「RADIAL HDI」製品レビュー:オプトコンプやJENSENトランスを搭載したスタジオ用アクティブDI

DIやリアンプ・ボックスでおなじみのRADIALよりスタジオ用アクティブDI「RADIAL HDI」が登場

撮影:川村容一(メイン)

 

 DIやリアンプ・ボックスでおなじみのRADIALより、特大のJENSEN製トランスを搭載した新しいタイプのスタジオ用アクティブDI、HDIが登場しました。本体中央に設置されたRADIAL独自のCOLORコントロールを回すと、クリーン・サウンドとディストーション・サウンドを直感的にブレンドすることが可能という本製品、そのサウンドや機能はいかほどのものか、早速チェックしていきましょう。

シンセをモノラル・ミニでじかに接続可能
ひずみをかけられるCOLORノブを搭載

 RADIALの製品は色使いが格好良いと以前から思っていましたが、今回もナイスなカラーリングでやる気が出ます。ということで、各機能を見ていきましょう。サイズは2Uのハーフ・ラックで、耳が付属しているため2台並列マウントができます。入力は、フロントとリア・パネルにフォーンを装備。フロントの入力を使うとリアからの入力は無効になります。また、リアにはSYNTH INPUT(モノラル・ミニ)を用意し、モジュラー・シンセなどに接続可能。フロントのTHRU 端子(フォーン)はアンプなどに分岐するためのバイパス出力で、リア・パネルにはJENSENのトランスを搭載したライン・アウト(XLR)とマイク・アウト(XLR)、アンプ・シミュレーターなどに接続するPROCESSED OUT(フォーン)があります。直接インターフェースに接続して録るも良し、マイクプリを通して色付けするも良し。それぞれが独立しているので同時に出すこともできます。

フロント・パネルには、ライン・イン(フォーン)とアンプなどに分岐させるためのバイパス出力THRU(フォーン)を用意。また、入力インピーダンスを調整するHi-Zスイッチは下の位置で200kΩ、上の位置で2MΩになっている。右にはLEVELノブ、オプトコンプのOPTスイッチ、ひずみを追加できるCOLORノブ、ハイパス・フィルターのHPFスイッチ、高域と中高域をエンハンスするPRESENCEノブ、グラウンド・ループを解消してハム・ノイズを除去するLIFTスイッチを装備している

フロント・パネルには、ライン・イン(フォーン)とアンプなどに分岐させるためのバイパス出力THRU(フォーン)を用意。また、入力インピーダンスを調整するHi-Zスイッチは下の位置で200kΩ、上の位置で2MΩになっている。右にはLEVELノブ、オプトコンプのOPTスイッチ、ひずみを追加できるCOLORノブ、ハイパス・フィルターのHPFスイッチ、高域と中高域をエンハンスするPRESENCEノブ、グラウンド・ループを解消してハム・ノイズを除去するLIFTスイッチを装備している

 リア・パネル。ライン・アウト(XLR)の信号レベルを下げてクリッピングを回避するための−15dB PAD、ライン・アウト(XLR)、マイク・アウト(XLR)、ステージ・アンプやアンプ・モデリング・ユニットへの接続に使用するPROCESSED OUTPUT(フォーン)、モジュラー・シンセなどに接続するためのSYNTH INPUT(モノラル・ミニ)、INPUT(フォーン)を装備

リア・パネル。ライン・アウト(XLR)の信号レベルを下げてクリッピングを回避するための−15dB PAD、ライン・アウト(XLR)、マイク・アウト(XLR)、ステージ・アンプやアンプ・モデリング・ユニットへの接続に使用するPROCESSED OUTPUT(フォーン)、モジュラー・シンセなどに接続するためのSYNTH INPUT(モノラル・ミニ)、INPUT(フォーン)を装備

 次にフロントのLEVELノブは、12時の位置が標準。HDIの3つのノブはすべて20段階のクリック式となっており、10クリック目が12時の位置に来ます。クリック式と言えどカチカチと鳴らず、スライド感のある柔らかい変わり方をします。

 

