VSL Synchron-ized Saxophones レビュー:5種類のサックスを収録しミックス機能のプリセットも搭載するソフト音源

VIENNA SYMPHONIC LIBRARY Synchron-ized Saxophones レビュー:5種類のサックスを収録しミックス機能のプリセットも搭載するソフト音源

 VIENNA SYMPHONIC LIBRARY(以下VSL)よりSynchron-ized Saxophonesが発売されました。サックス音源としては、同社では以前からVienna Saxophonesがありましたが、今回はサンプル/データベース全体がアップデートされ、Vienna Synchron Player用に最適化、リニューアルした製品とのことです。早速見ていきましょう。

パッチで奏法を選択 好みの設定を保存することも可能

 クラシックで使用する楽器を得意とするイメージのVSLですが、サックスは比較的新しい時代にできた楽器のため、クラシックの楽曲に登場する機会はそこまで多くはありません。しかし、サックスが使用される楽曲では、サックス自体が目立つような楽曲も多く、吹奏楽やジャズ、ポップスなど、今や多様なジャンルで欠かせない存在の楽器です。

 そんな各所で活躍する楽器のため、音色や奏法の幅がかなり広いです。決まった音しか出せない音源だと、イメージとかけ離れてしまうこともしばしば。その辺りがどうかも気にしつつ起動してみます。

 Synchron-ized Saxophonesに収録されているサックスは、ソプラノ、アルト、テナー、バリトン、バスの5種類。まずは画面右側にあるブラウザーから音色のプリセットを選択(下の画面右)。

VIENNA SYMPHONIC LIBRARY Synchron-ized Saxophones レビュー:5種類のサックスを収録しミックス機能のプリセットも搭載するソフト音源

 プリセットからお好みのサックスを指定すれば、奏法=アーティキュレーションのパッチを選べるようになります。それぞれの音色ごとにショート/ロング・ノートなどの奏法、レガートやスタッカートなどのタイプ、リリースなどを設定して音を作ります。

アーティキュレーション選択部分。パッチは階層になっていて、一番左のロング・ノートなどの基本となる奏法(Aritculation)によって右側の項目が変化する。パッチは保存して、読み出すことも可能。また、キー・スイッチ操作にも対応し、C1、C2など起点となるMIDIノート(黄枠)に準じて、以下の項目にキー・スイッチ(赤枠)が割り振られている。起点となるMIDIノートはカスタマイズ可能

アーティキュレーション選択部分。パッチは階層になっていて、一番左のロング・ノートなどの基本となる奏法(Aritculation)によって右側の項目が変化する。パッチは保存して、読み出すことも可能。また、キー・スイッチ操作にも対応し、C1、C2など起点となるMIDIノート(黄枠)に準じて、以下の項目にキー・スイッチ(赤枠)が割り振られている。起点となるMIDIノートはカスタマイズ可能

 このとき、選択したパッチのみを読み込む仕様となっており、コンピューターのメモリーを圧迫せずに音出しまでスムーズで、制作がサクサク進められます。サックスの種類ごとに背景画像が変わるのもテンションが上がります。

 各パッチはキー・スイッチでの切り替えにも対応。デフォルトでもC0といった音域範囲外のちょうどいい音階に配置されていますが、カスタマイズも可能です。そのほか、MIDI CCの割り当てや、“速いフレーズだけノンビブラートに”など、リアルタイム演奏時に役立つ設定にも対応しています。

 パッチはそれぞれ項目を追加したり、自分好みのものを作成して保存でき、ドラッグ&ドロップですぐに呼び出せます。僕もそうですが、音色の切り替えが複雑な音源だとすぐに面倒に感じてしまう方には、非常にありがたい部分です。この辺りはSynchron Player共通の機能なのですが、使ったことがある方はもちろん、初めての方でも直感的に分かりやすく使える仕組みになっていると感じました。

