UJAM Usynth Deluxe レビュー:シンプルな操作体系を備えるネオソウルやR&B向きのソフト・シンセ

UJAM Usynth Deluxe レビュー:シンプルな操作体系を備えるネオソウルやR&B向きのソフト・シンセ

 シンプルな操作性の高品質なプラグインを数多く開発するUJAM。そのシンセサイザー系プラグインUsynthシリーズに、新しくUsynth Deluxeが追加された。

25種類のリズム・パターンと111種類の音色を88種類のエフェクトで加工できる

 Usynthは、Mac/Windowsに対応し、VST/AU2に準拠。ソウル系のジャンルに使えそうな温かみのある太いシンセ・サウンドを多く収録している。ほかの楽器になじみやすい音色なので、ヒップホップやポップスにも応用できるだろう。

 画面は上段/下段に分かれており、上段はSequencer/Synthesizer/Finisherの3セクションに分かれている。左のSequencerセクションではアルペジオなどのフレーズのリズム・パターンが選択可能で、プリセットは25種類。中央の大きなメイン・ノブで4分から32分まで音符の長さを選択し、その下にある4つのサブノブで音の長さ、スウィング具合、オクターブの幅、パターンの長さを細かく調整できる。メイン・ノブの左にはLatchという鍵盤から手を離してもパターンが鳴り続ける機能が付いているので、音を鳴らし続けた状態でノブをいじれば直感的に楽曲に合ったリズムを探すことができる。

 中央のSynthesizerセクションでは、サウンドのメインとなるシンセサイザーの音色を作成可能。ベース、パッド、リードなど、幅広い種類のプリセットを111種類収録する。メイン・ノブが2つあり、左のDark/Brightノブで音のトーン、右のFast/Slowノブで音の立ち上がり方やリリースの長さを調整する。音色によってかかり具合の印象も変わってくるので、実際に鳴らしながら理想の音を探すのがよいだろう。サブノブは3つ用意されていて、こちらは音色によってパラメーターが異なり、それぞれの音色の良いところを引き立たせてくれる。

 特に面白いと感じたのは、Sweepカテゴリーの音色だ。Fast/Slowノブを回したときのキャラクターの変化がとても顕著で音作りが楽しい。Slow側にすると隙間を埋めるパッドとしての役割を果たし、Fast側にすると存在感のあるサウンドに変化する。中でもTelephonicというプリセットは特に好みであった。この音色はFastにすると絶妙にアタックが遅めのエンベロープ・フィルターがかかり、レイドバック気味なモダン・ソウルなどに合わせるととても気持ち良いだろうなと感じた。

 Finisherセクションには、作り上げた音色の個性を際立たせるさまざまなエフェクトが用意されている。プリセットは88種類。エフェクトのかかり具合を調整するメイン・ノブのほかに4つのサブノブが用意されており、そのエフェクトに関するパラメーターを調整できる。コンプやフィルターなど音を微調整できるものから、ドライブやディストーションなど音色の方向性を大きく変えるものまで幅広い種類のエフェクトが用意され、Synthesizerセクションと同じくらい音色に影響を与えることもできるので、音作りの幅が格段に広がるだろう。

Surpriseボタンでパラメーターがランダムで変化する

 続いて画面下段を見ていこう。左にはSurpriseという文字の横にサイコロのマークが描かれたボタンがある。一見謎のボタンではあるが、よく見ると上段の各セクションにも右上にサイコロのボタンが設置されているではないか。なんと、これらのボタンをオンにした状態で下段のSurpriseボタンを押すと、オンになっているセクションのパラメーターの数値がランダムで切り替わるのだ。右にはSmall/Bigというノブがあり、数値の変化幅も設定できる。

画面下段左に表示されているボタン。上段の3セクションの右側に表示されるサイコロ・マークをオンにした状態で、Surpriseボタンを押すと、パラメーターの数値がランダムで変化する。右のSmall/Bigノブでは数値の変化幅を設定可能

画面下段左に表示されているボタン。上段の3セクションの右側に表示されるサイコロ・マークをオンにした状態で、Surpriseボタンを押すと、パラメーターの数値がランダムで変化する。右のSmall/Bigノブでは数値の変化幅を設定可能

 この機能を知ったとき、その名の通り驚き、とてもワクワクしてしまった。こういうランダム性は音楽制作において、自分の中からは生まれないインスピレーションを沸き立たせてくれる。誰かと一緒に制作しているときのように、プロダクションの視界を広げる役割を果たしてくれるのだ。“ユーザーの音楽制作を手助けしたい”というUJAMの想いが感じられた機能の一つである。ちなみにボタンの下にはUndo/Redoボタンも付いているので、試しながら気に入った値に簡単に戻すことができるのもうれしい。

 Surpriseボタンの右側にはディレイ、リバーブ、ボリューム・セクションが続いており、こちらも種類が豊富に用意されているのでとても使いやすい。また、最下段にはキーボードが表示され、その右にある?マークを押すと中央にタブが開く。そこではピッチ設定やスケール・コードなどの細かい設定が可能だ。

ピッチやSequencerのスケールなどの設定ができる画面。メイン画面の右下にある?マークを押すと開くことができる

ピッチやSequencerのスケールなどの設定ができる画面。メイン画面の右下にある?マークを押すと開くことができる

 Usynth Deluxeはすべてにおいて操作が簡単で、インスピレーションのヒントをくれる設計になっている。普段からソフト・シンセを使い慣れている人の制作の幅を広げてくれるのはもちろん、ソフト・シンセを使ってみたいがどの製品にするか迷っている人にとっても、もってこいのプラグインであること間違い無しだろう。

 

SPENSR
【Profile】シンガー・ソングライター/トラック・メイカーのカズキ_ウツミが2019年よりスタートさせたソロ・プロジェクト。ネオソウルやR&Bを軸にした楽曲を特徴としている。

 

UJAM Usynth Deluxe

10,000円

UJAM Usynth Deluxe

REQUIREMENTS
▪Mac:macOS 10.14以降(64ビット)、AU2/VST2に準拠(AAXにも近日対応予定)
▪Windows:Windows 10以降(64ビット)、VST2に準拠(AAXにも近日対応予定)
▪共通:8GB以上のRAM、1,280×768以上のディスプレイ解像度、UJAM App

製品情報

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