 目玉機能の中央部。ここはOPTO、COLOR、HPFの3つが密接に関係しています。まずCOLORノブを時計回りに回すと、トランスのサチュレーションとアンプで得られるようなひずみが加わり、LEVELノブの入力加減によっても変化します。OPTOスイッチは入力された音に内蔵のオプトコンプをかけられるもの。COLORノブが7〜12 時の位置(ほぼクリーン・トーンの状態)でのみ動作します。ちなみに、COLORを7〜12時に合わせると多少サチュレーションがかかるようですが、大きな音色変化はありません。スイッチは3段階で切り替わり、下位置がバイパス。HPFスイッチは3段階のハイパス・フィルターで、上が100Hz 以下の帯域をカットする設定、中央で40Hz 以下の帯域をやんわりとロールオフ(−6dB/Oct)します。下位置がバイパスです。HPFは、COLORの回路を通過したサウンドのみにかかり、原音にはかかりません。ひずみで低域が増幅し過ぎてしまったときに効果を発揮しますね。COLORの左側にOPTO、右側にHPFという配置も感覚的で使いやすいです。

 

 PRESENCEはギター・アンプのそれと同じように高域と中高域をエンハンスし、左に回し切った位置でフラット。また、ライン出力に対応したピーク・メーターは、コンプやひずみエフェクトも含めたすべてが反映されます。

ボディ感やツヤのあるワイド・レンジな音
PRESENCEは粗い質感ながらも高級感がある

 実際に音を出していきます。今回はエンジニア山本創氏の協力を得て、KASHIF(PanPacificPlaya)氏にエレキギター、ベース、アナログ・シンセを演奏してもらいました。

 

 まずはDIとしての素地を探るべくエフェクトは使わずに、DIのCOUNTRYMAN Type85、RUPERT NEVE DESIGNS RNDIと音質の比較をします。Type85はトランジェントをよくとらえますがボディ感が欲しいところで、RNDIはボディ感などのバランスは良いがトランジェントがもう少し欲しいところ。HDIはトランジェントも感じるとともにボディ感とツヤ感もしっかりとあり、よりハイファイでワイド・レンジな印象です。癖も無く自然なので、DIとして十二分に活躍するでしょう。

 

 次は、ひずみを利用したサウンド・チェックです。LEVELを上げると、2時の位置くらいからひずみが顕著になってきました。ディストーションで意図的にひずませた音というよりは、サチュレーションの延長にあるような、自然発生型ディストーションです。加えてCOLORを時計回りに回すと、粗い粒立ちのひずみが加わりました。やや攻撃的で元気なひずみはベースやギター・アンプの質感に近いです。このときに、HPFで低域の濁りを抑えられるのは大変有益。筆者には中央位置の40Hzローカットがしっくり来ました。

 

 一方クリーン・サウンドで動作するOPTOも、現在の制作環境に適した仕様になっていると気付きました。中央位置にしたときのアタックが止まるコンプ感が、アンプ・シミュレーターに送るときの余計なピークを抑えてくれるので、確かな音作りが可能になりそうです。PRESENCEは粗い質感ながらもキラッとした高級感もあり、ノブをぐいっと回して“ギャンッ”という感覚よりは“ジワッ”としっかりかかる印象でした。

 

 DIとしてのクオリティもさることながら、現在の制作環境やデジタル機材との親和性にも着目したHDIは、ベースやギターだけでなく、シンセなどすべてのライン楽器でも良い具合に使うことができるでしょう。生み出せる音色の幅も広いので、スタジオでも宅録でも、エンジニアでもミュージシャンでも、状況や人を選ばずに活躍してくれそうです。

 

福田聡
【Profile】フリーで活動するレコーディング・エンジニア。ファンクや ヒップホップといったグルーブを重視したサウンドを得意とし、ENDRECHERIやSANABAGUN.、K、EMILANDなどの作品を手掛け

 

RADIAL HDI

オープン・プライス(市場予想価格:88,000円前後)

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SPECIFICATIONS  ▪周波数特性:1Hz〜100kHz(+0.25/−3dB/ライン・アウト)、20Hz〜20kHz(+/−0.1dB/ライン・アウト)、10Hz〜80kHz(+0.25/−3dB/マイク・アウト) ▪SN比:91dB 以上 ▪ダイナミック・レンジ:112dB ▪ゲイン:−13〜+31dB ▪全高調波ひずみ率:0.3%以下(@20Hz)、0.22%以下(@100Hz)、0.01%以下(@1kHz /+4dBu 入力) ▪最大入力レベル:+5dBu(フォーン)、+25dBu(3.5mmモノラル・ミニ) ▪最大出力レベル:+25dBu(ライン・アウト)、+3.7dBu(マイク・アウト)、+8dBu(PROCESSED OUTPUT) ▪外形寸法:216(W)×90(H)×231(D)mm ▪重量:2.4kg

製品情報

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