SAMURAI SAMPLES Taiko-Motofuji- レビュー:太鼓奏者“茂戸藤浩司”による演奏を収めたKontakt専用ライブラリー

VIENNA SYMPHONIC LIBRARY Synchron-ized Saxophones レビュー:5種類のサックスを収録しミックス機能のプリセットも搭載するソフト音源

 日本を代表する太鼓奏者、茂戸藤浩司氏の演奏を収めたNATIVE INSTRUMENTS Kontakt専用の音源ライブラリー、Taiko-Motofuji-。32ビット/96kHzで録音(編集後24ビット/48kHzにダウン・サンプルして収録)されたそのサウンドは、アンビエンスを適度に抑えたタイトな音色で、シネマティックな音楽だけに留まらず、現代的なポップスにも使いやすい音源となっている。ちなみに、筆者も普段は32ビット/96kHzで楽曲を制作しているので、まさにドドンと打ってつけなライブラリーなのである。

オリジナルの“スネア太鼓”や掛け声“咆哮”を収録

 収録されている太鼓の種類も魅力的で、桶胴太鼓、締太鼓、丸一太鼓、宮太鼓、担ぎ桶太鼓などの伝統的な太鼓に加え、茂戸藤氏オリジナルの“スネア太鼓”や、チャッパ、チャンチキなどの金物、掛け声“咆哮”も収録されており、もうこれさえあれば、和もの打楽器で悩むことはほぼないのではなかろうかと思わせてくれる内容だ。

 期待感が膨らむ中、鼓動の高鳴りを抑えつつ、まずはユーザー・インターフェースをチェックしてみる。目的の楽器、例えば桶胴太鼓をKontakt内に読み込むと、両脇の鳳凰に見守られる中、画面中央に大きく楽器のイラストが表示される(メイン画像)。その真上にはLOOPのON/OFFスイッチがあり、左右には“REVERB”と“MASTER”のツマミ。そして、画面上部には、選択している音の波形が表示される。それぞれの機能が、分かりやすく明快に表示されているので、最初から操作に悩む心配はほぼない。齢50を目の前にして老眼の進行を感じる筆者にとっては、大きな文字表示はとても助かるのである。また“REVERB”のツマミは苦無(くない)、“MASTER”のツマミは手裏剣のイラストになっており、全体のデザインの統一性に一役を買っている。

ミキサーで各マイクを個別に調整できる

 続いて、操作方法をチェックしてみよう。ライブラリーを読み込むと、おおよそではあるが鍵盤低域部に単音、中域部にループ音源、高域部にはテンポによらない即興演奏が配置される。この即興演奏がなかなか興味深く、テンポをカッチリ決めた楽曲中で使うことは難しいが、例えばプリイントロで効果的に使用したり、アウトロでリタルダンドする際に使っても面白い。打ち込みでは表現しづらい、いわゆる“ヒューマナイズ”なエッセンスを得られる機能である。また、各ライブラリーにおいて、単音よりさらに低域部に、選択したループに類似したパターンを検索できるキー・スイッチ機能が搭載されている。これを使えば手早くループのバリエーションを確認できるので、制作工程がとてもスムーズになること請け合いだ。単音については、各鍵盤にさまざまな奏法が割り当てられており、その内容は画面下部にて確認することができる。

鍵盤上の音の割り当てが表示された画面。左から、キー・スイッチ(赤)、単音(青)、ループ(緑)、即興演奏(黄)と並んでおり、左下には、選択している音の奏法など、詳細が表示される(この場合は”High Flam2”)

鍵盤上の奏法の割り当てが表示された画面。左から、キー・スイッチ(赤)、単音(青)、ループ(緑)、即興演奏(黄)と並んでおり、左下には、選択している音の奏法など、詳細が表示される(この場合は”High Flam2”)

 前述したメイン画面の左右に表示される“REVERB”と“MASTER”のツマミは、言わずもがな左右に回すことにより簡単に値の調整が可能である。さらに、画面下部のタブを“Mixer”に切り替えると、Close/Room/Ambientなど、各マイクのボリュームやパンを個別に調整することができ、音作りの幅が一段と広がるのである。

ミキサーの画面。下部のタブから切り替えて表示する。Close/Room/Ambientなど、各マイクのボリュームやパンを個別に調整可能

ミキサーの画面。下部のタブから切り替えて表示する。Close/Room/Ambientなど、各マイクのボリュームやパンを個別に調整可能

ポップスや電子音楽にもなじむタイトな音

 そして、肝心の音について。冒頭でお伝えした通り、単音、ループ共にタイトに収録されているのが特徴である。和太鼓においてアンビエンスを多く含んだサンプルの場合、単独での使用やシネマティックな音楽には適しているのだが、ポップスや電子音楽では、往々にして音が埋もれてしまう。しかしTaiko-Motofuji-は、そのようなジャンルの音楽にもなじみが良く、一体感のあるグルーブをもたらしてくれる。翻って、スケールの大きな音色が必要な場合は、先ほど紹介した“REVERB”のツマミやミキサーの画面でマイクの値を調整することで、音場を広くすることも可能である。

 また、グルーブという観点で言えば、ループのリズム・フレーズが秀逸で、打ち込みのリズムやブレイクビーツなどとミックスしても、十二分に成立する。これは、さまざまなジャンルのミュージシャンとコラボレートしてきた茂戸藤氏のキャリアに起因するところが大きいのであろう。

 実際に、桶胴太鼓と筆者が所有するシンプルな4つ打ちのループ音源をミックスして鳴らしてみたところ、いともたやすくジャパンナイズされたリズム・トラックが完成した。少しクセのあるアブストラクトなビートと合わせても、絶妙にグルーブがマッチするのである。劇伴制作において、和ものアレンジが必要なことが時折あるので、これから即戦力になることは間違いないであろう。Taiko-Motofuji-は、筆者が迷いなく太鼓判を押し、薦めることのできるライブラリーである。

 

フジムラトヲル(TECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUND)
【Profile】作編曲家/ベーシスト、3人組のテクノ・ユニット、TECHNOBOYS PULCRAFT GREEN-FUNDのリーダー。『ウルトラマンブレーザー』や、アニメ『賭ケグルイ』の劇伴なども手掛ける。

 

 

SAMURAI SAMPLES Taiko-Motofuji-

22,000円

SAMURAI SAMPLES Taiko-Motofuji-

REQUIREMENTS
▪メディア:ダウンロード販売
▪データ・フォーマット:WAV、NATIVE INSTRUMENT Kontakt
▪容量:9.66GB
▪動作環境:Kontakt 6.7.1のフルバージョン上で動作

製品情報

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