ハイクオリティなヘッド・アンプを搭載した12chコンパクト・ミキサー

SOUNDCRAFTEPM12

数多くのミキサーを発表しているイギリスのSOUNDCRAFTから新しいコンパクト・ミキサー、EPMシリーズが発売された。入力チャンネル数が12、8、6chの3種類ある中で、ここでは12chのEPM12を紹介しよう。なお、ほかの2機種もチャンネル数以外は同じ仕様だ。

コンパクトな設計で
構成は至ってシンプル


EPM12は意外にコンパクトで、重量も6.7kgとほどほどだ。電源トランスを内蔵しているので、ACアダプターが必要無いのもうれしいところ。パネルのデザインや接続端子類、ツマミなどもしっかりしていて高級感があり、やる気を起こさせるデザインである。また、EPMシリーズはモノラル入力に同社のPAコンソールに採用されているヘッド・アンプを装備しているのもポイントだ。EPM12の構成はシンプルで、モノラル・チャンネル×12、ステレオ・チャンネル×2、あとはマスター・セクションだ。入出力の端子類は上面パネルにすべて配置されている。各モノラル・チャンネルには上からマイク/ライン入力(XLR/TRSフォーン)、インサート端子、ゲイン調節ツマミ、EQ(HFは12kHz、MFが150〜3.5kHz、LFは80Hz)、AUX1/2調整ツマミ、パン調整ツマミ、プリフェーダー・リッスン(PFL)スイッチ、ミュート・スイッチ、ピーク用LED、チャンネル・フェーダーとなっている。ステレオ・チャンネルではステレオ入力(TRSフォーン)、EQがHFとLFだけになっているが、これら以外はモノラル・チャンネルと同じだ。マスター・セクションではメイン出力(XLR)、レコード出力(RCAピン)、モニター出力(RCAピン)、AUX出力(TRSフォーン)、ヘッドフォンの出力をコントロール可能なほか、CDプレーヤーなどを入力する2TRACK入力(TRSフォーン)もある。また、マイク入力用のファンタム電源のオン/オフや、AUX1/2のPRE/POSTもここで操作する。信号の流れは明確なので、パネルの表示を順番に見れば、すぐに構成はつかめるだろう。

高品位なヘッド・アンプによって
音やせが少なく低ノイズを実現


早速、実際にいろいろな楽器を接続してみよう。まず、マイク入力にコンデンサー・マイクをつなぎ、ファンタム電源をオンにして、近/遠距離の音を確認してみる。まず気が付くのは、ヘッド・アンプ部分でのノイズが非常に少ないことだ。また、ゲインを上げていき、最高の60dBまで振り切っても、音のクオリティが変化しないのにも驚いた。コンパクト・ミキサーの中にはゲインを上げていくと急激にヘッド・アンプ自体のノイズが増加するものがあるのだが、EPM12の場合は大丈夫だ。微細な音や、遠距離のアンビエンスを拾う場合にもマイクをそのままEPM12に接続し、レベルを合わせればよい。また、ヘッド・ルームに余裕があるので、逆に音が大き過ぎてピーク用LEDが点灯してもすぐには音が割れたりはしない。ライン入力も優秀で、エレキギターやエレキベースを直接つないだ場合でも、音やせしないでちゃんと“使える”音になるのも印象的。マイク/ライン入力ともにSOUNDCRAFTらしいフラットで正確な音を引き継ぎつつ、高品位なヘッド・アンプによって高音質を実現していると感じた。3バンドEQはシンプルな作りで効きが良い。EQ自体のノイズが少ないので、かなり極端な設定にしてもちゃんと音として成立する。使いやすさのあまり、かけすぎないように逆に注意が必要かもしれない。フェーダーのストロークは60mmあり、適度な軽さで操作感は良好。PFLやミュートのスイッチングでノイズが出ないところも良い。では、EPM12の使用例を挙げておこう。
●チャンネル・ストリップとして EPM12のAUX1/2とモニター出力LRを使えば最大4chパラアウトできるので、4系統のチャンネル・ストリップとして使える。EQで音を整えるのも良いし、EQしないでヘッド・アンプ直の音にすると、リアルな音像が得られるだろう。
●ミックス・バッファーとして コンピューター・ベースのミックスでオーディオI/Oの出力数が多い場合、それらを別々にEPM12に入力し、EPS側で2ミックスにするとコンピューター内でのミックスとは異なるアナログで落ち着いた音が得られる。EPMのミックス出力のインサート端子を使い、いったんコンピューターに戻してマスタリング・エフェクトをかけるといった操作も可能だ。EPM12はシンプルでクオリティの高いコンパクト・ミキサーだ。小規模のPAやホーム・スタジオにぴったりはまる実力を持っている。
SOUNDCRAFT
EPM12
56,700円

SPECIFICATIONS

■周波数特性/20Hz〜20kHz(±0.5dB)
■マイク等価入力ノイズ/−128dBu(22Hz〜20kHz)
■インピーダンス/マイク入力:2.4kΩ、ライン入力:11kΩ、ステレオ入力:100kΩ
■接続端子/マイク入力(XLR)×12、ライン入力(TRSフォーン)×16(モノラル×12+ステレオ2系統)、インサート(TRSフォーン)×12、メイン出力(XLR)、レコード出力(RCAピン)、モニター出力(TRSフォーン)、2TRACK入力(TRSフォーン)、AUX出力(TRSフォーン)、ヘッドフォン
■外形寸法/432(W)×363(H)×90.5(D)mm
■重量/6.7kg