PRESONUS Revelator Dynamic レビュー:ループバックやエフェクト駆動用DSPを備えるUSBダイナミック・マイク

PRESONUS Revelator Dynamic レビュー:ループバックやエフェクト駆動用DSPを備えるUSBダイナミック・マイク

 ボイス・チャットやオンライン会議、ポッドキャストの収録やゲーム実況など、昨今の需要の高まりから各社の製品ラインナップがますます充実しているUSBマイク。単純にマイクとしての性能のみで考えると悩んでしまうくらい選択肢がありますが、ループバック入力が2系統あり、シチュエーションに応じてさまざまなルーティングが簡単にできてしまうPRESONUS Revelatorファミリーの利便性は大きな魅力です。今回は、新しく発売されたダイナミック型の機種=Revelator Dynamicを紹介します。

パソコンとモバイル機器の両方に対応しクリアに収音

 Revelator DynamicはMac/WindowsコンピューターとiOS/Androidデバイスに対応し、コンピューターとはUSBケーブル1本で接続します。本体上のUSB端子はUSB-Cで、ステレオ・ミニのヘッドフォン・アウトとともに底面に配置。

底面には、コンピューターなどと接続するためのUSB-C端子(左)とヘッドフォン・アウト(右/ステレオ・ミニ)がスタンバイ

底面には、コンピューターなどと接続するためのUSB-C端子(左)とヘッドフォン・アウト(右/ステレオ・ミニ)がスタンバイ

 バス・パワー駆動なので、別途電源ケーブルを接続する必要はありません。三脚が付属し卓上に設置して使えますが、取り外し可能なため、マイク・アームなどに設置することもできます。

付属の三脚。卓上に設置して使用する際に便利だ

付属の三脚。卓上に設置して使用する際に便利だ

 本体は黒を基調としたシンプルなデザインで、2つのボタンと1つのツマミを装備。ツマミは、デフォルトでは併用するヘッドフォンの音量を調整でき、押し込めばマイクがミュートされます。Monitorボタンを押すと、ツマミでマイクの入力音とコンピューターからのプレイバック音のブレンド・バランスを調整可能に。また、Monitorボタンを長押ししたときには、マイクの入力音量を調整できるようになります。もう1つのPresetボタンは、後述するエフェクトのプリセットを呼び出したり切り替えたりするのに使用します。

 本機はダイナミック・マイクであり、音響がチューニングされていないコンピューター・デスク環境でも、その特性を発揮します。キーボードをたたく音、それに伴う机の振動、空調の音、配信中につい出てしまった大声など、コンデンサー・マイクでは音に影響が大きく出てしまうような外乱に比較的強く、日常使いのマイクとしては多大なメリット。最近は、コンデンサー・マイクにもある程度丈夫な製品が多いものの、物理的な衝撃が音に与える影響という面では、ダイナミック・マイクである本機の方が有利です。また、鋭めに設定された単一指向性で、不要な外部の雑音を避け、ターゲットをかなりクリアに収音します。ナレーション録りに試してみたところ、SN比も良好で、高解像度に収録することができました。ただ、ヘッドフォン・アウトの最大出力が22.6mW(16Ω)しかなく、一般的なイアフォンや低インピーダンスのヘッドフォンであれば問題ありませんが、ハイインピーダンスのモニター・ヘッドフォンなどはしっかりと鳴らし切るのが難しいかもしれません。

専用ソフトを使って配信用ミックスを簡単に作成

 マイク単体の性能も十分ですが、Revelatorファミリーの醍醐味はUniversal Controlという無償のMac/Windows用ミキサー・ソフトとの連携です。こちらで前述のエフェクトの制御とルーティング設定が可能となります。

PRESONUSのWebサイトで無償ダウンロードできる専用ソフト、Universal Control(Mac/Windows対応)。コンピューター上のソフトで再生している音声をマイクの音声にミックスするための“ループバック・チャンネル”を2つ備え、DJミックス+解説、オンライン対談+効果音、ゲーム実況などの配信がいとも簡単に行える

