッキのREC機能もあるので、アナログ音源をデータ化することも可能。入手困難なレコードも、データ化することで心置きなくプレイできるだろう。また、AUX入力へミキサーのREC OUTを接続、録音ソースをAUXにすることで、ミックス・プレイを録音することもできる。十数年前はレコードのみでのDJが当たり前であり、それ以外に方法が無かった。私も重いレコード・バッグを運び疲れ、DJ後の朝方、山手線一週小旅行なんていうのもしょっちゅうだった。今は機材が発展し多彩な選択肢があるが、SL3はその中でも新しい技術を組み込んだ最も完成されたツールであると確信する。これは予想だが、将来Serato Scratch Live一式が現場に常設され、DJはレコード・バッグの代わりにハード・ディスクだけを持っていくような時代が来るのかもしれない。RANE_SSL_SL3F.jpg

▲SL3手前側の接続端子部。左から、AUX/LEFT DECK/RIGHT DECKアウトプット(いずれもRCAピン)、7.5V DC、USB端子


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▲SL3リア側の接続端子部。左から、フォノ/ライン切り替えスイッチ、グラウンド・ポスト、RIGHT DECK、LEFT DECK、AUXインプット(いずれもRCAピン)


撮影/川村容一


『サウンド&レコーディング・マガジン』2009年8月号より)
RANE
Serato Scratch Live SL3
オープン・プライス(市場予想価格88,000円前後)
■ビットおよびサンプリング・レート/最大24ビット/48kHz ■外形寸法/170(W)×35(H)×135(D)mm ■重量/560g

■Windows/Windows XP/Vista、1.5GHz以上のCPU、1GB以上のRAM、USBポート ■Mac/Mac OS X 10.4以降、1GHz以上のCPU、1GB以上のRAM、USBポート