あらゆるジャンルに対応できる幅広い音色

 さて音色の方はどうでしょう。先ほどサックスは音色に幅のある楽器と述べましたが、Synchron-ized Saxophonesは奏法の強弱をパッチ上で変えるのみでもかなり大きく音色が変わる印象。音色調節のパラメーターも豊富に用意されていて、クラシック向きの優しい音からVel.XF(ベロシティ・クロスフェード)を上げればかなりバキバキで硬めの音色になるといった具合で、どんなジャンルにも対応できそうです(下の画面中央下)。

VIENNA SYMPHONIC LIBRARY Synchron-ized Saxophones レビュー:5種類のサックスを収録しミックス機能のプリセットも搭載するソフト音源

 ラウンドロビンの数も多く同音の連続演奏でも自然なほか、Timbre Adjustという音色を柔らかくするパラメーターも効果的。特にその柔らかな音色は素晴らしく、さすがVSLと言ったところ。MIDI鍵盤でポロポロ弾いているうちに、サックス四重奏を作ってみたくなるほどです。

 ジャズをはじめ、さまざまなジャンル向けのアーティキュレーションもかなり豊富。ファンク系のリズム演出に使いたいスラップ・タンギング音や、パタパタというキー・ノイズも、“そんなにいる?”というレベルの数が収録されています。フォールやランもあり、ブラスとのアンサンブルなどでも活躍しそうですね。

 また、プリセットが用意されているミックス機能もあります。ポップスで使用する場合、離れた距離で収録された音源だと自由にパンが振れずに困ることも多いですが、基本的にはクローズドのドライで録音されており、ミックスでの自由度があり安心です。

ミックスのプリセットはブラウザー上で選択。楽器ごとに距離感やソロといった区分のほか、ローファイな雰囲気を作る“Dark”、高音を強調する“Smokey”などの設定が用意されている

ミックスのプリセットはブラウザー上で選択。楽器ごとに距離感やソロといった区分のほか、ローファイな雰囲気を作る“Dark”、高音を強調する“Smokey”などの設定が用意されている

アーティキュレーション選択部分の下にあるパラメーター部分でMIXタブ(黄枠)を選択するとミキサー表示になる。EQ、リバーブ、ディレイなどのエフェクトも搭載する

アーティキュレーション選択部分の下にあるパラメーター部分でMIXタブ(黄枠)を選択するとミキサー表示になる。EQ、リバーブ、ディレイなどのエフェクトも搭載する

独自のコンボリューション・リバーブを搭載

 クラシックとポップスの両対応という点において必ず課題となるリバーブも抜かりなし。”Synchron Stage Vienna”というコンボリューション・リバーブを搭載しており、オーケストラ上の任意の位置に音源が配置されるように設定できます。これがまた、本当にその配置で収録したかのようなリバーブ感で驚きました。これも各楽器を一つ一つ配置することを考えると、大変正確でスピーディなのでありがたいです。

 Synchron-ized Saxophonesは、サックス音源が絶対に必要という方だけでなく、持っておけばさまざまな楽曲でアンサンブルを華やかにできる、使い勝手の良い音源だと感じました。特にジャンルをまたいで制作される方、もしくはサックス音源を1つは持っておきたいという方には、その幅の広さからもぜひお試しいただきたい音源です。

 

野中“まさ”雄一
【Profile】作編曲家/キーボーディスト/ドラマー。AKB48、乃木坂46、氷川きよしなどのJポップをはじめ、幅広いジャンルの楽曲制作、編曲、プロデュースを行う。これまで1,000曲以上の楽曲を発表。

 

 

VIENNA SYMPHONIC LIBRARY Synchron-ized Saxophones

40,590円

VIENNA SYMPHONIC LIBRARY Synchron-ized Saxophones

REQUIREMENTS
▪Mac:macOS 10.13以降
▪Windows:Windows 10以降
▪共通項目:64ビットのみ、INTEL Core I5/I7/I9/Xeon以上のCPUを推奨、8GB以上のRAM(16GB以上を推奨)
▪対応フォーマット:AAX/AU/VST

製品情報

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