SOLID STATE LOGIC Connex レビュー:4つの音響処理モードでWeb配信や音楽録音などに対応するUSBマイク

SOLID STATE LOGIC Connex レビュー:4つの音響処理モードでWeb配信や音楽録音などに対応するUSBマイク

 SOLID STATE LOGIC(以下SSL)からMac/Windows対応のUSBコンデンサー・マイクConnexが登場。最初は、なぜSSLがUSBマイクを?と思いましたが、徐々に製品のクオリティが気になりはじめました。本機は、4つの音響処理モードを切り替えて使うというユニークな仕様です。期待感を胸に見ていきましょう。

4つのマイクやオーディオI/O機能を搭載

 Connexは、ボディを覆うような金属製グリルを備えずっしりとしており、SSL製プロ機譲りの作りの良さを感じます。4つのマイクが外側に向けて搭載され、音響処理モードに応じて内蔵DSPでの音作りが施される仕組みです。

 前面にヘッドフォン端子(ステレオ・ミニ)、背面にはUSB端子(USB-C)を装備し、マイク音声をコンピューターへ入力できるほか、コンピューターからの音声をヘッドフォン端子でモニターすることも可能。つまりUSBオーディオI/Oとしても機能するわけで、AD/DAは最高24ビット/96kHzをサポート。コンピューター接続時はUSBバス・パワーで動作します。またモニター・ミックス機能を使用すれば、マイクの音声を直接ヘッドフォン端子に割り当てられるので、レイテンシーの無い状態でモニターできます。

背面には、コンピューターと接続するためのUSB端子(USB-C)を装備。ConnexはUSBオーディオI/O機能を備え、コンピューターと双方向で音声をやり取りできる

背面には、コンピューターと接続するためのUSB端子(USB-C)を装備。ConnexはUSBオーディオI/O機能を備え、コンピューターと双方向で音声をやり取りできる

全操作を本体のタッチ・パネルで行える

 コンピューターとの接続を前提とするUSBマイクが多い中、Connexは本体USB端子に電源をつなぎさえすればスタンドアローンで使用可能。その際、マイクの音声はヘッドフォン端子から出力されます。底面には1/4インチのカメラ三脚用ネジ穴があり、付属の3/8インチ・アダプターを使えばマイク・スタンドにも取り付けられます。

 すべてのコントロールは、ソフトなどを使用せずに上面のタッチ・パネル(ブランド・ロゴを含む黒い部分)のみで行う仕様。この辺りは最初に取扱説明書を読む必要があるので、どうやって使うのかな?と戸惑ってしまうかもしれません。でも安心してください、この記事を読み終える頃にはきっと使えるようになっていますので。

 音響処理モードを切り替えるには、まずロゴ下の−と+を同時に長押しします。するとロゴが点滅するので、手を離しましょう。そこからロゴをタップしていくとモードを選択でき、白く光るときはソロ・モード、緑色はグループ・モード、ピンク色はボーカル・モード、青色はミュージック・モードとなります。選択を決定する際は−と+を同時に長押しするか、そのまま触らなければ20秒で自動決定されます。

音響処理モードによって、ブランド・ロゴのライトの色が変わる。白色はソロ・モード、ピンク色はボーカル・モード、緑色はグループ・モードで、メイン写真の青色がミュージック・モードだ

音響処理モードによって、ブランド・ロゴのライトの色が変わる。白色はソロ・モード、ピンク色はボーカル・モード、緑色はグループ・モードで、メイン写真の青色がミュージック・モードだ

 決定後、−と+はヘッドフォン音量の調整に使用でき、ロゴをタップすると赤く点灯してマイクがミュートされます。

マイクをミュートすると、ブランド・ロゴが赤く点灯する

マイクをミュートすると、ブランド・ロゴが赤く点灯する

 ミュートにも動作パターンが幾つかあり、タップだと通常のミュート、長押しすれば押している間だけミュートされるモーメンタリー動作、通常ミュート時に長押しすると押している間のみミュートが解除されるため、トークバック・マイク的な動作となります。例えばAVID Pro Toolsの Aux I/O機能(Core AudioデバイスをPro Toolsの補助的な入出力として使える機能)を使い、Connexの入力を適当なトラックに立ち上げれば、小規模なスタジオでもトークバックが可能です。

