WAVES CR8 & Cosmos レビュー:8レイヤーを持つサンプラー・プラグインとAI搭載サンプル管理ソフト

WAVES CR8 & Cosmos レビュー:8レイヤーを持つサンプラー・プラグインとAI搭載サンプル管理ソフト

 サンプラー・プラグインのCR8、そしてサンプル管理ソフトCosmosがWAVESからリリースされました。ワンショット・サンプルやループ・サンプルを手軽に入手&利用できるようになった今、こういったプラグイン&ソフトウェアはかなりニーズがあるでしょう。

現代の音作りに適した設計〜ドラッグ&ドロップで簡単にモジュレーション可能

 CR8は、一口にサンプラー・プラグインと言い切ってしまうのがもったいなく感じるような多機能さを持っています。後述するCosmosとの連携もあり、頭でイメージしている音を手早く作り出せて、アイディアを刺激してくれる存在です。

 CR8を開くと、サンプラーに求められる主な機能が一画面にズラッと現れます。ADSRエンベロープをはじめ、ピッチ・コントロールやボリューム、フィルターにスピード・コントロールなど、階層を潜り込むことなく機能を前面に用意してくれるのは非常にありがたいですね。しかもフィルター部分には効きの良いDRIVEノブを設置してくれていたり、パンにはWIDTHノブがあったり、テンポ・シンクが高機能だったりと、非常に“現代の音作り”へ適した設計になっていると感じます。サンプルの再生スキームも5種類(Beats/Harmonic/Melodic/Voice/Classic)が用意されており、用途に合わせて選択可能です。

 特筆すべき点としては、右下のExpand Tabボタン(▼マーク)をクリックすると現れるモジュレーション画面。ここからピッチ・コントロールやフィルターのノブを8つのソース(M1〜4、A1〜4)でモジュレーション可能です。しかもモジュレーション・ソースをアサインしたいノブへドラッグ&ドロップするだけで簡単に行えるので、ちょっとした実験感覚でみるみるうちに音を変容させることができます。M1〜4ではLFOまたはSEQ(ステップ・シーケンサー)を選択でき、シェイプやパターンも多く用意されています。A1〜4ではADSRエンベロープをソースとして利用可能です。作り込んだ音(サンプル)はCR8内で8つまで展開でき、レイヤーしたりMIDIキーボードの音高ごとに割り振ることができます。

CR8でExpand Tabを開いた様子

CR8でExpand Tabを開いた様子。8つもモジュレーション・ソース(M1〜4、A1〜4)が用意されており、M1〜4ではLFOとSEQ(ステップ・シーケンサー)、A1〜4ではADSRエンベロープが使用できる。モジュレーション・ソース名(赤枠)をアサインしたいノブへドラッグ&ドロップするだけという簡単な操作性だ

 CR8は音作りの幅が非常に広く、短いワンショット・ドラムからメロディ・ループまで、さまざまな音のデザインに役立ちます。感覚的にはシンセサイザーに近いというか、ウェーブテーブル的な動かし方を“自分が持っているサンプル”で実現できる仕様になっていると感じました。しかも用意されているノブの多くがMIDIラーン可能で、後々の曲展開までフォローしてくれるというのもうれしいポイントですね。

割り振られたタグでの検索だけでなくマップ表示で視覚的にサンプルを探し出せる

 CR8と同時に発表されたCosmosについても触れていきましょう。Cosmosはプラグインではなく、サンプル管理ソフトです。多種多様なサンプルを簡単に買ったり手に入れられるようになった昨今、あまりに所有サンプルが増え過ぎてお目当てのサウンドを探し出すまで一苦労……みたいな経験をしている方も少なくないのではないでしょうか。そんな人にお勧めなのがこのCosmosです。

サンプル管理ソフトのCosmos

サンプル管理ソフトのCosmos。サンプルを保存しているフォルダーを読み込めば、搭載されたAIがサンプルを識別して自動的にタグ付けが行われる。Cosmos上ではリスト表示での検索のほか、画面のようなマップ表示で視覚的にサンプルを探すことも可能。マップ表示ではサンプルが点で表され、種類ごとに色が分かれており、マウス・カーソルで点をドラッグすると、サンプルが次々にプレイバックされる

 Cosmosの使い方自体は非常に簡単。自分が持っているサンプルのフォルダーを読み込ませて、サンプルを使うときはCosmosで検索して選ぶだけ。読み込み時にCosmosに搭載されたAIがタグを自動で設定してくれるので、後の検索がとても楽になります。一つのサンプルに対して大体3〜5個のタグを付けてくれる上、タグのフレーズがかなり豊富です。“Vocal”だけでなく“Rap”があったり、“FX”だけでなく“Siren”があったり。ほかにも“Clean”と対になるような“Saturated”や、どうやって解析されたのか分からない“Vintage”など、たくさんのキーワードが散りばめられているのです。テンポやキー、楽器の種類も分析してタグ付けしてくれるので、欲しいサウンドが決まっている場合はリスト表示でのタグ絞り込みを使った探し方がお勧めですね。

 詳細なタグ付けがされている一方で、文字情報から完全に離れ、視覚的にサンプル選びをすることも可能なのがCosmosの“売り”です。宇宙空間をほうふつさせるマップ表示ではカラフルに点在する点の一つ一つが読み込んだサンプルとなっており、音の明暗(Brightness)や楽器の種類(Instrument)など、5種類のパターンで表示を変えられます。タグ検索も併用すれば、自由にサンプルをピックアップ可能です。

 CosmosはCR8からワンクリックで直接起動でき、選んだサンプルをダブル・クリックするだけでCR8に読み込める仕様となっています。CR8の設定を残したまま読み込むことも、リセットした状態で読み込むことも可能です。CR8とCosmosは、サンプルの管理から音作りまで一元管理できる、かなり貴重なプラグイン&ソフトウェアと言えるでしょう。

 

MET as MTHA2
【Profile】東京を拠点とする音楽プロデューサー/ビート・メイカー/DJ。ヒップホップ・コレクティブSound's Deliのプロデュース、MASS-HOLEやDABOなどのアーティストに楽曲提供をしてきた。

 

WAVES CR8 & Cosmos

CR8:4,466円/Cosmos:無償

WAVES CR8

REQUIREMENTS
▪Mac:macOS 10.14.6/10.15.7/11.6.2/12.1、INTEL Core I5/I7/I9/XeonまたはApple Siliconプロセッサー、AAX Native/AU/AudioSuite/VST/VST3に準拠(CR8)
▪Windows:Windows 10以降、INTEL Core I5/I7/I9/Xeonまたはクアッド・コアAMDプロセッサー、AAX Native/AudioSuite/VST/VST3に準拠に準拠(CR8)
▪共通項目:8GB以上のRAM、16GB以上のハードディスク空き容量、1,024×768以上のディスプレイ解像度(1,280×1024または1,600×1,024を推奨)

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