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WESAUDIO _Phoebe レビュー:アナログ音声回路とプラグイン制御を両立したAPI 500互換のマイクプリ

WESAUDIO _Phoebe レビュー:アナログ音声回路とプラグイン制御を両立したAPI 500互換のマイクプリ

 今回レビューするのは、WESAUDIOの_Phoebe(フェーベ)。同社NG500シリーズの製品で、API 500シリーズ互換のマイクプリです。NEVE 1073スタイルのクラスA回路設計を採用し、音声信号経路は完全にアナログですが、シリーズ内の他製品と同様に、専用のプラグインからリコールやオートメーションが可能。_Phoebe用プラグインは_Phoebeという名称で、WESAUDIOのWebサイトからダウンロードできるWesAudio Plugin Bundleに含まれます。Mac/Windows用で、AAX Native/AU/VST2&3に対応します。

CARNHILL製トランスを入出力に搭載

 前面上部には、ゲイン・ノブや+48Vファンタム電源スイッチ、位相反転スイッチ、入力インピーダンスの切り替えスイッチ(初期設定の1.2kΩ→300Ω)などがあります。下部には−1dBステップのPADノブ(最大−15dB)やマイク/ライン/Hi-Z楽器入力(XLR/TRSフォーン・コンボ)、USB端子を装備。ゲイン・ノブでは、プッシュ操作で入力レベルの切り替えが行えます(マイク/ライン)。また、ゲインとPADのノブは共にタッチ・センス式ロータリー・エンコーダーになっていて、プラグインにオートメーションを書く際にも使えます。

 内部基盤は、入出力段の両方にCARNHILL製のトランスフォーマーを備えているのが目を引きます。先述の通り回路設計は1073スタイルですが、基盤上はかなりモダンなパーツ構成で、WESAUDIOが既存の回路をコピーするのではなくブラッシュアップに注力したことがうかがえます。

_Phoebeの内部。上方に見える箱型の白いパーツが入力トランスで、右下の青いパーツが出力トランス。いずれもCARNHILL製となっている

_Phoebeの内部。上方に見える箱型の白いパーツが入力トランスで、右下の青いパーツが出力トランス。いずれもCARNHILL製となっている

 _Phoebeのセットアップは非常に簡単です。まず本体とコンピューターをUSB接続し、インストール済みの_Phoebeプラグイン上で本体のIDを選びCONNECT状態にします。プラグインの画面は本体の前面より情報量が多く、VUメーターがあったりゲインを0.1dB単位まで表示できたりと、_Phoebeが今どんな設定になっているのか瞬時に把握できます。裏を返せば、本体だけでは正確なゲイン値やPAD値などを把握し切れず、ほかのNG500シリーズ製品と同じくプラグインとの併用が前提になっていると感じました。

専用の_Phoebeプラグイン。液晶ディスプレイのような部分(画面右)に出ているのはゲイン値で、常に3つの数字を表示するが、少数第一位が下限

専用の_Phoebeプラグイン。液晶ディスプレイのような部分(画面右)に出ているのはゲイン値で、常に3つの数字を表示するが、少数第一位が下限

 _PhoebeプラグインにはConfig bankという機能があり、FRONT [A]ボタンとREAR [B]ボタンで2種類の設定を切り替えられます。これは、例えばボーカル録音で、2つのマイクをオーディションするときに便利。フロント(本体の入力)とリア(シャーシの入力)にそれぞれマイクを接続しておき、FRONT [A]とREAR [B]を切り替えることで、レベル調整済みの2本のマイクを比較試聴できます。

飽和すると低〜中域の存在感が強まる

 今回はレコーディングを想定し、ドラムやベース、エレキギター、ボーカル、ピアノなどに試しました。通常のゲイン設定では、WESAUDIOらしい癖のない自然でニュートラルなサウンドです。ノイズが少なく、周波数特性も超高域までなだらかに伸びていて、結果的にスウィートな音が得られます。マイク入力の最大ゲインは+75dBと十分なので、パッシブ・リボン・マイクやSHURE SM7Bのようにゲインの低いダイナミック・マイクも余裕でドライブできます。

 そして、PADを使いながらゲインをプッシュして(上げて)いくと徐々に飽和感が加わり、NEVEをほうふつさせるトランスフォーマー・サウンドが得られます。先述の通り、PADは−1dBステップで最大−15dB、ゲインは+0.5dB単位で調整できるため、両者を組み合わせるとかなり細かくプッシュ量(飽和感)を調整できます。

 プッシュしたサウンドは、中域と低域の存在感が強まるだけでなく、2kHz以上にも偶数次倍音が付加されたような華やかさがあります。そして、ドラムなどの打楽器においてはプッシュした分だけピーク(アタック)が抑えられ、しっかりとした太いサウンドが得られました。

 さて、製品仕様には“+28dBuのヘッドルーム”と記載されていますが、_Phoebeも他の500互換モジュールと同じく+22dBu辺りから飽和が顕著になります。500モジュールの駆動電圧は±16Vで、大型コンソールやほかのアウトボードよりも若干低いため、最大出力レベルも低めになることが多いです。その場合、出力レベル+22dBu辺りを最大と捉えてゲイン管理する必要があるのですが、そこについては_Phoebeも同様でした。プッシュする際は、この辺りに気を配るとトランスフォーマー・サウンドをうまく扱えると思います。

 入力インピーダンスを300Ωに切り替えたところ、ゲインが数dB上がり、トランジェントがわずかになまる印象。重心の下がった、どっしりとした音に変化します。今回のチェックでは、300Ω受けの方が使いやすいサウンドを得られることが多いと感じました。Hi-Z入力の音も好印象で、エレキベースの録音などでは本機だけで事足りることも多いでしょう。

 _Phoebeの音は1073よりも輪郭がはっきりしたハイファイな印象で、同社製品に共通するSN比の良さとトランジェントの滑らかさを感じます。そのため、1073に似ているか否かを基準にする方には_Phoebeはあまり響かないのではと感じた一方、ソースを選ばずに録音時の音質を底上げできて、豊かなトランスフォーマー・サウンドも得られる点で“万能な優等生”という表現が似合う一台だと思います。プロの方々にはもちろん、しっかりした品質で何にでも使いやすい最初のマイクプリを探している人にも、チェックしてみることをお勧めします。

 

中村フミト
【Profile】Endhits Studioを拠点に録音からミックス、マスタリングまでを手掛けるエンジニア。直近では、にしな、ビッケブランカ、あるふぁきゅん、帰りの会、仲手川裕介、DeNeelなどの作品に携わる。

 

WESAUDIO _Phoebe

152,900円

WESAUDIO _Phoebe

SPECIFICATIONS
▪周波数特性:20Hz〜20kHz(±0.5dB)、−3dBで測定すると高域は50kHzまで ▪全高調波ひずみ率:0.005%(@1kHz、+20dBu出力) ▪入力インピーダンス:1.2k/300Ω(マイク)、5.5kΩ(ライン) ▪ノイズ・レベル:−100dBu以下(ユニティ・ゲイン)、−70dBu以下(ゲイン最大) ▪入力換算雑音:−120dB以下 ▪最大消費電流:170mA(+16V)、100mA(−16V) ▪外形寸法:38(W)×133(H)×145(D)mm ▪重量:1.065kg

製品情報

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