PRESONUSのWebサイトで無償ダウンロードできる専用ソフト、Universal Control(Mac/Windows対応)。コンピューター上のソフトで再生している音声をマイクの音声にミックスするための“ループバック・チャンネル”を2つ備え、DJミックス+解説、オンライン対談+効果音、ゲーム実況などの配信がいとも簡単に行える

 エフェクト部は、ハイパス・フィルター、ゲート、コンプレッサー、EQ、リミッターを含むチャンネル・ストリップ+6種類の特殊ボイス・エフェクト+1系統のリバーブという構成。特筆すべきはチャンネル・ストリップで、従来のPRESONUS製ハードウェアやDAWソフトのStudio Oneにも搭載されているFat Channelを使用できます。私を含めStudio Oneユーザーとしては楽曲制作の際になじみ深いものです。操作感や画面はそのままで、クセが無く扱いやすい基本的なエフェクトに加え、有名な実機EQやコンプのモデリングも使用可能。特殊ボイス・エフェクトは効果の分かりやすいものが中心で、配信や動画制作で活躍しそうです。エフェクトはすべてマイクの内蔵DSPで動作するため、コンピューターのCPU負荷はほぼ無く、かけ録りや生配信の際も超低レイテンシーです。

 そして、Revelatorファミリーの真骨頂は2系統のループバックを用いたルーティング。例えば、DJソフトの出力とマイクのトーク音声をミックスして配信したり、ボイス・チャットをしながらPCゲームを実況配信したりというのは、適切な機材や知識を持たない方にとって難しいことです。これがRevelatorファミリーを用いると何の苦労もなく実現できるのです。

 DJソフト+Revelator Dynamicでのトーク音声をミックスして配信したいなら、まずDJソフト側でオーディオ出力をRevelator Dynamicのバーチャル・アウトプットAにアサイン。するとUniversal Controlのミキサー・チャンネル“ループバック1”にDJソフトの音声が立ち上がるので、トーク音声との音量バランスを調整します。そうやって作ったミックスをUniversal Controlから配信用のソフトに送出するだけ。前述の通りループバック・チャンネルは全部で2つあるので、DJソフト以外の音声(例えばDAWソフトの音など)を追加して配信することも可能です。こういったルーティングが多入出力のオーディオI/Oやミキサーを使わず、マイク1本と無償ソフトのみで実現できるのは本当に便利です。

 Revelator Dynamicの個人的なオススメは、デスクに出しっぱなしの常設マイクとしての活用です。オンライン通話から配信、仮歌録りまで、基本的な声の収音をすべて任せるのです。また、USBケーブル以外の結線が不要なので、物が増えがちなデスク周りの取り回しや見た目の面でもメリットがあります。質実剛健な高音質ダイナミック・マイク+超便利な専用ソフト。刺さる人は、かなりいるのではないでしょうか。

 

in the blue shirt
【Profile】有村崚のソロ・プロジェクト。Maltine RecordsやSecond Royalからのリリースを経て、2016年と2019年にアルバム、2020年には最新EPを発表。ドラマの劇伴やCM音楽も手掛ける。

 

PRESONUS Revelator Dynamic

オープン・プライス

(市場予想価格:29,700円前後)

PRESONUS Revelator Dynamic

SPECIFICATIONS
▪形式:ダイナミック ▪接続:USB(本体端子の形状はUSB-C。USB-CからUSB-Aへの変換ケーブルが付属。規格はUSB 3.0/2.0下位互換で、USB 1.1には非対応) ▪ビット/サンプル・レート:24ビット/44.1/48/88.2/96kHz(macOS上のマルチモードは44.1/48kHzのみ) ▪電源:USBバス・パワー ▪対応OS:Mac/Windows/iOS/Android(AndroidデバイスおよびUSB-C端子を備えるAPPLE iPad Proに接続する場合は、バス・パワーで駆動。Lightning端子のiOSデバイスでは別途、電源端子付きのLightning to USB 3 Camera Adapterが必要) ▪指向性:単一指向 ▪周波数特性:20Hz〜20kHz(±3dB) ▪感度:1.6mV/Pa ▪最大SPL:135dB(THD3%未満) ▪外形寸法:83(W)×222(H)×130(D)mm(本体に装着されたスタンド用アタッチメント込み) ▪重量:0.42kg

製品情報

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