W. A. Production Loop Engine 2 レビュー:コード進行の自動生成や編集が可能なMIDIジェネレータープラグイン

W. A. Production Loop Engine 2 レビュー:コード進行の自動生成や編集が可能なMIDIジェネレータープラグイン

 今回ご紹介するのはW. A. ProductionのLoop Engine 2。コード進行の生成/編集が簡単に行えるプラグインです。Mac/Windowsで動作し、AAX/AU/VSTプラグインとして使用可能です。早速その機能を見ていきましょう。

キー/オクターブ/演奏スピードといったコード生成に関する細かい設定が可能

 Loop Engine 2はMIDI生成に特化しており、単体では音を鳴らすことができません。その代わりDAW上で任意のソフト音源を立ち上げたトラックにルーティングをして、音を鳴らすことができるという仕組みです。Loop Engine 2を立ち上げると“ループ・ビュー”という画面が開き、デフォルトでは4色のブロックに区切られた円が出現します(上掲の画面)。ルーティング手順については、画面右下にある小さな電球アイコンをクリックすると、各DAWでの設定方法を解説する動画リンクが開かれるので初心者でも安心です。

 ループ・ビューの各ブロックには、それぞれ1つのコードが割り振られます(初期設定時)。DAWの再生ボタンを押すと0時の位置からコード演奏がスタート。時計回りの順に各ブロックを経由してコードが鳴るという仕組みです。円はバウムクーヘンのような層を成していますが、これはコードの構成音を表現しており、特定の層をクリックすることでその音をミュートすることが可能です。

 画面中央部にはコード進行におけるプリセットの読み込みのほか、生成したコード進行の保存、演奏スピードの変更、キーやオクターブの設定といった機能が並んでいます。面白いのはCREATEというボタンで、押すとランダムにコード進行を生成してくれます。ランダムといっても設定したキーを元に絞り込んだコードの中から選んでくれるようです。そのため、自然なコード進行になりやすいように設計されています。いわば無料で何回も試せる“コード進行ガチャ”のような感覚で、楽しくコード進行を作ることが可能です。

 もし生成したコード進行の途中までを気に入った場合は、円の外側から2番目の層にある●をクリックして赤色にすることで、そのブロックは次からランダマイズの対象から外すことができます。この操作を繰り返すことで、理想のコード進行に近づけていくことができるでしょう。コード進行生成機能はコードに詳しくない方にとって便利であるのはもちろんのこと、コードに精通している人でもランダム性から生まれる意外なコードとの出会いがあり、アイディア出しツールとしての価値も感じます。

 また各コードは手動で編集することが可能。円の内側から2番目の層にある○をクリックすることで、“コード・ビュー”という編集画面が開きます。

コード・ビューでは、各ブロックにアサインされたコードに関するオクターブやベロシティ、転回形などを編集できる。コードの置き換えや、テンションコードの生成なども行える。また画面最下段にある鍵盤には、演奏しているコードのボイシングがリアルタイムに表示されるため、視覚的に確認することが可能だ

コード・ビューでは、各ブロックにアサインされたコードに関するオクターブやベロシティ、転回形などを編集できる。コードの置き換えや、テンションコードの生成なども行える。また画面最下段にある鍵盤には、演奏しているコードのボイシングがリアルタイムに表示されるため、視覚的に確認することが可能だ

 ここでは該当するブロックのコードにおけるオクターブの高さやベロシティ、転回形(コード構成音のうちどれを一番低い音に置くか)などを設定できるほか、コード自体の置き換えも可能です。

 コード自体を置き換える際は、コード・ビューの画面中央部に並ぶ21個の○ボタンからコードを選びます。S/T/Dの3列に分かれており、これらはコードの“機能”という音楽理論上の分類法に基づいています。非常にざっくり言えば役割の似たコード同士が縦に連なっている状態です。従ってコード進行の流れをあまり変えたくない場合は同じ列のコードから、逆に変えたいなら違う列から選ぶのが簡単な指針となります。また列の上の方へ行くほどキーから外れた応用的なコードが並ぶようになっており、ひねりを加えたければ上の方を選んでみるとよいでしょう。このように○ボタンの配列ルールさえ把握すれば、コードに関する知識がなくとも直感的にコードを探せるようになっています。

生成したコードに基づくアルペジオフレーズを作成 コード/フレーズはMIDIとしてDAWへエクスポート

 Loop Engine 2のもう一つの主要機能となるのが、アルペジオフレーズの編集機能。円の外周上にある○ボタンを押すと“ボイス/ノート・ビュー”という編集画面が開きます。

ボイス/ノート・ビュー。各ブロックはピアノロールのように分割され、各セグメントにはコードの構成音がアサインされる。そのため、生成されたコードに基づくアルペジオやフレーズを容易に作成することが可能だ。同時に複数のセグメントを選択し、和音を鳴らすこともできる

ボイス/ノート・ビュー。各ブロックはピアノロールのように分割され、各セグメントにはコードの構成音がアサインされる。そのため、生成されたコードに基づくアルペジオやフレーズを容易に作成することが可能だ。同時に複数のセグメントを選択し、和音を鳴らすこともできる

 ピアノロールを円状に配置したようなデザインになっており、各セグメント=ノートをクリックすることでアルペジオフレーズが作れるという仕組みです。同時に複数音を鳴らすこともできるため、アルペジオだけでなくコード弾きのフレーズ作りにも使えます。ブロック間でのコピー&ペーストも可能。DAWのピアノロール上で編集するのと違い、どこのセグメントを押してもコードの構成音しか鳴らない仕組みになっているため、フレーズの試行錯誤がかなり効率的に行えます。また今回のバージョン2からは、円状ではなく見慣れたピアノロール形式のエディターも搭載。こちらではコード構成音以外の音も含めたフレーズ編集も可能です。

 いいなと感じたのは、好きな音源でコードを鳴らせる点。常に完成形の音を聴きながらコード編集ができるので作業工程に無駄がありません。作成したコードは、画面中央にある“DRAG TO EXPORT”ボタンからDAWのトラックへMIDIデータとしてドラッグ&ドロップできます。DAW上のシーケンスとは独立したところで“コード進行管理場”として機能するLoop Engine 2は、特にヒップホップやEDMなどループするコード進行を主体とした作曲をするトラックメイカーやクリエイターの方々に役立つツールとなるでしょう。

 

吉松悠太(SoundQuest)
【Profile】音楽理論学習サイトSoundQuestの制作者。またPlugmon名義でサウンド/GUIデザイナーとして活動し、u-heに公式のスキン、ウェーブテーブル、プリセットの提供も行っている。

 

 

 

W. A. Production Loop Engine 2

beatcloud価格:16,240円

W. A. Production Loop Engine 2

REQUIREMENTS
▪Mac:macOS 10.13以降、AU/AAX/VST(いずれも64ビット)対応のホストアプリケーション
▪Windows:Windows 8以降、AAX/VST(いずれも64ビット)対応のホストアプリケーション
▪対応DAW:Image-Line Software FL Studio 12以降、steinberg Cubase 10以降、PreSonus Studio One 5以降、Ableton Live 9以降、Avid Pro Tools 11以降、Apple Logic Pro 10以降。MIDIルーティングできないDAWは非対応

製品情報

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