複数の声を自動ミックスするグループ・モード

 音響処理モードを見ていきましょう。ソロ・モードは単独でのWeb会議参加やナレーションなどに向けたもので、前面のマイクのみが動作します。声に特化した音響処理が施され、小さな声でもしっかりと聴き取れるようなダイナミクス調整が特徴的。マイクを口元から離しても声の明瞭度が落ちず、カプセルと内蔵プリアンプの質の高さを感じます。また環境音を低減すべく、ノイズ・サプレッサー的な処理もなされている模様。EQもかかっているようですが、ローカットされている印象はなく聴き取りやすい音にしている程度です。

 グループ・モードは複数人の声を拾うのに適し、机を囲む何人かの声を収めるようなシチュエーションに有用。すべてのマイクが生かされます。音響処理はソロ・モードと同様ですが、それに加えてオート・ミキサーが動作し、“話者がいる方のマイクの音量を大きく、ほかは小さく”といったバランスに。出力は、全マイクが混ざったデュアル・モノ音声です。

 ボーカル・モードは、その名の通り、歌の収音に向いた音質。EQやダイナミクス処理はほとんど施されず、ソースがそのまま入力されるイメージです。マイクは4つとも使用されますが、基本は前面のマイクの音量が大きめで、左右はステレオ感が出るくらい、背面は正面より小さめとなります。出力は、4つのマイクがミックスされたステレオ音声です。

ミュージック・モードは大音量の入力に対応

 ミュージック・モードは、ボーカル・モードよりも全体のゲインが低めに設定され、より大きな入力音量に対応。アコギの弾き語りを収音するような場合は、こちらの方が良い音量感になりそうです。ボーカル・モードとの違いは基本的にゲインのみで、ほかは同じだと思われます。

 4つのマイクの個別音声+それらの2chミックスの計6chを出力できる“イマーシブ・モード”も特徴。ミックスの音質は、選択中の音響処理モードに準じます。各マイクの個別音声は、基本的には処理されませんが、ソロおよびグループ・モード時はリミッター的な効果のみ感じました。

 SSLが作っただけあり、一線を画すUSBマイクという印象のConnex。Web会議などで普通にUSBマイクとして使う際のクオリティも高いので、その用途だけでも欲しいと感じましたし、SSLクオリティのDACとしても使えるので一家に一台あってよいのではと思います。SSLロゴを大きく配したデザインは、エンジニアとしてはニヤリとしてしまいますね!

 

森田良紀
【Profile】studioforesta拠点に録音から映像撮影、配信まで行う。近年TikTokLIVE公式配信を多数手掛け、RADWIMPS、Perfume、SEKAI NO OWARI、Mrs. GREEN APPLEなどの映像制作を行う。

 

SOLID STATE LOGIC Connex

オープン・プライス

(市場予想価格:27,720円前後)

SOLID STATE LOGIC Connex

SPECIFICATIONS
▪形式:コンデンサー(クアッド・マイクロフォン・アレイ) ▪接続:USB 2.0 ▪電源:USB給電(USBバス・パワー対応) ▪外形寸法:92(W)×40(H)×92(D)mm ▪重量:200g ▪対応OS:Mac(macOS 10.14以降。Core Audioに準拠)、Windows(Windows 10以前では、SSL USB Control PanelアプリケーションとASIOドライバーをSSLのWebサイトから取得し、インストールする必要あり。Windows 10のバージョン1703以降はクラス・コンプライアント動作)、iOS/Android(公式サポート外だが、動作する可能性あり。詳細は公式のユーザー・ガイドを参照)

製品情報

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