「RADIAL BT-Pro V2」製品レビュー:BluetoothオーディオをXLRバランスでアナログ出力するステレオDI

RADIALから発売されたブルートゥースオーディオをアナログ出力するDI「BT-Pro V2」

Photo:川村容一(メイン)

 15年以上前、著者はこのNEW PRODUCT REVIEWで2種類のDIをレビューしたのをきっかけにRADIAL製品が好きになり、今ではDIやエフェクター、スイッチャーなどのヘビー・ユーザーです。今回もまた素晴らしい製品がリリースされたと聞きワクワクが止まりません! RADIALは“かゆいところに手が届く、あると便利なハイスペック・アイテム”を多数リリースする、まさに“現場の味方”なところが大好きなのです。

SBC/AAC対応のBluetooth 5.0
多様なステージで使用可能な30の通信距離

 皆さんは現場やリハーサル・スタジオにて、急にクライアントやタレントから“コンピューターやタブレット、APPLE iPhoneから音を出したい!”とオーダーを受けたりしませんか? 筆者は基本的にライブのオペレートが専門なので、そんな急な要望は滅多にありませんが、無いからこそ用意していないものなのです。そして、本番直前や本番中など、手が離せないタイミングに限って必要になることがあります。今回はそんなときの強い味方になるBT-Pro V2をご紹介します。本機はBluetooth接続した機器の音声をXLR端子から出力できる優れもの。Bluetoothというと民生用のイメージがあるかもしれませんが、プロでも安心して使用できる製品です。

 

 外形寸法は84(W)×51(H)×127(D)mmで、重量は500g。なじみのある同社J48などのDIとほぼ同様のサイズ感です。上下部の材質は金属ですが、ワイアレスの通信干渉を軽減するために側面はプラスチック製になっています。

 

 本機はファンタム電源で駆動するものの、ファンタム電源が用意できない場合でも側面にあるUSB Type-C端子経由で外部電源への接続が可能です。同じ面には、Bluetoothのペアリング・スイッチ、リセット・ボタン、本機からのステレオ/モノラル出力を選べるセレクト・スイッチ、試聴確認用のヘッドフォン端子(ステレオ・ミニ)、出力レベルを調整する丸ボリューム(ヘッドフォンと共通)を実装。反対の側面にはPAに出力するためのアナログ出力(XLR)が2つとグラウンド・リフト・スイッチが装備され、まさしくプロ仕様の風格です。

本体右側は、出力レベルの調整ノブとモノラル出力への切り替えスイッチ、ヘッドフォン出力(ステレオ・ミニ)、リセット・スイッチとBluetoothのペアリング・ボタン、電源供給用のUSB-Type C入力を搭載。モノラル出力にするとL/Rがサミングされた信号を2ch出力可能

本体右側は、出力レベルの調整ノブとモノラル出力への切り替えスイッチ、ヘッドフォン出力(ステレオ・ミニ)、リセット・スイッチとBluetoothのペアリング・ボタン、電源供給用のUSB-Type C入力を搭載。モノラル出力にするとL/Rがサミングされた信号を2ch出力可能

左側はファンタム電源を受けるアナログ出力(XLR)×2とグラウンド・リフト・スイッチを搭載。48Vファンタム電源での動作時はL/Rともに電源供給が必要

左側はファンタム電源を受けるアナログ出力(XLR)×2とグラウンド・リフト・スイッチを搭載。48Vファンタム電源での動作時はL/Rともに電源供給が必要

 肝心のスペックですが、通信距離はなんと最大30m。この範囲なら日本にあるほとんどのステージ上で使用でき、イベント会場でも使えますね。SN比は90dB、周波数特性は20Hz〜20kHzという驚くべき性能になっています。Bluetoothのバージョンは5.0で、コーデックはSBC、AACに対応。同時に複数台のBT-Pro V2を使用することも可能で、その際は各個体に個別の識別子が割り当てられます。

手軽なペアリング操作で端末と接続
解像度が高くダイナミック・レンジや奥行きを表現

 では、早速実機をチェックしましょう。先日、あるメジャー・アーティストのライブにて、MCの一環としてステージ上でパッド・サンプラーをたたきたいという要望があったのです。転換時間も少なくどうするかと悩んでいたところにBT-Pro V2のレビューの話をいただいたので、簡単なチェックをして現場に投入してみました! APPLE iPadをBluetooth 接続し、サンプラー・アプリを使って音ネタやドラムをパッドでプレイ。レイテンシーは全く無いとは言えませんが、パッドをたたく際もほぼ問題無い速度です。事前準備では、本機にXLRケーブルをつなぎ、ミキサーのファンタム電源に接続。そしてペアリング・スイッチを押し、iPadのBluetooth設定で本機を認識させたら終了です。2回目以降はiPadに接続履歴が残るので、認識の作業は不要。Bluetoothイヤホンのような手軽さで接続でき、ステージ上には“iPadのみ”というまさに渡りに船です。BT-Pro V2側でレベル・コントロールが可能なので音量が大き過ぎた場合も問題無く、入力チャンネル数が限られる場合はモノラル出力にも対応可能です。

 

 これに気を良くし、はやりの配信イベントでも導入してみました。こちらはステージ上で自分たちの曲を流すトーク・イベントで、iPadのアプリから再生した音源をじっくり聴くことができました。ワイアレス機器にありがちな平べったくて中域しか出ていないような感じはしません。奥行き、ダイナミック・レンジ、スピード感、音質のすべてが満足で、むしろ“これが良い!”と思わせる解像度の高さです。“多分誰も気付いていないでしょうが、これ有線じゃないんですよ?”と言いたくなるほど。もちろん元の音源が良いというのは大前提ですが、周波数レンジがワイドな印象ですし、SN比も良好です。聴いていてストレスが無く、こんなに高音質で現場の仕込みまで楽をさせてもらえるBluetoothアイテムはほかに無いでしょう。幸い通信がロストするトラブルにも見舞われず、やはりRADIALはすごいメーカーだなぁと感心してしまいました。

 

 今回チェックが終わり、早速購入している自分。このアイテムは意外にも必要なものだと気付き、良き相棒となりました。皆さんもぜひこの良さに引き込まれてください!

 

玖島博喜
【Profile】ヒビノやリバティ、ヴァーゴを経て、2000年にTEAM URI-Boを設立。フリーランスとして活動し、オペレートだけでなくシステム・プランナーやアドバイザーとして施工にも携わっている。

RADIAL BT-Pro V2の製品情報

RADIAL BT-Pro V2

オープン・プライス(市場予想価格:28,500円前後)

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SPECIFICATIONS ▪ダイナミック・レンジ:90dB ▪THD:0.05% ▪SN比:90dB ▪Bluetooth:5.0、SBC/AAC ▪周波数特性:20Hz〜20kHz ▪出力インピーダンス:150Ω ▪外形寸法:84(W)×51(H)×127(D)mm ▪重量:0.5kg

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