WHARFEDALE PRO Diamond Studio BT Series レビュー:老舗オーディオ・メーカーの伝統を継承する2ウェイ・パワード・モニター

WHARFEDALE PRO Diamond Studio BT Series レビュー:老舗オーディオ・メーカーの伝統を継承する2ウェイ・パワード・モニター

Diamond Studio 7-BT(写真左)/Diamond Studio 5-BT(同右)

 WHARFEDALE PRO(ワーフデール・プロ)からスタジオ・モニターDiamond Studio BT Seriesが発売されました。WHARFEDALE PROはPA用スピーカーのブランドというイメージが強いですが、1932年にイギリス、ヨークシャーで創業された高級ホーム・オーディオ・メーカーWHARFEDALEが市場からの熱望に応えて1997年に設立したプロ・オーディオ専門ブランドです。そして、1981年にWHARFEDALEが発売したロング・セラー・モデルのコンパクト・モニター“Diamond”シリーズの名を冠したスタジオ・モニターが、Diamond Studio BT Seriesです。

低域の優れたダイナミック・レスポンスを実現するグラスファイバー製コーン

 Diamond Studio BT Seriesには2つのモデルがあり、Diamond Studio 7-BT(以下7-BT)は6.5インチ径ウーファーの2ウェイ・システム、Diamond Studio 5-BT(以下5-BT)は5インチ径ウーファーの2ウェイ・システムです。今回は7-BTを中心にチェックしていきたいと思います。

 

 7-BTの外形寸法は210(W)×340(H)×260(D)mm、5-BTは180(W)×290(H)×240(D)mmとなっています。本体重量は7-BTが6.84kg、5-BTは5.62kgと、同等のサイズのパワード・モニターとしては軽量な方だと思います。実際に製品を受け取ったときに思ったより軽いな、と感じました。あまり無いかもしれませんが、持ち運びの際にちょっと助かります。軽いと言っても筐体はかなりしっかりとした作りで、仕上げも高級感があります。

 

 まず目を引くのはゴールドのグラスファイバー製の低域ドライバーのコーン。これは紙ベースのコーンに比べて非常に剛性が高く、軽量です。これによって低域の優れたダイナミック・レスポンスを実現し、スタジオ・モニタリングには重要な非常に速いレスポンスをもたらすようです。内部には、高音域、低音域ともに高効率のクラスDアンプを採用。アンプ前の信号を2.2kHzのクロスオーバーで分割し、帯域ごとにパワー・アンプで増幅するバイアンプ方式を採っていて、これらの組み合わせにより、スタジオ・モニターとして重要なサウンドの正確さを実現しています。

クリアな高域とタイトでフラットな低域。Bluetoothでステレオ・リンク&スマホ再生

 実際に制作中のドラム、ベース、ギター、ボーカルの4人編成バンド(シーケンスあり)のミックス・ファイルを再生してチェックしたところ、高域はクリアで小音量でも透明感が損なわれることなく、シンバルやリバーブの消え際も確認しやすいです。EDM寄りの音源を聴いてみると、低域はタイトで全体的にフラットなバランスですが、40Hz辺りまでしっかり低音が“見える”感じがするので、現代のモニター・スピーカーとして申し分ないサウンドだと思います。

 

 5-BTは、7-BTよりウーファーの径が小さいのと、低音域用のアンプが7-BTの定格90Wに対して5-BTでは定格80Wですので、その分中低音の迫力は少し減り、若干ハイ上がりな印象を受けますが、音のキャラクターは同じ傾向です。

 

 筆者のチェック環境(マンション、6畳の部屋、スピーカーから耳まで70cm程度)だと7-BTでは音量が少し大き過ぎてマスター・ボリュームを絞って使用する感じでしたので、宅録環境だと5-BT、ある程度距離が取れて防音もそれなりにしている部屋での使用であれば7-BTを選択すると良いでしょう。ちなみに5-BTでも筆者が所有しているYAMAHA MSP5 Studioと比べるとかなり大きい音が出ました。

 

 背面にはBluetooth&TWS(True Wireless Stereo)ボタン、無段階のマスター・ボリューム、高域レベル・コントロール、低域レベル・コントロール、RCAピン入力、XLR/フォーンのコンボ入力があります。高域/低域レベル・コントロールでは±2dBの範囲を1dB刻みで調節可能なので、設置場所や好みに合わせて微調整することができます。今回チェックした環境では高域はフラット、低域は+1dBに設定することで落ち着きました。

Diamond Studio 5-BTのリア・パネル

Diamond Studio 5-BTのリア・パネル。左列上段にはステレオ・リンクやペアリングに使用するBluetooth接続ボタンを装備し、その下にはXLR/フォーン・コンボ入力とRCAピン入力を各1系統搭載する。右列にはボリューム・ノブのほか、±2dBの範囲で高域と低域の調整が可能なHF LEVEL、LF LEVELを備える。Diamond Studio 7-BTも同様の構造となっている

 また、本機の特徴の一つとしてBluetooth機能があります。こちらは、背面のBluetoothボタンを押すことで、2台のスピーカーをTWSシステムを使ってワイアレスでステレオ・リンクさせたり、スマートフォンなどのBluetooth対応再生機器とペアリングさせることが可能です。Bluetoothだと無音部分でほんの少しだけチリチリした音が聴こえたり、19kHz辺りまでしか再生されないので有線との音質の差は多少ありますが、そもそもBluetoothで飛ばすのはMP3やM4Aファイルが多いと思いますので、ホーム・オーディオ用スピーカーとして使用する分には十分だと思います。また、設置の際にはインシュレーターを使用してもいいですし、付属品の後付け可能なゴム足を使用してもいいでしょう。

 

 1台あたりの価格は7-BTが41,800円、5-BTが35,200円となっていますが、前述の通りぜいたくなシステム構成かつBluetooth機能搭載でこの価格帯はお得感があります。自宅作業用のモニター・スピーカーの導入を考えている方は、選択肢の一つに入れてみてはいかがでしょうか。

 

濱本洋平
【Profile】フリーランスでPAやレコーディングを手掛けるエンジニア。これまでに赤い公園や集団行動、GARLICBOYS、あっぱ、Vampillia、Kroiなど、多くのアーティストのライブや作品に携わる。

 

WHARFEDALE PRO Diamond Studio BT Series

Diamond Studio 7-BT(写真左):41,800円/Diamond Studio 5-BT(同右):35,200円(各1台)

WHARFEDALE PRO Diamond Studio BT Series

SPECIFICATIONS
●Diamond studio 5-BT
▪ユニット構成:1インチ径ツィーター+5インチ径ウーファー ▪周波数特性:45Hz〜25kHz ▪トータル出力:140W ▪最大音圧:110dB ▪外形寸法:180(W)×290(H)×240(D)mm ▪重量:5.62kg

●Diamond studio 7-BT
▪ユニット構成:1インチ径ツィーター+6.5インチ径ウーファー ▪周波数特性:38Hz〜25kHz ▪トータル出力:150W ▪最大音圧:113dB ▪外形寸法:210(W)×340(H)×260(D)mm ▪重量:6.84kg

●共通
▪クロス・オーバー:2.2kHz ▪指向角度:135°×110° ▪入力:XLR/フォーン・コンボ×1系統、RCAピン×1系統、Bluetooth

製品情報

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