SOLID STATE LOGIC SSL 12 レビュー:4系統のマイク/ライン入力を搭載する12イン/8アウトのオーディオI/O

SOLID STATE LOGIC SSL 12 レビュー:4系統のマイク/ライン入力を搭載する12イン/8アウトのオーディオI/O

 近年、2イン/2アウトのSSL 2や2イン/4アウトのSSL 2+といったUSBオーディオ・インターフェースをリリースしているSOLID STATE LOGIC(以下、SSL)。筆者もSSL 2+のユーザーですが、今回これらの製品ラインナップにSSL 12が追加されました。詳しく見ていきましょう。

SSL独自のマイクプリを4基内蔵 SL4000サウンドを再現する4Kスイッチ

 12イン/8アウトの入出力を備えるSSL 12は、Mac/Windows対応のUSBオーディオ・インターフェース。最高32ビット/192kHzのAD/DAコンバーターを搭載しています。また、サイズは321(W)×196(H)×104(D)mm、重さは1.1kg。SSLコンソールをほうふつさせるカラーリングやノブは、SSL好きならテンションが上がること間違いないでしょう。ついデスクの中心に置きたくなります。

 トップ・パネルにはCHANNEL 1〜4が並びます。それぞれSSL独自のマイクプリを内蔵し、48Vファンタム電源のオン/オフ・スイッチ、マイク/ライン入力の切り替えスイッチ、ローカット・スイッチ、入力レベル・メーター、ゲイン・ノブ、そして同社SL4000シリーズ・コンソールのサウンド・キャラクターを再現するというエンハンス・エフェクトを備えた4Kスイッチを搭載。続くトップ・パネル右側には、トークバック・マイク、SSL 12とコンピューター間のUSB接続状態を示すLED、モニター・レベル・ノブ、2系統のヘッドフォン・ボリューム・ノブ、モニター用ライン出力のオン/オフを切り替えるCUTスイッチ、モニター用ライン出力1/2と3/4を切り替えるALTスイッチ、トークバック・マイクのオン/オフを切り替えるTALKスイッチを備えています。モニター・レベル・ノブは大きくて操作しやすく、トップ・パネルの傾斜角度も絶妙です。

 リア・パネルも見てみましょう。バス・パワー電源供給とコンピューター接続を兼ねたUSB(Type-C)や、ADATオプティカル入力(TOSLINK)、MIDI入出力、モニター用ライン出力×4(TRSフォーン)、マイク/ライン入力×4(XLR/TRSフォーン・コンボ)を搭載。ちなみにモニター用ライン出力はDCカップリング対応のため、例えばCV入力のモジュラー・シンセをコントロールすることが可能です。

リア・パネル。左から電源スイッチ、バス・パワー電源供給とコンピューター接続用のUSB(Type-C)、ADATオプティカル入力(TOSLINK)、MIDI入出力、ライン出力×4(TRSフォーン)、マイク/ライン入力×4(XLR/TRSフォーン・コンボ)を備えている。ライン出力はDCカップリング対応のため、CV出力が可能だ

リア・パネル。左から電源スイッチ、バス・パワー電源供給とコンピューター接続用のUSB(Type-C)、ADATオプティカル入力(TOSLINK)、MIDI入出力、ライン出力×4(TRSフォーン)、マイク/ライン入力×4(XLR/TRSフォーン・コンボ)を備えている。ライン出力はDCカップリング対応のため、CV出力が可能だ

 なおフロント・パネルには、ギターやベースなどの録音に便利なHi-Z入力対応のライン入力(フォーン)が2系統と、ヘッドフォン出力(ステレオ・フォーン)が2系統あります。

CUT/ALT/TALKスイッチに任意の機能をアサイン タイトな低域とフラットな中高域

 セッティングは非常にシンプル。SSL 12とコンピューターをUSBケーブルで接続し、モニター・スピーカーやヘッドフォンをつなぐだけです。コンピューターがMacの場合はドライバー不要なのでとても簡単。Windowsの場合は、事前に専用ドライバーをインストールする必要があります。あとはマイクやギターなどを接続すれば、ものの10分でホーム・スタジオの完成です!

 さらに無償のマネージメント・ソフト“SSL 360°”をインストールすれば、この中で立ち上がる“SSL 12ソフトウェア・ミキサー”と連携して、SSL 12のルーティングや機能のカスタマイズなどを行えます。

無償の専用マネジメント・ソフトSSL 360°に搭載された、SSL 12ソフトウェア・ミキサーの画面。ループバック設定やヘッドフォン出力インピーダンスの変更など、ルーティングや機能のカスタマイズが行える

無償の専用マネジメント・ソフトSSL 360°に搭載された、SSL 12ソフトウェア・ミキサーの画面。ループバック設定やヘッドフォン出力インピーダンスの変更など、ルーティングや機能のカスタマイズが行える

 例えばループバックを設定したり、ヘッドフォン出力を標準/高感度/高インピーダンスから選択できたり、CUT/ALT/TALKスイッチにDIMやMONO SUMといった機能をアサインすることが可能です。

 それではリファレンス音源を流して、スピーカーからの出音を普段のものと比較してみましょう。低域はタイト、中低域は少しスッキリしていて、中域から高域まではフラットな印象。これはアレンジやミックスなどの作業において、とても使いやすい音だなと感じました。

 ヘッドフォン出力のサウンドもチェックしてみましょう。こちらは全体的にフラットな印象。ヘッドフォン・アンプとしても使えるクオリティです。

 次はコンデンサー・マイクをSSL 12に接続し、マイクプリのサウンド・チェック。低ノイズで62dBという広大なゲイン・レンジを持っていることに驚かされます。音色はとてもナチュラルで、ベースやピアノなどの録音にも良さそうだなと思いました。4Kスイッチをオンにすると、中低域のナチュラルな感じは残りつつ、中高域が気持ちよくエンハンスされ、押し出しの強い音に変化。ボーカルやアコギなどの録音に適しているでしょう。4Kスイッチのオン/オフだけで2種類のサウンド・カラーを使い分けられるのは、とても便利です。

 なお、SSL 12にはソフト/プラグイン・バンドルのSSL Production Packが付属。ボーカル用プロセッサーのSSL Native Vocalstrip 2やドラム用プロセッサーのSSL Native Drumstripのほか、ソフト音源のNATIVE INSTRUMENTS Hybrid Keys、DAWのABLETON Live Liteなど、厳選された制作ツールが収録されています。プロはもちろん、ビギナーにとってもうれしい内容でしょう。

 SSL 12が一台あれば、伝統のSSLサウンドを軸とした録音/制作環境を作ることが可能です。これからDAWでの制作を始めようとしている方から、持ち出し用の制作システムをお考えの方にもお薦めしたい一台だと言えます。

 

小林敦
【Profile】1986年にサウンドインスタジオへ入社し、1991年からはフリーで活動するエンジニア。大手テーマ・パークのパレードやショウの音楽を中心に、ポップスやアニメ・ソングまで幅広く手掛けている。

 

SOLID STATE LOGIC SSL 12

オープン・プライス

(市場予想価格75,900円前後)

SOLID STATE LOGIC SSL 12

SPECIFICATIONS
▪最大同時入出力数:12イン/8アウト ▪ビット/サンプリング・レート:最高32ビット/192kHz ▪外形寸法:321(W)×196(H)×104(D)mm ▪重量:1.1kg

REQUIREMENTS
▪Mac:macOS 10.15以降、標準ドライバーで動作
▪Windows:Windows 10/11、ASIO/WDMドライバーで動作

製品情報

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