ZIVIX Jamstik Studio MIDI Guitar レビュー:ワイアレス接続/MPE対応でソフト音源も付属するヘッドレスMIDIギター

ZIVIX Jamstik Studio MIDI Guitar レビュー:ワイアレス接続/MPE対応でソフト音源も付属するヘッドレスMIDIギター

 ZIVIX(ジビックス)は、Jamstik Guitar Trainerという小型でソフトがバンドルされた練習用ギターのメーカーというイメージが強かったが、現在はMIDIギター関連をメインに展開しているようだ。今回はその中でもヘッドレス・タイプのJamstik Studio MIDI Guitarをレビューしてみよう。

USBやTRS/MIDI変換ケーブル接続のほかBluetoothでのワイアレス接続にも対応

 そもそもMIDIギターとは、弦ごとに信号を拾うピップアップをギター本体に取り付け、その信号をオーディオではなくMIDIにリアルタイムで変換し、DAWに記録したり、ライブなどでMIDI音源を鳴らしたりすることのできる機材。歴史はかなり古く、さまざまなアーティストが使用している。

 Jamstik Studio MIDI Guitarは、冒頭でも触れた通りヘッドレスで、ヘッド側にボール・エンドを引っ掛けるタイプ。ヘッドレスのギター・メーカーとしてはSTEINBERGERがよく知られているが、同社のようにダブル・ボール・エンド弦の必要はなく、普通弦が使える。スケールは25.5インチのレギュラー・スケールで24フレット。ブリッジは海外のヘッドレス・ギターに時々見かけるタイプで、チューニングつまみは手で回せないこともないが、ブリッジ横に磁石で付いているハンドルを取り外して行う。ハンドルはとても小さく、磁石で付いているとはいえ、専用工具なので無くしてしまうとちょっと怖い気もした。

 ピックアップはハムバッカー×2で、コントロールはピックアップ切り替えとボリュームのみ。普通のギターとして使うならトーンつまみとアームは欲しい気もした。なお、カラーはマット・ブラック、マット・ブルー、マット・ホワイトの3色が用意されている。

 Jamstik Studio MIDI Guitarは、ヘッドレスなのでコンパクトで軽く、付属の専用ギグ・バッグもオシャレで、トラベル・ギターとしては申し分ない印象。コンピューターとの接続は本体のUSB-C端子から、USB-A変換ケーブルを使って行う。また3.5mmのTRSフォーン-MIDI変換ケーブルも付属しているので、MIDI端子に接続することもできる。さらにBluetoothでワイアレス接続することも可能だ。

付属ソフトには音源を内蔵 MPE対応でダブル・ベンドなども表現できる

 Jamstik Studio MIDI Guitarは、Jamstik CreatorというMac/Windows対応のソフトと組み合わせて使用する。また、Jamstik ControlというiOS/Android対応アプリで各種設定やフィンガー・ボードの確認などを行える。

 Jamstik Creatorではギターをつないだ状態でさまざまな設定を行うほか、それ自体が5GB近い音源であり、スタンドアローンもしくはAAX/AU/VST3プラグインとして使用できる。

Jamstik Creatorの設定画面。弦ごとの感度などさまざまな設定を行うことができる。

Jamstik Creatorの設定画面。弦ごとの感度などさまざまな設定を行うことができる。

Jamstik Creatorで音色を選択している様子。プリセット・ライブラリーが豊富にそろっているほか、メーカーのWebサイトにあるストアではサウンド・パックも販売されている。もちろん、MIDIキーボードなどを使って普通の音源としても利用できる

Jamstik Creatorで音色を選択している様子。プリセット・ライブラリーが豊富にそろっているほか、メーカーのWebサイトにあるストアではサウンド・パックも販売されている。もちろん、MIDIキーボードなどを使って普通の音源としても利用できる

 後述するMPEモードでは、ギターで弾いたフレットの位置、あるいはベンド時やビブラート時のピッチの変化などが鍵盤とフレットで表示されるので、とてもわかりやすい。用意されてるプリセットも、MIDIギターではおなじみのリード系やパッド系、SE系などかなり豊富だ。

1弦5フレットを押さえ、2弦は5フレットから1音ベンドすると、上の画面のように表示される

1弦5フレットを押さえ、2弦は5フレットから1音ベンドすると、上の画面のように表示される

 前述したMPEとは、MIDI Polyphonic Expressionの略で“MIDIノートごとに複数の演奏情報を同時にコントロール”できる新しいMIDI規格。MIDIギターの場合、ピッチ・ベンドやエクスプレッションなどの情報を、弦ごとに送信できるため、よりギター演奏に近い表現が可能となっている。例えばギターの奏法には、ダブル・ベンド、ユニゾン・ベンドなど、複数の弦で異なるベンド幅を使った奏法があるが、そういったことも可能だ。現在、MPEは幾つかの音源が対応している。筆者はAPPLE Logic Proの音源の幾つかと、XFER RECORDS Serumなどで試したところ、Jamstik Creator付属音源と同様に鳴ってくれた。

 MPE非対応音源用のシングル・モードでは、ピッチ・ベンドなどは共通になるが通常の使用なら問題ない。またマルチトラックというモードもあり、少し手間になるが、音源を6つコピーしてトラックを6つ使い、同時に録音すればMPEモードと同様の結果を得ることができる。

 演奏面でやはり気になるのはレイテンシーや操作性。レイテンシーはDAWの環境や設定などにもよるが、かなり速い印象を受けた。アタックの激しい音色でも比較的スムースに演奏できる。MPEのおかげでニュアンスもある程度再現される印象を受けるので、その点でもストレスは少ない。とはいえ、MIDIギターを初めて触る人などは、通常よりもかなりシビアに演奏する必要がある。個人的には、指弾きではなくピックで弾いたほうが明らかにミスが少ないように感じた。

 Jamstik Studio MIDI Guitarは、DAWの入力デバイスとしてはもちろん、ライブなどでノート・コンピューターなどを持ち込んで、ワイアレスでオーディオもMIDIもコントロールしたい、という人にもお薦めだ。

 

祐天寺浩美
【Profile】作編曲家として、またギター/ベース/ドラム/キーボードをこなすマルチプレイヤーとしてレコーディングからセッションまで多方面で活躍。本誌長寿連載「お部屋一刀両断」の執筆でもおなじみ。

 

 

 

ZIVIX Jamstik Studio MIDI Guitar

124,800円

ZIVIX Jamstik Studio MIDI Guitar

SPECIFICATIONS
▪ボディ:マホガニー ▪ネック:メープル ▪指板:ローズウッド ▪スケール長/フレット数:648mm(25.5インチ)、24フレット ▪MIDI接続:USB-C(USB-A変換ケーブル付属)、3.5mmTRSフォーン(MIDI変換ケーブル付属)、Bluetooth(バッテリー内蔵/8時間連続使用可能) ▪オーディオ接続:TSフォーン ▪外形寸法:825.5(H) ▪重量:2.5kg

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