VIENNA SYMPHONIC LIBRARY Synchron Prime Edition レビュー:5種類の製品から選んだパッチを備えるエントリー向けオーケストラ音源

VIENNA SYMPHONIC LIBRARY  Synchron Prime Edition レビュー:5種類の製品から選んだパッチを備えるエントリー向けオーケストラ音源

 VIENNA SYMPHONIC LIBRARY Synchron Prime Editionは、サンプル・プレーヤーVienna Synchron Playerで動作するオーケストラ音源Vienna Synchronシリーズの入り口となるパワフルなパッケージです。Synchron Strings Pro(ストリングス)、Synchron Woodwinds(木管)、Synchron Brass(金管)、Synchron Harp(ハープ)、Synchron Percussion I(パーカッション)という5つのシリーズ製品からパッチを厳選し、重要度の高い楽器とアーティキュレーションを集約。MacとWindowsの両方で使用できます。

各アーティキュレーションの特性を調整可能

 Synchron Prime EditionのライブラリーはSynchron Stage Orchestraのメンバーが演奏したもので、録音はVIENNA SYMPHONIC LIBRARYのスタジオ・コンプレックスSynchron Stage Viennaの“Stage A”で行われています。

 まず立ち上げてみると、各楽器を直感的に選べることが分かります。ストリングスのパッチをロードしたときに、特に良いと思ったのはアーティキュレーションのキー・スイッチ。Staccato、Long notes、Tremolo、Pizzicatoなどの選択肢が用意され、それぞれのニュアンスを設定することができるのです。

ストリングスのアーティキュレーション・スイッチ(画面左)。各アーティキュレーションに複数のタイプが用意されており、さらにリリースのニュアンスなども選択できる。それぞれの楽器のアーティキュレーションを好みの特性にできるのがVienna Synchronシリーズの特徴だ

ストリングスのアーティキュレーション・スイッチ(画面左)。各アーティキュレーションに複数のタイプが用意されており、さらにリリースのニュアンスなども選択できる。それぞれの楽器のアーティキュレーションを好みの特性にできるのがVienna Synchronシリーズの特徴だ

 例えばLong notesには4つのタイプがあり、Normal attack、Soft attack、Marcato/sfz、Xfade tremoloから選択可能。私はさまざまなブランドのオーケストラ音源を使っていますが、中には発音タイミングが遅いものがあります。Synchron Prime Editionはデフォルトの状態でも速いのですが、ここでアタックの特性が決められるのはとても便利だと感じました。

 木管のセクションを見てみると、こうした音源で省略されがちなイングリッシュ・ホルンやバス・クラリネットを収めていて好印象。またフルートは高音の抜け感が奇麗で、アンサンブルの中でも存在感を出せるように感じます。木管もストリングスと同じくアーティキュレーションを調整でき、フルートのLong notesであればSenza Vibrato(ビブラートなし)、Con Vibrato(ビブラートあり)、XF Vibrato(ビブラートなし/ありの音色をクロスフェードさせる)といった選択肢があります。

 金管の音色は、いわゆるハリウッド・サウンドのように派手ではありませんが、その分、歌モノのアンサンブルでもなじみが良いでしょう。トランペットのアーティキュレーションの一つ=Short notesのStaccatoは抜けも良く、ファンファーレなどに使いやすそうです。

 パーカッション音源にも一通りの楽器がそろっています。ピッチ感のあるものとして、ティンパニーやシロフォン、グロッケンシュピール、チューブラー・ベル、チェレスタなど鍵盤打楽器まで収録。ピッチ感のないものは、スネアやバスドラム、タンバリン、タム、太鼓、シンバルなどです。個人的には、スネアが素直な音で使いやすいだろうと感じます。スネアはいつも選択に迷うので、オーケストラ曲のスネアにはこれを使うことが増えるかもしれません。

音色の読み込みがスピーディで実用的

 各楽器は複数のマイクをミックスして音作りすることができ、例えばストリングスの第一バイオリンにはクローズ・マイク(オンマイク)やオフマイク、アンビエンス・マイクなどのプリセットがあります。それぞれのマイクではEQやディレイ、内蔵リバーブへのセンド、パンなどをコントロール可能。まずは曲に合ったプリセットを選択し、その上で自ら直感的に追い込んでいけます。歌モノの中でシンセ・ストリングスのリバーブが強すぎるような場合、曲全体としてのリバーブ感のコントロールが難しくなりがちなので、あらかじめ調整しておけるのが良いですね。

内蔵マイクの音は、EQやディレイ、リバーブ、パン、ボリューム・フェーダーなどで調整可能。また、リバーブも別の階層でプリディレイやディケイ、減衰特性(ダンピング)、レベルなどをコントロールすることができる

内蔵マイクの音は、EQやディレイ、リバーブ、パン、ボリューム・フェーダーなどで調整可能。また、リバーブも別の階層でプリディレイやディケイ、減衰特性(ダンピング)、レベルなどをコントロールすることができる

 さて、筆者は16GBメモリーのコンピューターを使っているのですが、どんなに音が良い音源でも音色の読み込みに時間がかかるとストレスフルです。Synchron Prime Editionは、音色の読み込みが比較的速くて実用的。また、オーケストラ系の音が総合的に入っているのにライブラリー容量は約64GBとそこまで大きくないので、ノート・パソコンの内蔵ストレージに保存しておいても外出時などに便利かと思います。

 オーケストラ音源を初めて購入する人にも薦められるSynchron Prime Edition。オーケストラ曲でも歌モノのアンサンブルでも、アーティキュレーションやマイクのコントロールを活用することで、自分が作りたい音像へ容易に到達できそうです。シリーズ製品から抜粋したパッチで構成されるため機能的にはシンプルですが、いわゆる特殊奏法を駆使するような楽曲でない限り十分に有用だと感じます。

 

近谷直之
【Profile】CMや映画、ドラマ、ゲームなどへの楽曲提供のほか、ロック・バンド鋭児のプロデュースも行う。最近ではMBSで放送のTVドラマ『あせとせっけん』の音楽やNHK『100カメ』のテーマ曲を担当。

 

VIENNA SYMPHONIC LIBRARY Synchron Prime Edition

81,840円

VIENNA SYMPHONIC LIBRARY  Synchron Prime Edition

REQUIREMENTS
▪Mac:macOS 10.13/10.14/10.15/11(INTEL CPU)/12(INTEL CPU)、VST/AU/AAX Nativeに対応するホスト・アプリケーション(64ビット)
▪Windows:Windows 8/10(以上64ビット版)/11、VST/AAX Nativeに対応するホスト・アプリケーション(64ビット)
▪共通:INTEL Core I5/I7もしくはXeon以上のCPU、8GB以上のRAM(16GB以上を推奨)

製品情報

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